最近注目を集めている「農福連携」。障害者の就農のことを指す言葉だ。農家が直面している深刻な担い手不足を解決し、併せて障害者の働く場所を確保しようという一石二鳥の取り組みで、国も推進に乗り出している。総合人材サービス、パーソルグループ傘下のパーソルサンクスは、既に群馬県富岡市や神奈川県横須賀市で、地元自治体と連携して障害者の就農事業を展開中。社長の中村淳氏に、事業を始めた経緯や具体的な中身、今後の方向性などを聞いた。

(写真:中山博敬)
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――パーソルサンクスは人材派遣のテンプスタッフなどを傘下に持つ、パーソルホールディングスが100%出資した特例子会社ですね。

 はい。障害者雇用に特別な配慮をした会社です。特例子会社に在籍する障害者は、親会社、そして企業グループ全体が雇用しているものとみなされます。当社は、パーソルグループの障害者雇用を推進するために設立された会社で、28年の歴史があります。東京・池袋の本社をはじめ、関東の4カ所に事業拠点を持ち従業員数は312人。うち障害のある社員は254人を数え、半分以上が知的障害者です。(2019年4月現在)。

 民間企業には、法定雇用率に応じた障害者雇用が義務付けられており、現在その割合は2.2%となっています。

知的障害を中心に250人を超える障害者を雇用している(データ提供:パーソルサンクス)

 当初は、東京の拠点で名刺の作成、封入発送、事務請負などの業務をグループ内から受託してきました。2006年には、横浜市に「よこはま夢工房」を設立してクッキー製造にも進出。現在、ここでは様々な障害のある従業員が80人働いています。

地方の課題解決を存在意義に

――ありふれた特例子会社から脱皮し、新たな事業展開に踏み切られた理由は。

 2016年から地方での新規事業に取り組み始めました。障害者の職域を開拓する必要があったからです。パーソルグループがM&Aで積極的な事業拡大を図るなか、雇用しなければならない障害者の人数は加速度的に増えていきました。一方、一昔前に1.8%だった民間企業の法定雇用率は2013年度から2%に、2018年からは2.2%へと引き上げられました。今後も引き上げが予定されていることもあって、東京近郊では大企業などによる障害者の採用競争が始まっています。

 そこで、障害者の採用が東京ほど厳しくない地方を舞台に、社会性の高い事業をと考えた末、第一次産業の活性化などの課題解決につながる労働力として、障害者に活躍してもらおうとしたのです。

 その第1弾が、2017年に群馬県富岡市に開設した「とみおか繭工房」です。

群馬県富岡市の山あいにある「とみおか繭工房」(写真:中山博敬)
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――「農福連携」の第一歩を踏み出されたわけですね。

 同年6月の立ち上げの際は、特に「農福連携」という意識はありませんでした。群馬県を選んだのは、法定雇用率が全国の中でも極めて低い地域で、地場産業である養蚕業が担い手不足に直面していたからです。初年度は7人の障害者を雇用し、除草やたい肥をまくなど桑畑の管理や、桑の葉を収穫し蚕に与えて繭を生産するといった事業に取り組み、280kgの繭を生産しました。2018年度には雇用する障害者は20人、生産した繭は1トンを超えました。富岡市全体の繭生産量の12%を占める量です。今年度は1.5トンに挑戦します。

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とみおか繭工房では桑の木を栽培し、その葉で蚕を育てている(写真:パーソルサンクス)