「マチマチ」は2016年にサービスを開始した、地域限定型のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。17年6月の東京都渋谷区との連携協定締結を手始めに、現在、全国の地方自治体との連携を強化している。この6月には品川区と協定を締結し、これにより連携自治体は11を数えた。事業を運営するマチマチ(東京都目黒区、サービス名と社名は同じ)の六人部生馬社長に、地域SNSを立ち上げた経緯や今後の展開、これからの地域コミュニティづくりにおける公民連携のあり方などについて聞いた。

(写真=清水真帆呂)

――「マチマチ」は、地域限定で情報交換ができるSNSで、ご近所SNS、地域SNSなどと呼ばれています。現在、どのくらいの地域で使われているのでしょうか。

 直近では、全国で1700ちょっとある全市町村の53%のエリアにマチマチの利用者がいるという状況です。つまり、日本の半分ぐらいの地域で使われるようになっています。全体の利用者数は非公表としていますが、利用者数もずっと伸び続けています。

 マチマチでは、最初に利用する際に郵便番号で自分の地域を登録することで、地域ごとのSNSコミュニティなどに参加できるようになります。例えば、子育てやお店・病院のお薦め情報など、様々な地域の情報交換に使われています。

――現在のユーザー属性は、どのようになっていますか。ママ世代の利用が多いということですが。

 男女別でいうと、女性が6割、男性が4割です。年齢層で見ると、20代後半から40代前半で7割を占めます。15%が40代後半~60代前半。残りが20代前半です。使い始めるタイミングとしては、お子さんを妊娠されたタイミングや、引っ越しをしてきて新しい街に入るタイミングです。引っ越しを機に入るのは、若い人だと上京してきた大学生や新社会人なども多いです。上の年齢層では、特に定年前後の男性の方が多いという傾向があります。

――自治体の場合は、例えば町内会の会長など使命感のある人からアプローチしていくといったやり方で地域コミュニティの活性化を進めてきましたが、マチマチはそうではない一般の人からアプローチしていく。地域のキーマンを押さえてコミュニティを活性化させるといったやり方とは逆のアプローチと言えるかもしれませんね。

 ええ、おっしゃる通りですね。我々も初め、キーマンというか地域のハブとなる人たちを押さえることも考えたのですが、そういう方は既にネットワークがありますし、困ってらっしゃらない。我々はそれよりも、その他大多数の人たち。そうした個人個人の行動とか、つながりの状態を変えていくことこそが一番インパクトがあると捉えていて、そちらにフォーカスをしています。

 そうした人たちが集まっていくと、町内会長さんとか青年部の方とか商店会長とかも後から自然と入ってこられます。地域コミュニティづくりは、従来の地域の組織・団体の維持・強化が難しいという話をよくお聞きします。今の都市化や共働き世帯の増加などの社会変化についていけないないのかもしれません。

 今後は先ほど申し上げたように、地域においても、より「個」がエンパワーメントされた形でコミュニティが形成されてくると考えています。

――なるほど。昔は、同じネットコミュニティの世界でも「パソコン通信では中心となるシスオペ(システムオペレーター)が成否を握る」などといわれていたのですが、今は、それぞれの個人が分散的に動くという、以前とは異なる世界になってきた。

 我々も当初、コミュニティをマネジメントする人を置いたらいいんじゃないかと言われて、リーダーと呼ばれる人たちを置いていた時期もあったんですが、今は置いていません。ネットでは、個人が動いていく世界、いわゆるP2P(ピア・ツー・ピア)やブロックチェーンといった世界ができていて、中央集権から分散型になっています。地域コミュニティも中央集権でやることに破綻がきているので、個人がより小さなコミュニティでやっていく、目の前の共通の課題を持つ個人がそれぞれ集まって解決していくという形がいいのかもしれません。そして、そうしたコミュニティは、出たり入ったりも自由というところが、これからの時代のあるべき姿かと思っています。

地域にまだインターネットが入っていない

――地域コミュニティづくりが変わってきますよね。

 おそらく、地域コミュニティにおける課題解決といった領域は、自治体が中心にやってきましたし、これからもやっていくであろうとは思います。ただ、少し観点を変えて、コミュニティづくりについては、我々のようなところとも組みましょう、と。これまで自治体がやってきた領域の中で、民間が得意なところは民間に任せていただこう、ということです。地域SNSは、そうした分野の1つになると思います。

――得意分野というのは、具体的には。

 1つ目は、自治体単体では難しい地域のエコシステムの構築。地域住民を始めとして、町内会・自治会、医師会(大田区大森医師会と提携)、NPO、事業者を巻き込んだ地域のエコシステムを構築することができます。

 2つ目は、高い技術力をベースに地域コミュニティづくりを科学していること。ただ単にオンラインのサイトを作ったから、それで人と人がつながるかというと、そんなに簡単なものではありません。インターネットを中心としたテクノロジーを使ってどうコミュニティを作るか、というところは弊社の強みです。テクノロジーを扱うことに関しては、第一線のプロがやらせていただいています。例えば、人と人をどうつなぐかについても、裏では膨大なデータ分析などを行っていて、人と人がつながるアルゴリズム、どういう人と人がつながるのかなどを分析して、共通点やタイミング、さまざまなつながりのきっかけなどを導きだしています。

 こうしたことをオンラインでやりながら、さらに実際に利用者に会ってインタビューを行い、その結果をソフトフェアに反映したり、オンラインと実際の商店街のイベントを連携させたりしてコミュニティづくりに役立てる。そうして範囲を広げながら、全体の事業をつくっています。

――ところで、そもそも地域SNS、マチマチの事業を始めた経緯とは。

 私のキャリアとしては、インターネットやテクノロジーが好きで、それが縁で最初は情報通信革命真っ只中のソフトバンクに入りまして、その後EC(電子商取引)のオーマイグラスを創業して、メガネ産業に入っていきました。そしてちょうどオーマイグラスをやっているときに子どもが生まれて、そのときに気づいたことがありました。

 子どもが生まれて地域の情報をインターネットで探したところ、全く役に立たなかった。どこの病院がよいのか、保育園や幼稚園、習い事といった地域の情報が出てこない。フェイスブックなどに時々情報が載ってはくるのですが、近所のものではなくて役に立たない。結局、その時に役に立ったのが、公園や児童館などでたまたま知り合ったリアルな関係の人たちからの情報でした。

 また、父が40年ぐらい横浜で昔ながらの地場の不動産会社をやっていて、父にはそうした地域のネットワークがあって、「保育園ならここが評判いい」「それだったら○○さんに聞けばいい」といった情報を全部知っているわけです。

 こうした2つの体験を通して、地域ではまだインターネットが活用されていないということが、気づきとしてありました。スマートフォンの普及もあり、そろそろ地域でインターネットが活用されるようになるのではないかというのが、今回の事業を始めたきっかけです。フェイスブックがSNSで世界を舞台に成し遂げたことを、地域で実現したいと思って始めたのが、マチマチでした。