SDGs(持続可能な開発目標)を自治体施策にどう生かすべきか。これまでやってきた取り組みに、わざわざSDGsという看板を掲げる意味はあるのか。――SDGsの達成に向け、自治体は何をたらよいのか。『SDGs×公民連携 先進地域に学ぶ課題解決のデザイン』(学芸出版社)など関連書籍を多数上梓している慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の高木超・特任助教に、自治体における効果的なSDGsの活用方法について聞いた。

高木超氏(インタビュー中のオンライン画面より)
高木超氏(インタビュー中のオンライン画面より)

――SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む自治体は増えていますが、「既存の施策にSDGsの17の目標から合致しそうなもの選んで当てはめてみただけ」のように見えるケースも散見されます。

 確かに「もともと自治体が取り組んでいること自体がSDGsである。だから新しいことはやらなくて良い」というご意見や「SDGsの17の目標のアイコンから選んで計画に貼り付けていくことが活用方法だと思っていた」という声も耳にします。

 「今取り組んでいることがSDGsだ」というのは、それはそれで正しいと思います。しかし、それぞれの施策にSDGsの17の目標からどれかをピックアップしてタグ付けをしても、それだけではまちの未来は何も変わりません。

SDGsを施策間のつながりを再検討するツールとして有効活用

――確かにそれだと「タグ付けした従来の施策を推進するだけ」ということですよね。では、SDGsによってまちの未来を変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。

 実は、SDGsの視点から政策をアップデートする機会は実際にたくさんありますし、そうした取り組みを行っている自治体もあります。私自身も書籍や講演を通じて、SDGsを「分類ツール」として使うだけでなく、「点検ツール」として活用することを提案してきました。

 よく自治体は「縦割りだ」と非難されますが、分野ごとに施策を整理して取り組むことで、課題に対して適切に対応できる側面もあります。一方で、根底から課題を解決するためには、特定の分野だけなく、幅広い視野で課題を取り巻く状況を理解し、対処しなければならないはずです。そこで、SDGsが備える包括的な視点を使うこと問題を的確に分析したり、課題解決の際に生じる相乗効果や負の影響を考慮したりすることができます。こうした「様々な事象のつながり」を意識することが、SDGsを生かす重要なポイントだと思っています。

――その辺りの「様々な事象のつながり」について、もう少し具体的に説明していただけますか。

 SDGsを活用することで、今まで身の回りに存在していたけれど、十分に顕在化できていなかった課題を可視化することができます。

 例えば「ジェンダー平等」がそうです。日本では男女格差が地域で発生していても、十分に議論されていないこともあるのではないでしょうか。そこで、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」という視点から、まずは議論のできる環境を整える。そして、防災や商業といった様々な現行の施策について「ジェンダー平等を実現する」という観点からアップデートしていく。こういった考え方であれば、SDGsは政策の質を向上させるために役に立つと思います。

――地域で「ジェンダー平等」を進めようとするなら、自治体内部がまずそうならなくてはなりませんね。

 その点を積極的に進めている自治体の1つに、兵庫県豊岡市があります。

 豊岡市は、若者の社会減をまちの人口が減少する要因のひとつとして捉え、10代の転出超過人数に対する20代の転入超過人数の示す割合を「若者回復率」という独自の指標で表して分析しています。実際に2015年の国勢調査に基づいて若者回復率を計算すると、男性が52.2%であるのに対し、女性が26.7%と大きな開きが見られました。その原因がジェンダーギャップにあると考えた豊岡市は、その解消に向けて「豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略」を策定したり、民間主導で「豊岡市ワークイノベーション推進会議」を設置したりしています。この会議には、市も事業所のひとつとして参加し、市内における男性育休取得の推進をはじめ、多様な働き方が実現できるよう取り組みを進めています。

2021年度からの10年間を計画期間とする「豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略」を、2021年3月25日に策定した。図は戦略体系図(概要版) (出所:豊岡市)
2021年度からの10年間を計画期間とする「豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略」を、2021年3月25日に策定した。図は戦略体系図(概要版) (出所:豊岡市)

――ジェンダー平等は、移住を考えている人、特に女性にとっては住む場所を選ぶポイントの一つにもなりそうですよね。

 そうだと思います。例えば、「子育てしやすいまち」をうたっている自治体はたくさんあります。でも、その自治体のジェンダーギャップに開きがあれば、女性はその街に住みたいとは思わないのではないでしょうか。