高齢者も留学生も誰もが「居場所と持ち場のあるまち」になるために

 「みんなの学校」のプランは、「学びとは何か」という根本的なことから議論を重ねて策定しました。学習指導要領も変わり、今後、子供たちは主体性を持って自ら学ぶ子にならないといけない。子供は、小さいときに出会った大人の数が多いほど、「こんな人もいるんや」「「こんな生き方があるんだ」と影響を受け、“生きる力”が育つものです。偏差値だけの単純な学力ではなく、生野は本当の意味での生きる力を育てていくまちでありたいのです。

「まちぐるみ教育」「みんなの学校」と従来の教育・学校との比較(提供:大阪市生野区)
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――「みんなの学校」とまちがつながれば、地域も活性化しそうですね。

 生野区のキャッチフレーズは「居場所と持ち場があるまち」。生野区は、少子高齢化の“最先端”エリアです。さらに近年はアジア圏からの日本語学校の留学生も増えています。

 高齢者や留学生など、自分の場がないと感じている人にも居場所ややりがい(持ち場)ができれば、まちは活性化する。誰もが学び、誰もが活躍できる拠点として「みんなの学校」は有効。さらに、空き家問題や高齢者問題など、「みんなの学校」と生野区の抱える課題がリンクして、いい方向に解決する手段になればいい。

「まちぐるみ教育」で地域の多様性を活用するイメージ(提供:大阪市生野区)
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「みんなの学校」には、サービスを提供する側、受ける側もお互いに相乗効果があります。例えば、「いつか店を持ちたい」という料理人の卵は「食の学校」のシェアキッチンで客の意見を聞きながら料理開発⇒次は校庭のフードトラックで販売⇒客が付いた頃に生野区の空き家や空き店舗を利用して店を出すという流れも考えられます。生野区の空き家率は22%と高く、区が抱える問題の1つですが、「食の学校」が解決の一助になる可能性もある。サービスを受ける側としても、料理体験ができ、周辺の高齢者は宅食サービスを受けることもできるでしょう。

 同じように「ものづくりの学校」でもDIYをしたい人が集まれば、近くの空き家を利用して店や住居にする流れも出てくるかもしれません。

――新しいまちづくりとして、どのようなイメージを持っていますか?

 最初はカフェと芝生の広がるおしゃれなイメージも浮かびました。街の活性化には、若い子育て世代が喜ぶ仕掛けも重要ですから。 ただ、生野区には日本最大のコリアタウンがありますし、そもそも外国籍住民比率が2割と高く、約60の国・地域にのぼる多文化が共存するまちです。また、空襲の被害にあっていないため、戦前からの街並みがあちらこちらに残っています。地価や賃料も安く、色々な状況にある人が安心して暮らせるまちというのが特徴です。この多文化と多世代が“ごった煮”であることが生野の良さだと思うのです。

 仮におしゃれなカフェを作るにしても、大手資本のチェーン店ではなく、地元オーナーが経営して地域にお金が循環する店がいい。生野の「古さ」の魅力は一から作れないですから。

 生野では今、古くて渋い長屋を若い人がおしゃれにリノベーションしてカフェにする事例も増えています。そんな生野らしさと、子育て世代にも受け入れられるコンテンツとのうまい融合ができたらいいと思っています。

生野区には古い家屋をリノベーションして暮らす人たちが増えている。区の広報誌で毎月リノベ事例を紹介している(「広報いくの」2019年7月号)
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