PFS普及のカギは事業規模の拡大

――事業者も中間支援組織もまだまだ少ないなかで、目標100件の達成に向けて、裾野をどう広げようと考えていますか?

 事業者が手を挙げたくなるような魅力的な事業を作っていくことが重要だと思っています。そのためにガイドラインや専門家の派遣による自治体の意識喚起を先行させる。民間事業者に「PFSは手間がかかるわりにうま味がない」と思われるのを避けなくてはいけません。民間からは、事業規模が小さいという問題の他に、どうも自治体に話が通じない、成果連動の趣旨が理解されにくいという意見も聞くので、内閣府として事業者の意見を整理し、自治体に適宜フィードバックしていくつもりです。

――事業規模が小さいままでは、民間事業者がPFS事業で得られる利益も小さいため、担い手が増えにくいという理解でいいですか。

 その通りです。さまざまな関係者や有識者から、PFSで取り組む個々の事業規模を大きくしないとこれ以上の普及は難しいとご指摘いただいています。自治体の予算が限られるなかで、事業対象エリアを広域にして複数の自治体で連携する、(市区町村レベルではなく)都道府県が主導するなど、事業効果を高めるよう目線を上げることが重要です。内閣府としては、規模を大きくする方策を自治体に示していきたいと思います。

 広域連携の他に、事業期間を長く取るのも事業規模を大きくする方法として有効だと考えます。期間が長ければ、PFS事業の中で行うPDCAサイクルの回数も増えるので、成果がより高まる余地もあるのではないでしょうか。

――アクションプランにはPFSの補助制度を検討するとありましたが、これはどのようなものですか。

 補助制度については、米国、英国で採用されているアウトカムファンドの調査を2019年度に行いました。アウトカムファンドとは、既存の制度や予算区分を超えたPFS/SIB事業について、補助財源となる国の基金のことを指します。

米国のアウトカムファンドのイメージ(「内閣府委託調査 国外のPFS(成果連動型民間委託契約方式)に係る支援制度の事例調査報告書」〔2020年2月、日本総合研究所〕より)
米国のアウトカムファンドのイメージ(「内閣府委託調査 国外のPFS(成果連動型民間委託契約方式)に係る支援制度の事例調査報告書」〔2020年2月、日本総合研究所〕より)

 例えば、日本では市町村が介護予防に取り組んでいますが、介護給付は12.5%が市町村の負担で、残りは都道府県や国、利用者の負担です。市が1000万円かけてPFSの仕組みを使った介護予防事業に取り組み、1億円分の介護給付費の削減効果が出たとして、そのとき、自治体が受ける恩恵は1250万円にとどまります。これでは、財政的な事情を考えると、自治体にとってはPFSを導入するメリット(削減できた社会保障費)は小さいですよね。

 もちろん住民が幸せになること自体は自治体にとっても喜ばしいことのはずですが、自治体がコストをかけて取り組んだ事業なのに、その恩恵を国や都道府県と分け合って享受するのでは、市町村としてはモチベーションが上がりにくい。こうした点が、PFS事業を行うかどうかについて自治体の意思決定に大きな影響を与えます。そこをカバーするのがアウトカムファンドというわけです。

 また、事業規模の拡大という面から見ても、アウトカムファンドのような仕組みがあれば、自治体も事業拡大フェーズへと踏み出しやすいのではないかと思います。今後、PFSの普及状況も見ながら、さらなる促進策の選択肢の一つとして考えていきたいと思います。

 一方で、日本でPFS事業を行う場合、事業の各段階で様々な省庁から補助金などの支援を受けるため、手続き等が煩雑になります。案件を形成する際の事業化調査(FS)や、事業成果に連動した支払い、効果検証のためのコストなどさまざまな費用をワンストップで支援できるPFS専用の補助金制度も検討していきたいと思っています。

――自治体によっては、現状でうまくいっている事業まで成果連動型にすべきなのかという戸惑いの声もあるようです。

 私たちも、うまくいっている事業まで、全てPFSに切り替えるべきとは考えていません。ただ、PFSにすれば事業の成果がきちんと検証されます。例えば、大腸がん検診などの受診勧奨がどれだけ実を結んだのかなどが明確になる利点はあると思います。さらに副次効果として、同様の事業を複数の自治体がPFSで事業化すれば、それらを相互に比較もできるので、より費用対効果の高い取り組みを明らかにして次のステップにつなげていけるのではないでしょうか。ここまでいけばEBPM(証拠による政策立案)にもつながっていきます。行政の現場では時に、民間に比べてPDCAサイクルがきちんと回りにくい面もあると思いますが、PFSはPDCAを回すツールにもなりえます。

――国保の場合、保険者努力支援制度(市町村と都道府県を対象とした予防や受診勧奨の取り組み度合いに応じたインセンティブ制度)との連動も考えられそうです。

 保険者努力支援制度は自治体の関心が高く、PFSの促進にも働くようなやり方を厚生労働省に検討してもらっています。今年度からは、全体の点数で評価して配分する交付金とは別枠で、事業費に連動した枠を設け、そこではPFS事業の支払いも対象になると聞いています。