40年以上にわたって池袋のシンボルとして多くの人に親しまれてきたサンシャインシティ。年間3000万人という集客力が、まちににぎわいをもたらしてきた。同名の運営会社では2020年4月、社内に「まちづくり推進部」を新設し、地元の豊島区や民間企業とタッグを組みながら、事業展開の舞台を施設から地域へ意識的に広げる。4つの公園を核に回遊型のまちづくりが進む池袋エリアの価値向上へ、同社はどのような役割を担っていくのか。代表取締役社長の合場直人氏に聞いた。

(写真:加藤康)
(写真:加藤康)

――池袋エリアのまちづくりにおいて、サンシャインシティはどのような役割を果たしてきたのですか。また今後の役割については、どのようにお考えですか。

 1978年4月のサンシャイン60ビルの竣工以来、池袋駅東口との間を結ぶサンシャイン60通りに人の流れを生み出してきました。コロナ禍前の集客力は年間3000万人。サンシャイン60通りは、池袋エリアで歩行者交通量が最も多く、路面店の賃料水準も最も高くなっています。この40年以上、ひたすら駅から人を引っ張ってきたわけです。開業当初は財務面の余力はありませんでしたが、そうした中でも集客のノウハウを蓄積し、運営面で工夫を重ねることで今に至るまで施設としての鮮度を保ち続けてきました。

 2020年4月から23年3月までを計画年度とする中期経営計画の策定に向け、次の成長には何が必要か、社内で議論を重ねてきました。そこでたどり着いた結論は、池袋エリアそのものを発展させないと私たちの将来はない、というものです。「なんか面白いこと、その創造力を街の力に」をスローガンに、これまで蓄積してきたノウハウを生かし、地域と社会に「なんか面白いこと」を増やし、まちそのものの発展に全力投球で臨むことを決意しました。

「まちづくり推進部」を立ち上げた理由

――2020年4月には実働部隊として「まちづくり推進部」を立ち上げるなど、地域に貢献できるまちづくりに向け、社内体制づくりを進めてきました。

 (サンシャインシティは)これまでの実績があるだけに、地元の民間企業からも豊島区からも、地元のとりまとめ役としての期待は大きいと感じています。サンシャインシティではこれまで、多くの人に様々な思い出をつくっていただいてきました。オープンしたころ高校生だった人は、今はもう60歳前後になっています。長い時間の積み重ねによって周囲の信頼を得られているというのは、「記憶資産」とでも言うべき貴重な資産です。これがあるので、ある意味、嫌みのない形で池袋エリアのまちづくりに関わっていけるのではないかと思っています。

 「まちづくり推進部」は、そうした背景から私たちがソフトの提供に乗り出そうという発想で新たに立ち上げました。現在、12人の体制で臨んでいます。サンシャインシティの社員数は約140人ですから、1割近い人数を投入していることになります。

 面白いことを生み出す創造力は、私たちが創業以来ずっと意識して培ってきたものです。それがあるからこそ、年間3000万人を集客できたのです。その創造力を、まち全体で発揮していこう。池袋エリアの価値を面白いことの力でさらに引き上げ、その結果として私たちも収益を上げていこう、という考え方です。区全体として発展基調にある今、私たちのノウハウを注ぎ込み、エリア価値のさらなる向上を図れたらと思っています。

年間3000万人以上が通行する池袋のサンシャイン60通り(写真左)。通りではイベントも開催される。右写真は、2013年から毎年開催されている「池袋めんそ~れ祭り」(2020年はコロナで休止。写真は2017年の様子)(左写真:日経BP 総合研究所、右写真:サンシャインシティ)
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年間3000万人以上が通行する池袋のサンシャイン60通り(写真左)。通りではイベントも開催される。右写真は、2013年から毎年開催されている「池袋めんそ~れ祭り」(2020年はコロナで休止。写真は2017年の様子)(左写真:日経BP 総合研究所、右写真:サンシャインシティ)
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年間3000万人以上が通行する池袋のサンシャイン60通り(写真左)。通りではイベントも開催される。右写真は、2013年から毎年開催されている「池袋めんそ~れ祭り」(2020年はコロナで休止。写真は2017年の様子)(左写真:日経BP 総合研究所、右写真:サンシャインシティ)

 考えてみれば、まちを良くしようという姿勢は、行政と一緒です。もちろん、行政は税金を元手にするのに対して、私たちはサンシャインシティという施設を運営することで得た収益を元手にしますから、異なる面はあるでしょう。

 ただサンシャインシティは、非常に多くの人が来訪する施設だけに、もともと「半公共」とも言える存在です。私たちはサンシャインシティという一つのまちを運営する「公」に近い目線で収益に直接結び付かない事業にも取り組んできました。一方、行政には今、「民」の視点が不可欠です。民間が収益を上げられるようなまちづくりを行政として進めていかなければ、その持続性は確保できません。私たちと豊島区が連携することで、池袋ならではの公民連携の新しいあり方を示せるのではないか、と胸躍る気分です。

池袋エリア内でネットワークを広げる

――区との人事交流も始めていますね。

写真右は豊島区から人事交流でサンシャインシティコミュニケーション部サブリーダーとして着任した平田美結氏(写真:加藤康)
写真右は豊島区から人事交流でサンシャインシティコミュニケーション部サブリーダーとして着任した平田美結氏(写真:加藤康)
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 豊島区のことをもっと知ろうと、「まちづくり推進部」の設立と同じく2020年4月から区との人事交流を始めました。高野区長とは、良い人材を2年間、互いに行き来させて主要部門に配置しよう、と約束しています。まずは1人から始めています。また2020年10月からは、グループ会社の社員を対象に豊島区在住手当制度も始めました。区内在住の社員のうち区民目線で活動する社員に月2万円を支給することで、区内に居住することを促す狙いです。これをきっかけに転居した社員もいます。2021年6月現在、グループ会社を含め18人が区民目線で活動する社員です。実際に住んでみないと分からないことはたくさんあります。区民として気付いた課題を社内に持ち寄って、まちづくりにつなげていってほしいですね。

――そうした体制の下、地域に貢献できるまちづくりとして、これまで具体的にどのようなことに取り組んできたのですか。

「IKEBUKURO LIVING LOOP」の様子(写真:サンシャインシティ)
「IKEBUKURO LIVING LOOP」の様子(写真:サンシャインシティ)
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 グリーン大通りエリアマネジメント協議会と豊島区が共催する「IKEBUKURO LIVING LOOP」というマルシェやワークショップが並ぶイベントを、2020年度から地元4社(グリップセカンド、サンシャインシティ、nest、良品計画)で構成する共同企業体の1社として受託し企画運営を担っています。もともとは、グリーン大通りと南池袋公園を会場として開催されてきましたが、もっと面的な広がりを持たせ、人の流れを生み出そうという狙いから、2020年10月・11月開催のイベントから参画を決めました。サンシャインシティ内の公開空地で「サンシャインマルシェ」を開催する一方、行動調査によって人の流れを検証し、豊島区にフィードバックするなどまちづくりに役立てようとしています。

 緊急事態宣言の発出・延長に伴い実施できなかった企画もあったのですが、5月~6月には、「IKEBUKURO HANA CIRCLE PROJECT」という「花と緑」をテーマに掲げるプロジェクトを仕掛けました。期間内は池袋エリア内各所で花と緑にまつわるイベントを開催しようと考えていました。各社のエリア活性化のための予算をバラバラに使うのではなく一本化したテーマの下で有効に活用しようと、池袋に拠点を置く企業や大学などに呼び掛け、プロジェクトメンバーを募り、今年初めて挑戦したものです。地域の商業施設を中心にこれだけの数の企業が連携しての企画は、民間ならではのものだと思っています。

 この時期は池袋が花で埋め尽くされるくらいに、このイベントが成長していけばいいなと思っています。そうなれば、世界中からお客様も来ますし、池袋のイメージも大きく変えていくことができるでしょう。

■KEBUKURO HANA CIRCLE PROJECT(イケブクロ ハナ サークル プロジェクト)のチラシ
■KEBUKURO HANA CIRCLE PROJECT(イケブクロ ハナ サークル プロジェクト)のチラシ
【プロジェクトメンバー】池袋ショッピングパーク/IKEBUS/池袋パルコ/キュープラザ池袋/サンシャインシティ/自由学園明日館/西武池袋本店/東急ハンズ池袋店/東京第一友の会/東武百貨店 池袋本店/Hareza池袋/㈱婦人之友社/立教大学/WACCA IKEBUKURO/IKE・SUNPARK【としまみどりの防災公園】(㈱日比谷アメニス)/池袋西口公園(GLOBAL RING CAFÉ)/中池袋公園((一社)Hareza池袋エリアマネジメント)/南池袋公園(Racines farm to park)(資料提供:サンシャインシティ)【後援】豊島区/豊島区観光協会/スターツ出版㈱(OZmall)
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少しずつ自分たちが持ち出すことで、結局はみんなが得をする

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――池袋における豊島区のまちづくりについては、どのような見方をしていますか。

 高野(之夫)区長もインタビューで答えているように(関連記事)、都心や新宿・渋谷のような有力なデベロッパーが事業展開を図るエリアではありません。これらの地域では、そのデベロッパーが多くの地権者の意向を踏まえながらその将来像を描き、実現に向け、行政とともに必要なルールづくりにまで乗り出したりします。ところが池袋エリアには、そうした有力なデベロッパーがいなかった。行政として自ら主導するほかなかった。結果として、豊島区のまちづくりによって、池袋は今、従来のイメージが一新され、エリアとして良い方向に進みつつあると感じています。

 民間有識者組織である日本創成会議から2014年5月に「消滅可能性都市」のらく印を押されたのを背景に、子育て世代の女性に焦点を当て政策を打ち始めたのが、的を射たのでしょう。同じ副都心である新宿や渋谷に比べ開発が遅れているが、その分他のエリアの良い部分を取り入れることができる。池袋は駅から住宅地が近いことから、駅周辺の4つの公園を核に(関連記事)、住みやすさや子育てのしやすさを打ち出したことが良かったと言えるでしょう。

――区が主導してまちづくりが進んできた中、サンシャインシティが「まちづくり推進部」を始動して以降、池袋エリア内で商業施設を運営するいくつかの会社でも、まちづくりを担当する部署を立ち上げる動きもみられます。今後、どのような展開を想定されていますか。

 区では2021年秋ごろをめどに、池袋エリアの将来像ビジョンを検討し共有するためのプラットフォームを公民連携で立ち上げる見通しです。先ほど紹介した「IKEBUKURO HANA CIRCLE PROJECT」は、こうした将来における地元企業間での連携を念頭に置き、まずは有志企業での企画連携に乗り出したものだと言ってもいいでしょう。プラットフォームが設立された暁には、私たちとしてエリアマネジメントの事務局機能を担うことを視野に入れています。

――合場社長は、三菱地所時代には大丸有(東京都千代田区の大手町・丸の内・有楽町地区)のまちづくりを手掛け、賑わいのあるエリアに成長させてきました。池袋の場合、また違ったやり方になってくるのでしょうか。

 大丸有のときは、民間企業の地権者70社ほどのコンセンサスを得て、一つの将来像を出していくのに10年くらいかかりました。このときは、「まちづくりでは、少しずつ自分たちが持ち出すことで、結局はみんなが得をするのですよ」ということを、言い続けてきました。

 「結局は得をする」ということを信念をもって言い続け、みんなに理解してもらう――。この考え方は、池袋でも、どこの街でも一緒だと思っています。

合場直人 (あいば・なおと)
サンシャインシティ代表取締役社長
合場直人 (あいば・なおと) 1954年、東京都生まれ。1977年小樽商科大学卒業、三菱地所に入社。「丸の内再構築プロジェクト」などを担当し、大丸有エリアのまちづくりに携わる。同社代表取締役専務執行役員などを経て、2018年より現職。(写真:加藤康)

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434148/062500098/