海外と連携し、ゼロ・ウェイストの逆輸入を

――海外から来る方のおおよその比率と滞在期間はどのくらいですか。

 研修・視察合わせて全体のおよそ3割ぐらいです。滞在期間は人によりますが、実務を経験するインターンシップだと1カ月、人によっては数カ月ということもあります。プログラムは、それぞれのニーズ、滞在できる期間、予算に合わせて組んでおり、1日だけの人もいれば、数日間、数週間という方もいます。海外向け研修プログラムだけをプロモーションしているわけではなく、アカデミーがどういった活動に取り組んでいるかの海外向け情報発信に力を注いできました。おかげで、全世界から人が来てくれるようになりました。

――海外から訪問された方との間に継続的なネットワークはあるのですか。

 帰国後の取り組みの様子を教えてくれたりとか、海外に呼んでもらったりといった交流はありますが、継続的に「この地域とプロジェクトをしています」という形はありません。ただ、上勝町のゼロ・ウェイストをモデルに、私たちが知らないところで展開している事例が出てきているようです。例えば、この前、知り合いの大学教授の方が久々に来られて、「マレーシアでごみの取り組みを視察した時、リユースショップが新しくできていて『これ上勝町のくるくるショップと同じだね』と話したら、『実はそうなんだよ。くるくるショップをまねしたんだ』って言われたよ」とおっしゃっていました。私はその事例を全然知らなかったのですが、そういう形で皆さんが上勝町をモデルにアイデアを広げるという、素晴らしい好循環の状態に入っているようです。

――海外への情報発信に力を入れている目的は何ですか。

 大きく2つあります。1つは、経済効果です。来てもらって映像を見て話をするだけであれば、確かに私たちの活動を知ってもらう機会にはなりますが、それによって何かプラスアルファが生まれるわけではありません。上勝町という地域の視点で考えた時、視察に来た方が宿泊をしてご飯を食べて、地域の中でお金を落として帰ってもらわないと意味がないわけですね。日本国内の、いわゆる議員の方たちの「予算があるから視察に行こう」といったものだけでは視察は減っていきます。やはり海外からの、観光も含めて上勝町に学びに来るための動線をつくることが大事だと個人的に思っています。

 もう1つは、日本だけでゼロ・ウェイストを横展開するより、海外にネットワークを広げて、そこから逆輸入する方が日本は変わりやすいと考えたからです。日本では、そもそも「焼却ありき」で廃棄物処理の仕組みができあがっています。レジ袋を有料化する条例をつくるだけでも相当時間が掛かっているのが実情です。上勝町の取り組みを海外に発信して、海外からの注目が高まることによって逆に日本が気付くというモデルにしないと、上勝町におけるゼロ・ウェイストの価値は広がらないでしょう。

――確かに強力な焼却炉があると、ごみを分別する動機が薄くなりそうです。

 日本の場合、大型の焼却炉や設備に投資をしてきました。だからそれを使い続けるという構造になっている。焼却ありきだと、そもそもリサイクル技術にもっと投資をしようとか、リサイクルする前提で回収の仕組みをつくろうという話にはなかなかならなかったりしますよね。焼却炉を扱うビジネスも、現状のエコシステムの中にありますし。

 長期的に見た時に、資源回収とリカバリーという流れは絶対必須になってくるはずです。ただ、政策としてそういう方向性をつくらなければ、なかなかシフトチェンジはしないでしょう。とはいえ、広域の焼却炉をつくってきたのは、ビジネスではなく政策だったので、ごみ処理の文脈に関しては、そこは変わる必要があるのかなと思います。

――住民の意識はどうやって変えていきますか。

 一つは透明性じゃないかと思います。分別回収しても「あれって全部燃やされているらしいよ」みたいな話になると「じゃあ何もやらなくても良くない?」みたいな話になってしまいます。これを、ちゃんと分けることで、こういうふうにリサイクルされて、それによってこれだけお金が掛からなくて済んでいて、こうなっていますっていうのを見えるようにする。つまり、すべてのフローをクリアにすることがまずは大事じゃないかと思います。

 上勝町では、ごみステーションに全部書いています。具体的にやっぱりこっちに分けるといくら掛かる。こっちだとこれだけ安いというのが見えると、「じゃあ分けようか」となります。説明しやすいわけですね、私たちとしても。紙はお金になります。だから分けてくださいっていうのは分かりやすいわけです。やっぱりおばあちゃんたちも、「あ、これ売れるんか、って。売れるんだったら分けようか」と、そう言ってくださいます。

分別するごみの分別種類ごとに廃棄費用やリサイクル収入を見える化している(写真:日経BP総研)
[画像のクリックで拡大表示]

 上勝町の場合は、自分たちの焼却炉を持っていないので、焼却が一番高いんですよ。なるべく分けてリサイクルに回してくれた方が安い、と説明しています。「それでごみ処理にかけるお金が減るので、税金は他の医療費だったりとか、福祉だったりとか、教育にお金を使えますよね」というロジックなので、そこは大事かなと思っています。

――焼却炉があると、別の説明の仕方も考えなければいけない?

 そうですね。そこが難しいですね。やはりお金の面では、焼却の方が安いという話になるので、そこは変えていく必要があります。