水辺に関心を持つ市民や企業、行政が一体となって、水辺に新しいにぎわいを創造する活動「ミズベリング・プロジェクト」。毎年7月7日には、全国各地の水辺に市民が集まって乾杯する「水辺で乾杯」というイベントが開かれている。2019年度には全国各地の225カ所で、合計1万人が集結するイベントに成長した。しかし、今年は新型コロナ騒動で、9月に延期が決まった。プロジェクトのプロデューサーを務める山名清隆氏は、「いろいろな配慮をしながら、ウィズコロナ時代のニューノーマルの水辺の楽しみ方を、世界に発信する好機にしたい」と語る。

ミズベリング・プロジェクト事務局プロデューサーの山名清隆氏(写真:日経BP 総合研究所)

――2013年に始まった「ミズベリング」の活動ですが、年を追うごとに盛り上がっているようですね。最近の活動状況を教えてください。

 2年前ですが、ミズベリングが2018年度のグッドデザイン賞の金賞を受賞しました。今、水辺での活動に関心がある人たちのコミュニティとして、フェイスブックのメンバーだけでも5500人ぐらいのネットワークがあります。毎年7月7日の「川の日」には、午後7時7分に、全国各地の水辺で市民が集まって乾杯するイベント「水辺で乾杯」を開催しています。参加者は最初3000人ぐらいでしたが、2019年には225カ所で、合計1万人以上が同時多発的に参加しました。

「ミズベリング」のウェブサイト

 水辺で乾杯のサブタイトルは「新水辺風景創造計画」です。普段は行かない近所の水辺に集って、新しい風景を作り出してみようという呼びかけです。施設や催しを作らなくても、まずは自分自身がその水辺の風景になってみる実験です。その場所のありのままを味わってみる。何を感じるかを感じてみようというものです。

 「7月7日7時7分、全国一斉同時乾杯」という遊び心のある言い方が、気持ちを押していると思います。その場に集まっている人はもちろんですが、他にも200カ所で同時にやっていると思うと、不思議でユニークな一体感を味わうことができます。

 水辺で乾杯は、ご近所再発見プログラムなのです。いつも見ている何もない河原でも旅人の目線で見てみると様々な創造的可能性があることに気づく。近所の人が気づく。今までにない関係性や創造性を働かせ始める。今で言うところのマイクロツーリズムですね。

――ミズベリングが始まったきっかけは。

 ミズベリングはもともと、2011年3月に河川敷地占用許可準則が改正されたことにより、民間が河川空間を様々に活用できるようになったことを告知するのがテーマでした。ただ、それをストレートに言うだけでは河川利用のイメージが広がらないので、「こんなことがやれるかも」というアイデアを、ユーザー側のスタンスで示していく国土交通省のプロジェクトとして始めました。水辺で乾杯は、国土交通省の藤井政人さんと2人で、プロジェクトの2年目に立ち上げたものです。

 水辺空間は、河川行政の話から、だんだんエリアマネジメントや地方創成など、まちづくりの素材へと広がっていきました。地方に存在している河川空間が、自分のふるさとのまちづくりに使えるチャンスだと思う人が増えていったということだと思います。

各地の「水辺で乾杯」に事務局は関与していない

――インターネットで検索すると、各地の「水辺で乾杯」の情報がたくさん出てきますが、それらはミズベリングの事務局が主催しているのでしょうか。あるいは各地でそれぞれ独自にやっているのですか。

 それはいろいろです。もともと地方でマルシェやお祭りがあったのを、7月7日に合わせてプログラムを組んでいるところもあれば、飲食店の店主が「これは儲かりそうだから」と店内にポスターを貼って、川に行って乾杯をしたついでに店にも来てもらおうというものもあります。関係者が「国土交通省から言われたのでやっている」というケースもありますね(笑)。

これまでに各地で開催された「水辺で乾杯」の様子(写真:ミズベリング・プロジェクト事務局)
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――事務局が関与しているケースはどのぐらいあるのですか。

 実は、我々が音頭をとってセンターでやるものは1つもありません。事務局のメンバーは8人ほどいますが、そもそも「水辺で乾杯」に関しては、我々8人が集まることすらない。それぞれが自分の住まいの近所でやったり、家族でやったり、自分のコミュニティでやったり。私自身は世田谷区の二子玉川で毎年やっています。

――少し意外な感じがしますが、本当に呼びかけをしただけで勝手に広がっていったということなんですね。では、事務局では「ミズベリング」や「水辺で乾杯」といった名称の利用許諾いった、“お墨付き”のようなものは与えているのですか。

 特にありません。ミズベリングのロゴ(下の写真参照)なども自由に使えます。ロゴはウェブサイトからダウンロードして、真ん中の「ミズベリング」というカタカナの文字の部分を、地域名などに勝手に書き換えてもらってもかまわない。パンフレットやチラシを自分でつくることもできます。

 そういう意味では「ゆるい」のですが、このゆるさをきちんとマネジメントするということについては、とても意識的です。デザインやコピー、言葉遣いなどは、非常に慎重に考えてやっています。

山名氏の名刺に掲げられている「ミズベリング」のロゴ。白抜きの「ミズベリング」のカタカナの文字部分に地名などを入れて、独自のロゴにすることも可能だ(写真:日経BP 総合研究所)