保健所は「介護も含めた調整役」としての機能拡充を

――保健所の役割についてはどうお考えですか。PCR検査の実施や入院先の手配などで、その役割が改めて注目されましたが、保健所は、特に都市部では一般の人にはなじみが薄いのではありませんか。

 「地域包括ケア」という時代の要請に応えられる体制づくりが必要になります。保健所は、届け出や検査などで医療機関とは密接なつながりがありますが、これまで介護サービス事業者とは直接の接点はありませんでした。ですが、感染症の場合には介護施設でクラスター(感染者集団)の可能性があります。保健所はコーディネーターとして、医療も介護もみていく必要があるはずです。

 そのほか、2018年度には医療と介護・生活サービス両方を提供する、介護医療院という新しい施設も登場しています。2025年に向けて地域包括ケアの構築が急がれるなか、国は医療と介護の連携を積極的に進めています。これらも、保健所に介護分野への積極的な関与を促す要因と言っていいでしょう。

 ただし、多岐にわたる機能を果たしていくには、単に予算をつぎ込み人を増やせばいいというわけではありません。管轄地域の医療・介護の提供体制の現状を常に把握し、発生する課題解決のアプローチができる高レベルの人材を養成していく必要があります。

――地域包括ケアといえば、在宅で最期まで過ごして看取られるというのが理想形ということになっています。ただ、家族にも看取られず病院で亡くなった新型コロナウイルス肺炎の患者さんのことを考えると、「withコロナ」時代には、実現はより難しくなるのではないでしょうか。

 それでも地域包括ケアは推進していくべきと思います。ただし、今回の教訓から、感染症の発生リスクと対処法を、地域包括ケアを構成する、医療機関、高齢者施設、訪問看護、通所介護といった様々なサービスに織り込んで、構築を進めなければなりません。

 医療についていえば、重症度に応じて体外式膜型人工肺や人工呼吸器のある施設、酸素吸入が受けられる施設というように、機能に合った病院に患者を振り分けるほか、軽症・無症状の患者はホテル等での療養へと、医療機関もそれ以外の施設も官民総出の役割分担と連携で、限りある医療資源をできるだけ効率的に活用する必要があります。今回実施されたホテル等のような宿泊施設での医療提供の可否は、老人ホームなどでの場合と違って法令に明記されてはいませんが、現行法令上「その他」として容認されていると見て取れます。創意工夫で療養場所を確保していくことができるわけです。

医療提供の場所に関する法的構成
医療提供の場所に関する法的構成
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 ただ容体の変化しやすい高齢者に医療機関以外で療養してもらうとなると、連携先の医療機関のスタッフが交代で常駐・訪問するなど、外部の医療サービスを受けられる体制を確保する必要があるでしょう。なお、米国海軍のような病院船を建造して流行地に派遣、患者を隔離して感染拡大を防ぎつつ治療するという構想は以前から日本にもありましたが、経費面で難しいとの判断からこれまで実現しなかったという経緯があります。