利用権を設定・交換する制度創設
実際に空き家や空き地の活用に至った例には、居住者が地域の外に出ていくのを未然に防ぐ一方で、新しい居住者を迎え入れることができたケースがあります(下図を参照)。この例は、NPO法人と市が共催した空き家相談会に空き家Aの所有者と空き家Bの所有者から別々に相談が持ち込まれたのが、活用に至ったきっかけです。その後、NPO法人側から、空き家Aを除却しクランク型の私道を直線に付け替えたうえで、空き家Bも除却する、という事業が提案され、実行に移されました。
この事業では、住宅Dの所有者が空き家Bの跡地を取得し、駐車場として活用できるようになったという点が、成果の一つと言えます。近くにクルマをとめられるようになり、住宅地としての利便性が上がったわけです。住宅Cの隣にあった空き地の敷地条件が良くなったという点も、もう一つの成果と言えます。その土地には住宅Cの子世代が住宅Eを新築し居住するようになりました。
――改正法で打ち出された対応策では、この鶴岡市の例のような取り組みを促進するために、公民連携でコーディネートを進める「低未利用土地権利設定等促進計画制度」が位置付けられました(下図を参照)。
この制度が想定するケースの一つは、人口20万~30万人程度の地方都市の駅前だと思います。このくらいの人口規模の都市には、駅前にもかかわらず駐車場だらけというところがあります。土地所有者が固定資産税の税額程度を稼げればいいという消極的な発想から駐車場として暫定利用しているわけです。
低未利用土地権利設定等促進計画制度はそういう場所で公共施設を計画的に生み出していく仕組みです。土地売買を伴うようだと課税の問題を含め事業実施へのハードルが高くなるため、ここでは自治体が策定した促進計画に基づき、複数の土地・建物に一括して利用権を設定します。地権者と利用希望者をコーディネートする役割は公共が担います。ただ、そのコーディネートにあたっては、都市再生推進法人、都市計画協力団体、宅建業者などの専門家と連携し、その知見を活用することが想定されています。
――都市計画協力団体とは聞き慣れない名称です。住民参加のまちづくりの公的な位置付けとして改正法の中で制度創設されたものですね。
そうです。自治体が指定する団体で、都市計画を提案することができます。提案制度そのものはこれまでもありましたが、身の回りの小規模な提案も可能にしています。高齢化と人口減少が進む地域でリタイア世代が新しくまちづくりに取り組もうとするときに、何らかの手掛かりになるかもしれません。