地域振興で求められがちな「無償協力」、株式会社化はその防波堤に

 あわえはそうした背景から設立しましたが、あえて、サイファー・テックとは資本関係がない株式会社としています。これは、サイファー・テックの1部門、あるいは、代表が趣味でつくった会社に見えるのを避けるとともに、地方創生や地域振興のプロが集まる会社にしたいという思いが強くあったためです。

 株式会社は、「継続と成長」を基本ルールとして組み込んだ組織形態だと思います。地方創生や地域振興関連のビジネスには今、個人やNPO法人も含めたさまざまな形態の組織が参画していますが、将来、行政からの補助金や支援制度が途切れたときも地域に寄り添い続けるには、「継続と成長」を前提にした組織であることが不可欠だと考えました。

 また、株式会社にすることで、プロとして対価をもらう仕事をすることが明確にできます。今は公民連携(PPP)によって解決されるのかもしれませんが、当時の地域振興は、公共サービスの一環として取り組まれており、民間は無償協力を依頼される傾向がありました。その防御壁としても株式会社にしています。

あわえの美波町本社オフィス「初音湯」の外観(写真提供:あわえ)
あわえの美波町本社オフィス「初音湯」の外観(写真提供:あわえ)
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 もっとも、あわえの経営は当初苦戦しました。黒字に転換したのは設立5年目に当たる2017年度です。プロとして、適正な対価をもらう会社にするという思いはあったものの、公共関係のビジネスで利益を出すための事業戦略やノウハウが不十分なうちに海へ飛び込んだようなものでした。

 転換点は県外の自治体の事業が増えたことです。今、売上比率では県外が6~7割を占めています。あわえの事業は企業誘致のコンサルティングやマッチングの機会創出などのソフト型で、付加価値の大部分は、経験やノウハウ、企画やアイデアです。そうしたソフト面の価値に理解をいただける自治体が、県外にも増えてきたことが要因です。

──あわえの事業の強みや特徴はどんなところですか。

 あわえの設立は、美波町がサテライトオフィスを誘致する際のお手伝いをサイファー・テックで行ったことがきっかけの一つでしたが、「これは私たちが競争力を持つ領域だ」という感覚がありました。あわえの事業もそこからスタートしています。

 強みは、私たちの実体験に基づいた、ビジネス視点での誘致ができることでしょう。企業がサテライトオフィスの活用に取り組む目的は、環境の良い場所で働くといった環境改善だけではなく、サテライトオフィスを通じてビジネス上の課題を解決することです。

 その点、あわえは、採用力の強化、会社の体質改善、新たなビジネスチャンスの発掘といった経営のど真ん中にある課題を、美波町への進出で解決したサイファー・テックの経験を受け継いでいますし、自らが地方で創業するとともに、多くの社員が都市部からの移住経験も有しています。

 最近は、ワーケーションによる地域への企業誘致も盛んですが、私としては「ワーケーションのためにサテライトオフィスをつくる」という言い方は引っかかります。ワーケーションは「手段」に過ぎません。誘致する企業にとってはどんな経営課題が解決できるか、地域にとってはどんな社会課題を解決できるか、そこまで考えて取り組んでほしいと思います。