必要とする知識・情報がデジタル化されていない

――デジタルサービスの弱さも露呈しましたね。

 それが、もう1つの課題です。日本では、図書館の機能が来館利用を前提としたものに傾斜しすぎ、デジタルやウェブの技術を生かしたサービスの展開が著しく立ち遅れているということがあらわになりました。

 今回も、有志によって運営されている博物館・美術館(M)、図書館(L)、文書館(A)、公民館(K)の被災・救援情報サイト「saveMLAK」の調査では、公共図書館などの場合、実に90%の施設が来館利用できなくなった時期がありました。その際、「必要とする知識・情報がデジタル化されていない」という厳しい現実をあらためて思い知ったといえるでしょう。

「saveMLAK」のウェブサイト

 コロナの終息が見えないこともあり、この機会に今度こそ、本気で資料のデジタル化を進める必要があります。また、既に国会図書館がデジタル化しているものも多数ありますが、一般公開されていないということがあらためてクローズアップされました。こういった制度上の課題も突破される必要があります。

――この2つの大きな課題について、岡本さんは、どのような方向性に進むべきだとお考えですか。

岡本 saveMLAKで発表した「災害への『しなやかな強さ』を持つMLAK機関をつくる」という呼びかけ(起草:岡本)で、「2分法を超える融合:来館・非来館という2分法ではなく、実空間と情報空間が融合した未来のMLAK機関の理想を追求していきましょう」と記したのですが、今度こそ、「実空間と情報空間の融合」をとことん追求することを大前提として、施設整備が進められるべきです。

――「実空間と情報空間の融合」は、岡本さんや岡本さんが代表を務めるアカデミック・リソース・ガイド(arg、本社横浜市)が、一貫してテーマとしてきた問いでもあります。

岡本 コロナショックでこの主張がついに正当性をもつ、あるいは当然視されるようになると期待しています。コロナの脅威がいつまで続くのかは、まだ誰にもわかりません。ですが、今後も発生が予測される新たな感染症の脅威を見込むと、公共施設の計画・整備・運営は一度ゼロベースから組み上げ直していく必要があるでしょう。

 いま準備しているスクール(都市経営プロフェッショナルスクール・次世代図書館専門課程、主催:arg、一般社団法人公民連携事業機構)でも、この点は非常に重視しています。もともとオンライン講座を主とした開講形態だったのですが、共同開催する公民連携事業機構の木下(木下斉・同機構理事)さんらと相談して、ワークショップのような協働の取り組みなども、可能な限りオンラインで実践することを考えています。実際、argで各自治体から請け負っている仕事は会議もワークショップも講演も、すべてオンライン化に舵を切って、 既に実践フェーズに入っていますので、十分実現できます。

 これはargの持論でもあるのですが、目指す結果をプロセスの段階から実現していかなくてはいけないと思っています。つまり、「実空間と情報空間の融合」が実現した施設を整備するのであれば、その準備段階からあらゆるプロセスにおいて 「実空間と情報空間の融合」を実践していきます。