スポーツクラブ大手のルネサンスは、今年、「健康ソリューションカンパニー」を前面に打ち出した中期計画を策定した。「地域を健康に」を旗印に、企業や自治体の健康づくりを積極的に支援していく。会長の斎藤敏一氏は「フィットネス産業の成長のカギを握るのは、介護や医療周辺産業を取り込めるかどうか。健康産業への脱皮と、業種・業界を超えた連携に、積極的に取り組んできた」と語る。国のスポーツ・健康政策にも詳しい斎藤氏に、自治体との連携や健康課題解決企業としての取り組みについて聞いた。

(写真=清水真帆呂)

――少子高齢化の中でも、ルネサンスをはじめ業績を伸ばしているフィットネスクラブは少なくありません。

 会社を定年になったシニア層の利用が増えてきているからです。今、うちの会員の約30%は60歳以上です。忙しい現役世代の人は会員になってもあまり利用せず退会してしまうケースが目立ちますが、シニアならそういうことはありません。当社はシニア会員の増加に向けた取り組みを、他社に先駆けて行いました。一般会員より月に500円ほど安い「シニア平日会員」を設けたのです。プールに入りやすいように、はしごを階段にしたり、クラブ内を落ち着いた色調にしたりしたのもシニアに向けた配慮です。

 それでもフィットネス産業の国内市場規模は5000億円程度。5兆円規模の健康食品・健康機器などの市場や、医療の40兆円、介護の10兆円といった市場に比べれば“ニッチ”なマーケットです。そこでそちらのほうへ出ていこうと考えました。介護はともかく、民間企業は直接医療はできませんから、健康づくりとか生活習慣病予防といった、その周辺産業への進出が狙いです。幸い、国が民間を巻き込んで健康や予防の分野を強化しようという政策を打ち出し始めるという追い風もありました。

医療周辺産業や介護に事業を拡大すれば巨大なマーケットが開ける(斎藤敏一氏の講演資料より)
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市町村に移管された「介護予防」を引き受け

――介護事業では、「心身両面の健康づくり」を目指していますね。自治体の事業の受託にも積極的です。

 介護保険の事業のうち、介護予防が市区町村の行う「地域支援事業」に模様替えされたことを受けて、当社は「認知症」「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」などの予防のための事業を、200を超える自治体から1000件以上受託してきました。そこでは健康運動指導士や運動指導員を派遣して体操、マシントレーニング、水中運動などを指導します。併せて、五感に刺激を与えながら体を動かして脳を活性化する「シナプソロジー」も行います。これは認知機能や注意力・記憶力などの改善が見込める手法で、当社はそのための指導者を養成、その数は既に4500人に上っています。

 また、通所介護の事業として、リハビリテーションと運動に特化したデイサービス「元氣ジム」を、フランチャイズを含め既に全国18カ所で運営しています。理学療法士が常駐して個々人の身体機能の評価とそれに応じたリハビリプログラムを提供し、高齢者が自立して生活できることを目指します。もちろんシナプソロジーも行っています。

――企業向けでは、ご自身が委員長となって、2013年から「健康経営会議」を開催してきました。今年でもう6回目ですね。

 8月28日に開催した今年の健康経営会議は、550人の会場が満員となり、入りきれない人が出る盛況でした。スポーツクラブは来場するのを待って提供する業態ですが、ヘルスケアの事業はそうではありません。自治体向けの健康づくり事業にしろ、企業に対する健康経営の提案にしろ、私たちのほうから出ていく形の事業です。より多くの人を健康づくりに巻き込むためには、こうした姿勢が必要です。