横浜市と成熟した街ならではの課題に取り組む

 この部署が自治体から高い評価を得た背景には、少子高齢化社会においては都市開発や都市整備を自治体のリソースだけではとても担えないという実情があると思います。このことを強く認識したのは、2011年頃から横浜市と街づくりに取り組んだ時です。

――横浜市とはまちづくりに関する協定を2012年に締結していますが、それ以前から協力してまちづくりに取り組んでいたのですね。

 横浜市と「次世代郊外まちづくり」の推進に関する包括協定を締結したのは2012年4月ですが、2011年から「郊外住宅地とコミュニティのあり方研究会」を発足し、当社の社員と横浜市の関係する部局の中堅職員、有識者などが参加したワークショップで横浜市の未来について議論を重ねた経緯があります。

 一般的に、許認可権者としての自治体と、開発事業者としての民間企業の関係は、自治体の側は許可を出すか出さないかを法や基準を満たしているかどうかを見て判断し、民間の開発事業者はどこまで法の解釈の幅を広げられるかというギリギリの折衝を行っています。いわば、顔で笑って机の下で蹴り合っているような関係だったわけです。

 また、宅地開発のようないわゆる一次開発に携わる事業者は、事業が完了するとその街との関わりは次第に希薄になることが多いものです。しかし、東急電鉄は鉄道事業者ですから、鉄道やショッピングモールの利用者といった沿線地域の生活者との関わりが続きます。そのため高齢化や郊外の過疎化という人口構造の変化や経年劣化した建物の再生など、成熟した街ならではの課題に目を向ける必要が出てきています。その街を維持するために何ができるのかを考えるべき局面を迎えているのです。

 そのような中で、大都市近郊の郊外住宅地が持つ課題を共有し、ともに危機感を抱く横浜市と手を組み、地域の再生に取り組むプロジェクト「次世代郊外まちづくり」を立ち上げました。

 開発から時間がたった成熟した街の開発は一次開発の時とは異なる苦労があります。その街には既に住んでいる人々がいて住民の意思がありますから、一民間事業者だけで進めるのは難しい課題があります。そこで、公民連携を実践する必要があったのです。

東急線沿線地域とは、東急線の通る17市区と定義している。横浜市と推進する次世代郊外まちづくりはたまプラーザ駅の周辺で進めている(資料:東京急行電鉄)
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――民間事業者にとって、自治体と連携することでどのようなメリットが生まれますか。

 自治体のコミットがあると、民間事業者1社の利益だけでなく、街にとって公共的であり社会性のある事業であることが示せます。また、時代に合った都市計画の変更あるいは規制緩和などの必要性と新たなモデルづくりを民間事業者、自治体、住民で共有でき、一緒に取り組むことができます。

 例えば、横浜市との「次世代郊外まちづくり」では、ワークショップを産学公民による開かれたスタイルで行いました。かつ、落としどころを事前に想定していない進め方を採用しました。それを不安視する声もありましたが、成熟した社会における街が抱える課題への解は、自治体も事業者もまだ誰も持っていないのです。透明性をもって広く地域で話し合い、落としどころを設けずに地域課題を顕在化させ、共有したのち承認される手法を取ることが最も進めやすいのだ、と説得しました。様々な立場の地域住民が参加することによって、答えありきではなく答えを探っていく。このようなワークショップを実施することで得た解だからこそ、実効性がある都市計画に変更するなどして将来の街づくりに落とし込んでいけるのです。