公民館の運動よりも、ショッピングモールを歩いたほうが楽しい

 フレイルチェックと並行して、飯島氏はフレイル予防産業の活性化に力を注ぐ。なぜなら「地域を彩るのは産業界。フレイル予防は基本的にまちづくり全般として捉えるべき」との思いがあるからだ。

 中でも、スーパーマーケットやショッピングモールといった住民にとって身近なタッチポイントに重点を置く。2019年には柏市とイオンモール柏が共催した「フレイル予防啓蒙イベント」が開かれ、モールウォーキングや簡易フレイルチェックを実施。柏市、キユーピー、ハウス食品グループ、サンスターグループがフレイル予防のブースを出展するなど、自治体や企業を巻き込んだ動きが現実のものとなっている。

 「地味な公民館の運動よりも、モールウォーキングのほうが確実に出会いが広がる。ショッピングモールは3階建てぐらいの広大な敷地に、さまざまな業種が凝縮して入居している。私がフレイル予防産業で最も重視しているのが異業種同士のコラボレーションであり、ショッピングモールはうってつけのステージとなる。

 店内をくまなく見物しながらウォーキングする効果は大きい。産地の食材を試食して旅行に思いを馳せたり、フードコートで共食(一緒に食事すること)したり、ドラッグストアでバイタルデータを計測したりして、楽しむ空間としてショッピングモールを活用する。最後に食品コーナーで買い物するルーティンにすれば、社会と触れ合いながら半日は過ごせるだろう」(飯島氏)

 エンターテインメントのような、これまでは結びつかなかった業種とも連携したいと飯島氏は語る。柏のイベントでお笑い芸人のステージを組み込んだのは、1つのトライと言える。「ショッピングモール業界がエンターテインメントをどのように取り込んで化学反応を起こしていくか。それらも探ってほしいとお願いしている」と飯島氏。そのほか、藤田医科大学の松尾浩一郎教授らと共同で口腔機能を鍛える「カムカム健康プログラム」を推進し、公開したレシピに従って地域でカムカム弁当が販売されるなどしている。

 「つまり、フレイル予防には掛け合わせの可能性がたくさんあるということ。早期発見を可能にする意味ではIT業界への期待も大きいが、Bluetoothで連携したウエアラブル端末のデータがスマホで見れますと言ったところで、5000人ほどでぴたりと登録者が止まることがほとんど。デバイスを作ったから使ってくれると思うのは間違いだ。企業の論理だけでは、行動変容を促すのは難しい。

 だからこそ、我々のように高齢者の生々しい世界を知る人たちの意見も採り入れながら、高度なセンシング機器をどうやって住民の生活に溶け込ませるかの一工夫、二工夫を演出し、ほかの業種とコラボすることを意識してほしい」(飯島氏)

 10月21日の日経クロスヘルスEXPO 2021内で行われるパネルディスカッション「産官学で進める予防・健康づくり」では、モデレーターの立場から飯島氏は自らの問題意識も掲げながら議論を深めたいという。当日は飯島氏からさらなる踏み込んだ発言が聞けるチャンスだ。ふるって参加いただきたい。

[画像のクリックで拡大表示]

【お知らせ】
日経クロスヘルスEXPO 2021
産官学で進める予防・健康づくり
2021/10/21(木) 11:30 ~ 12:30(オンライン)

<聴講無料・事前登録制>


[モデレーター]
東京大学 高齢社会総合研究機構長
未来ビジョン研究センター教授
飯島 勝矢氏

詳細はこちら