――ソーシャルグッド事業部としての売り上げ目標は?

 具体的な金額は申し上げられませんが、まあ、そこそこは(笑)。一部は既に事業化していますが、マネタイズは課題です。会社全体の収益に貢献できる事業かという意味では、率直に言って道半ばですね。

 先ほど例に挙げた「われ椎茸」のように、これまで「わけあって、安い。」というキャッチフレーズを掲げてきましたが、これからは単に製造コストを削減するだけでなく、環境負荷や都市問題など「社会的コスト」の削減を含めて考えなければいけません。いくら安くできても、誰かが泣いていてはだめなのです。

「ブランド貸し」ではなく、行政と共に汗をかきたい

――他の自治体からのオファーはありますか。組む相手を選ぶ基準は。

 殺到しているというほどではありませんが、オファーはときどきあります。すでに鴨川市、豊島区、山形県酒田市と包括連携協定を結びました。先ほども申し上げましたが、我々は「生活者の役に立つ」ことを基本理念としていますので、お話があった時点で、検討しうる分野でどのようにお役に立てるかを考えます。

 例えば、「施設を新設するので、建築のデザインをお願いします」というだけでは、まちの人々の役に立つのは難しいと思います。もう一歩踏み込んで、行政と我々がどう連携できるかを模索していきたいですね。

 我々は決して大企業ではありませんが、「無印良品」のブランドを使えることは、行政にとって魅力の一つだとは思います。それで利用者や交流人口が増えるなら、それはそれでいいでしょう。しかし、それだけでは我々が行政と連携する理由にはなりません。名前を利用してもらうだけでなく、一緒になって頭を使い、汗をかくプロジェクトでぜひ協働したいと思っています。

――フィンランドの話が出ましたが、行政との連携では海外も視野に入れいるのですか。

 もちろんです。今、最も重要な市場は中国です。売り上げの比重も大きいですし、店舗数も230店ほどあります。中国以外でも韓国、台湾、香港など東アジアの地域は日本と同様に少子高齢化問題を抱えている。ですから、我々が日本で取り組んでいる地域活性のスキームは東アジアにも敷衍(ふえん)できると考えています。

――地域での取り組みを進めるうえで、無印良品というブランドはどのような意味を持ちますか。

 「商いで社会の役に立つ」ということは、無印良品が生まれたときからの事業の根幹でした。それ以来ずっと、消費社会に対し、異なる価値観の提供を追求してきたのです。だからこそ、今手掛けている地域連携の取り組みも、みなさんから見て突拍子もないことだとは思われていないのではないでしょうか。「格好をつけて社会貢献をしている」とは見られず、比較的自然なこととして受け入れてもらえるのが、我々の強みではないかと思います。

 中山間地の棚田や廃校、都市の中小公園――それぞれ関係のないテーマのように見えて、実ははいずれも「価値を正当に評価されずに見捨てられている存在」という点が通底しています。地域の方や行政と一緒に、その価値をいかに編集したり再発見したりしていくか。我々がやろうとしていることは、「われ椎茸」のときから少しも変わっていない。私はそう思って取り組んでいます。

生明弘好(あざみ・ひろよし)
良品計画執行役員 ソーシャルグッド事業部長(兼)スペースグッド担当部長
生明弘好(あざみ・ひろよし) 1998年に良品計画入社。海外事業部アジア地域担当部長、MUJI HONGKONG CO.LTD Managing Director、海外事業部北米担当部長、MUJI U.S.A. Ltd Presidentを経て、2014年に事業開発担当部長。18年から現職(写真:北山宏一)