遠出しなくても、近所でのんびりできて、誰もが学べる場所に

――学校跡地は「まちぐるみ教育」の場である「みんなの学校」として再生する方向を打ち出しています。具体的にはどのような形で活用していくのでしょうか。

 最大9校の跡地を1つ1つバラバラに活用するのではなく、「みんなの学校」という統一したコンセプトで新たに再生します。同じ属性の人だけではなく、地域の様々な世代、職業、国籍の人たちから、文化や技術を学ぶことで、気づきを得ることができ、そこから新たな実践をすることができるような場です。エリアごとにテーマを設け、様々な世代が学べるようにします。

 例えば、生野区は食文化の豊かなまちなので「食の学校」というプランがあります。校庭にフードトラックが集い、フードコートのように様々な食を楽しめる。体育館では、地域の飲食店と連携し、食の体験施設を作って様々な料理体験ができたり、家庭科室では飲食店舗が入ったり。校舎の一部はシェアキッチンを備えたゲストハウスにするアイデアもあります。

「みんなの学校」は、災害時には避難所としての機能を備える想定だ(提供:生野区)
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 また、職人の多い地域では「ものづくりの学校」もできそうです。ほかにも「農業ビジネスの学校」など、跡地ごとにテーマを決めて、あらゆる世代が学んで楽しめる場にする。同じ1つの大学で、学部ごとにキャンパスが分かれているようなイメージです。

 そのうえで、どの跡地にも避難所機能としての役割、図書室や地域コミュニティの場としての公的スペースは残すつもりです。

――今までの小学校はなくなっても、「みんなの学校」として新たな学びの場ができるわけですね。

 そうです。「今度の日曜日、どこに行こうか?」というときに、遠出しなくても、子連れで、近所でのんびりできて、体験やつながりが感じられる。「食の学校」に行けば、多国籍のものが食べられて、親子料理教室に参加できる。「モノづくりの学校」ならDIYのワークショップで何か作ることができる。「農業ビジネスの学校」では貸農園で野菜を育てることもできる。いわば町の中にイベントスペースがあるようなイメージです。

「みんなの学校」案の例。「世代をつなぐ、ものづくり学校」のイメージ(提供:大阪市生野区)
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 学校は、地域のランドマークであり、心の拠り所であり、防災の拠点。再編に不安を抱く人が多いのも理解できます。「みんなの学校」があれば子育て世代にとっても魅力的なまちになります。

――「みんなの学校」は小・中学校とも連携するのですか。

 将来的には、この「みんなの学校」と、再編した小・中学校との連携も視野に入れています。例えば、「技術の時間はモノづくり学校でプロに学ぼう」「調理実習は食の学校で学ぼう」という具合に交流があるといい。2020年度から必修となるプログラミング教育もそうですが、今は教員の負担が多い。専門性の高い人が教えてくれる場所と連携できたら教員の仕事も軽減するはずです。

――こうした構想案はどのように策定されたのでしょうか。

 参考にしている事例の1つとしては、「生野区西部地域の学校跡地を核としたまちづくり全体構想策定アドバイザリ―業務委託」のプロポーザルで選定した「セミコロン」の社長でもある清水義次さんが代表を務めている、千代田区立錬成中学校の跡地を利用した「3331アーツ千代田」があります。場所を区から借り、事業を回して黒字にし、雇用も発生させ、地域とも関わり続けている。それでいて避難所の役割も担っている。

 ほかにも、岩手県紫波町の駅前開発事業「オガールプロジェクト」や、大阪府大東市の市営住宅の建て替えを機に新たなまちづくりを行っている「北条まちづくりプロジェクト」にも関心を持っています。学校跡地を利用した例では、東京都世田谷区の事業「世田谷ものづくり学校」もクリエイターたちがオフィスとして活用しながら、数多くのワークショップが開催されていて感心しました。