企業からのサポートを協賛金にリニューアル

――リニューアルされた「未来いまカラダポイント事業」は、それまでの「頑張る尼崎市民を応援するサポーター企業」と、取り組み方はどう変わったのでしょうか。

 企業から協賛金をいただくことにしました。「頑張る尼崎市民を応援するサポーター企業」の取り組みを通じて、企業からお金をもらわないと、そのお金を取り戻そうとしてがんばってくれないことを学んだからです。

 その額に見合ったポイントを企業にお渡しして、自社の推奨する商品にそのポイントをつけてもらうヘルスアップ戦略事業「未来いまカラダポイント」制度をスタートさせました(図3・図4)。

 「尼崎市いまカラダポイント」では、4月1日から翌年3月31日までの1年間で1000ポイントを貯めた市民が、1000円分相当の商品やサービスなどと交換できる仕組みになっています。

 まず、特定健診受診で300ポイント、特定保健指導を受けて300ポイントが与えられ、特定健診に友達を紹介するとさらに100ポイント、この3つだけで合計700ポイントが与えられます。これによって、特定健診の受診率を上げる効果が見込まれます。

 残りの300ポイントは、協賛企業のポイントのついた健康向上に役立つ商品やサービスを市民が購買・利用することで貯められます。

図3●未来いまカラダポイント事業のイメージ
図3●未来いまカラダポイント事業のイメージ
(資料提供:野口緑)
図4●「未来いまカラダポイント」のポイントブック
図4●「未来いまカラダポイント」のポイントブック
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図4●「未来いまカラダポイント」のポイントブック
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<div style="clear:both;"> </div>「ポイントブック」は健康診断を受けたり、健康を意識した買い物などでポイントがたまる仕組みで、一定以上たまると商品券などに交換できる(資料:尼崎市)
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<div style="clear:both;"> </div>「ポイントブック」は健康診断を受けたり、健康を意識した買い物などでポイントがたまる仕組みで、一定以上たまると商品券などに交換できる(資料:尼崎市)
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「ポイントブック」は健康診断を受けたり、健康を意識した買い物などでポイントがたまる仕組みで、一定以上たまると商品券などに交換できる(資料:尼崎市)

――協賛企業のポイントの仕組みは、どうなっているのですか。

 協賛金5000円以上で、市から企業に1万ポイントを渡します。企業は、自分たちの推奨する商品やサービスにポイントを付けます。魅力的な商品でポイントを発行しないと利用者はリピートしてくれないし、1000円たまったときに「あのお店のメニューと換えたい」「あの商品と換えたい」と思ってもらえないので、企業が積極的に努力してくれると考えました。

 どのような商品やサービスに何ポイント付けるかは、企業にお任せします。高いポイントを付けると、市民もそれを目当てにやって来るので、店や商品・サービスを知ってもらえる。持っているポイントがこうして早くさばけると、企業からは「追加で1万ポイントください」という話が市に来るので、さらに協賛金が入ります。実際、年間で何度も追加があります。

――ポイントがもらえる商品のセレクトには、何か、条件をつけているのでしょうか。

 「健康にいいもの」が条件ですので、どんな商品やサービスをポイントの対象にするかは、相談します。たとえば、マクドナルドにはヘルシーメニューがなかったので、注文をつけました。塩分量も考えながら、野菜の量は100グラムを超えるように、ベーコンレタスバーガーに、サイドサラダ、コーン、ドリンクの『野菜生活』をつけて、尼崎限定の「未来いまカラダ野菜セット」を考案してもらいました。

――1000ポイント貯めた市民は、どのような商品と交換できるのですか。

 ローソンで使えるQuoカードや、阪急阪神おでかけカード、イオンギフトカードの1000円分や、マックカード500円分を2枚、つきたて米「新潟コシヒカリ」2キロ、スポーツクラブ1ヶ月無料利用など、いろんな商品と交換できます。市民がどの商品をほしいかも、企業努力になります。

 ポイントと交換された1000円相当分の商品やサービスについては、企業の持ち出しではなくて、市に請求してもらいます。「未来いまカラダポイント」制度は、市から負担金として年間260から270万円程度、あとは協賛金で、全部で年間およそ500万円の予算で行われています。

――1000ポイント貯まらないと、交換できないのですか。

 はい。その結果、交換されないポイントが発生するので、企業に5000円で1万ポイントをお渡ししても、市としても赤字にならない仕組みになっているわけです。

――公民連携を「頑張る尼崎市民を応援するサポーター企業」から「未来いまカラダポイント」にリニューアルして、効果はありましたか。

 前よりいいですね。企業の主体性が全然ちがう。ほとんどの協賛が続いていて、新しくどんどん参加しています。コラボがどんどん進んで、街の小さな飲食店から大手企業まで、小売りを通じてポイントを出してくれたり、味の素など、ある程度の金額の協賛金を出してくれる企業も増えています。

――いろいろな地域や自治体が健康のポイント事業に取り組んでいますが、尼崎市の「未来いまカラダポイント」がほかの事業とちがう点は何でしょうか。

 一番の違いは、企業と一緒に取り組んでいるというところです。ほかの自治体は、第三セクターとか、市の施設の利用でポイントを貯めることが多い。だけど、市民にとって、本当の意味での環境を考えると、やっぱり普通の企業が対象になると思います。企業で販売する商品とか、企業で買えるもの、サービス、そういうものを対象にしないと、おもしろくない。

――「未来いまカラダポイント」は、どんな成果をあげているのでしょうか。

 「ポイントブック」は年5万部を発行し、特定健診会場や、ローソンなど協賛企業で配布しています。利用者の数はとらえにくいのが次の課題ですが、特定健診の受信者には必ずポイントブックとポイント1回分を渡していますので、それだけでも2万人になります。協賛企業の店頭でこのポイント事業を知って「特定健診が一番ポイント高いんや。受けよ」となってくれることを狙っていますが、そういう人たちもいれたら、おそらく2万5000人ほどが、この事業に参加していると思います。

 1000ポイントまで貯める人はスタート時で700人くらいでしたが、年々増え、平成29年度のポイント交換の申請者は1700人を超えました。

――2006年度に「ヘルスアップ尼崎戦略事業」がスタートし、2007年に「頑張る尼崎市民を応援するサポーター企業」を募集し、現在は「未来いまカラダポイント」で公民連携を拡充させているわけですが、その効果は、尼崎市民の健康実態にも現れているのでしょうか。

 特定健診が始まる前、2003年から2007年までの5年間の心筋梗塞の標準化死亡比は、兵庫県や阪神間7市と比べて、尼崎市は非常に高かった。しかし、2008年からの5年間では、ほかの2つよりも低くなっています(図4)。

図4●心筋梗塞標準化死亡比(男性・女性)の比較
図4●心筋梗塞標準化死亡比(男性・女性)の比較
(資料提供:野口緑)

 このことによって、心筋梗塞予備軍の健康状態も回復しているので、1人当たりの医療費の伸びも、2008年度から、尼崎市だけが鈍化しました。結果、7年後の2015年度までの1人当たりの医療費の伸びは、兵庫県や阪神間7市に比べて、約1万円も抑えられています。