日本には420ほどの有人離島があると言われている。ここで大きな問題となっているのが、島と本土を結ぶ物流や定期航路の問題だ。物資や人を運ぶ手段は限られている。定期航路があってもそもそもの便数は少ない。少子高齢化に伴い減便や廃止という未来も見える。この離島物流・輸送の問題にドローンを使って挑んでいるスタートアップが香川県高松市にある。企業名は「かもめや」という。同社は香川県三豊市や愛媛県今治市、広島県江田島市など地方自治体と連携しながら、ドローン物流の問題解決を進めている。ドローン物流でいま最も注目されるスタートアップの創業から現在、今後の見通しなどを小野正人社長に聞いた。

離島のドローン物流について語る「かもめや」の小野正人社長(写真:高山和良)
離島のドローン物流について語る「かもめや」の小野正人社長(写真:高山和良)
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――かもめやの離島のドローン物流について教えてください。

 ひと言で言うと、離島における物流問題(買い物弱者問題)を解決するために、ドローンを活用して陸海空の物流プラットフォームを構築することです。

 2021年8月に、香川県三豊市と人口約180人の粟島を結ぶドローン物流航路を開設しました。短期的な実証実験ではなく定期航路として事業化したものです。往復8kmほどの距離にある三豊市と粟島の間を、ドローンが瀬戸内海を越えて定期的に運航し、島民の方々が注文した商品を運んで家まで届けるという事業です。ドローンを使った海を越える長期定期航路は私たちが知る限り世界初です。

――どのような流れで買い物したものが島に届くのですか。

 島民の方が午前中に商品を注文すると、その連絡が対岸の三豊市にある弊社の事務所に届き、弊社のスタッフが注文された品物を買いに行きます。そしてその日の午後、ドローンに商品を載せて三豊市のポートを出発、粟島に着陸します。粟島に到着した荷物は、その日のうちに島側のスタッフが自宅までお届けするというものです。

かもめやが三豊市・粟島間のドローン長期定期航路で使っているドローン(写真:かもめや)
かもめやが三豊市・粟島間のドローン長期定期航路で使っているドローン(写真:かもめや)
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――この長期定期航路は、いわゆる「実証実験」ですか、それとも事業化したものですか?

 短期の実証実験でなく、事業化を見据えた長期実用化実証です。サービス内容や取り扱い商品については2021年夏に開始した時とは大きく変わってきています。開始当初は「コンビニエンスストアの温度管理が必要ない商品のみ」から、現在は「弁当(フードデリバリー)」「買物代行」も含めた総合サービスへと変化しています。ドローンの搭載重量を超える場合もあり、その場合は船便にて別途対応もしています。

 定期航路の開設にあたっては、業務提携しているあいおいニッセイ同和損保からスポンサー費用として半年分程度の維持コストをサポートしていただいたほかは、自社負担で運用しています。行政からの補助金は現時点ではいただいていません。

――料金について教えてください。

 基本的には、商品代金+サービス料500円にて対応しており、非常にシンプルです。お届けの際に、弊社スタッフが商品代金+サービス料を集金する代引きにて対応しています。現在は、基本的に全てサービス料500円にて対応していますが、お弁当(フードデリバリー)や買物代行のサービス料については別途検討中です。ドローンでは 1フライトで1㎏までしか運べません。それ以上の注文がある場合は、船便にて別途対応しています。運行しているドローンは1台です。

――島民の方にとっては手数料が高いと利用をためらうのではないかと思いますし、現時点でそれほど多くの物を運べないと思います。定着させるためには輸送量を増やしたり料金を抑えたりしないといけないと考えますが、いかがでしょうか。

 やはり1フライトで1㎏しか運べないタイプのドローンで対応できる内容には限界があります。今年度は5㎏運べる機体の導入を検討したり、100㎏以上を運べる無人輸送船を併用した大量効率輸送モデルも検討しています。

――そのほかにどんな事業を進めていますか。

 ドローンを目視外で運用するための、精密気象観測システムをはじめとする、無人移動体運用包括支援システム「OceanMesh」の提供を始めています。

 現在は、こうしたサービスを提供してドローン輸送に関する技術やノウハウを積み上げながら、無人物流プラットフォームの構築と実際の運用に向けて、様々な実証実験(PoC)を受託しています。こうした実証実験を繰り返し運行システムの開発と運用ノウハウをさらに磨き、ドローンとシステムをパッケージとして提供する事業を目指しています。

 ドローンを使って海上輸送をするだけではなく、100㎏以上の荷物を載せて自律航行できる無人輸送船「Donbura.coドンブラコ)」の開発と、陸上でラストワンマイルの搬送をしてくれる無人輸送カート「Smart.ONBA(スマートオンバ)」の開発も進めています。オンバというのは男木島で昔から使われている手押し車のことで、そこから着想を得て開発・ネーミングしました。

 さらに、創業当時は人が乗れるドローンまでは想定していなかったのでドローンによる無人物流と言っていましたが、今は人を乗せるパッセンジャードローンへの展開も視野に入れています。

かもめやの描く「陸海空ハイブリッド無人物流プラットフォーム」のイメージ(資料:かもめや)
かもめやの描く「陸海空ハイブリッド無人物流プラットフォーム」のイメージ(資料:かもめや)
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――最近では、医薬品輸送の分野にも注力されていますね。

 はい。離島では、通院や医薬品の入手が大きな課題になっています。この解決のために、いま重点的に取り組んでいるのが遠隔医療では必ず問題になってくる医薬品の輸送の実証実験です。今年の2月に広島県の江田島市と、3月に愛媛県の今治市とそれぞれ共同で実施しました。どちらも調剤薬局事業を手掛けるクオールホールディングスと一緒にやったものです。

 現状、医薬品を患者さんに渡すところは医療従事者じゃないとやってはいけないという原則があります。しかし、離島や山深い山間部など、医療従事者が行くには難しい場所があります。今後は、そういう特例的な場所に関してはその原則は緩和され、必ずしも医療従事者でなくても処方された医薬品を運んで手渡すサービスができる方向になってくると考えています。

 離島に患者がいて本土の病院・診療所で遠隔医療が行われることを前提にお話しすると、まず本土の遠隔診療所で診断をし、そこで処方箋が出ます。処方箋が調剤薬局に渡され、処方箋の薬を調剤薬局で専用の箱に入れるんです。そしてドローンで海を渡って薬が島に届きます。

 ここで問題になってくるのが、間違った薬を渡したとか、薬をなくしたとか、しかも薬の品質が落ちてしまったとか効果がなくなってしまうというところだと思うんですね。そうしたことがなくなるように、今回、医薬品輸送の専用箱をクオールホールディングスさんと協同開発しました。箱の中は一定の温度が保てるように温度管理ができ、箱の位置が分かるようになっている。もちろん施錠もできます。さらに、その記録が残る仕組みになっています。この箱に調剤薬局が薬を入れると、そのままの状態で必ず患者さんの手前のところまでは届きます。今回の実証実験ではここまでできることを確認しました。

 今後は、その箱を開けて患者さんが受け取ったことを確認するやり方、服薬管理もできるような仕組みも必要です。そこまで実装すれば、離島の医薬品輸送の問題はほぼ解決するんじゃないかと思います。この実証実験を香川県三豊市でこの夏にやります。秋頃にはこれも定期航路に組み込みむ予定です。