地域の中から新たなビジネスや価値を見つける

――「つなげる30人」では、多様なステークホルダーが協力する社会実験が実現することが特徴とのことですが、例を教えていただけますか?

「第1回渋谷サステナブル・アワード2019」のウェブサイト。「渋谷をつなげる30人」から生まれた落書き消しのプロジェクトが大賞を受賞した
「第1回渋谷サステナブル・アワード2019」のウェブサイト。「渋谷をつなげる30人」から生まれた落書き消しのプロジェクトが大賞を受賞した

 例えば、「渋谷をつなげる30人」の第3期で生まれた落書き消しのプロジェクト(落書きの除去活動及び啓発活動に関連する事業)があります。「第1回渋谷サステナブル・アワード2019」を受賞するなどでメディアにも取り上げられました。

 渋谷では壁画アートが名物のようになっていますが、アートと落書きの境界が曖昧なまま増加を続け、地域の問題になっていました。そこで当時の「渋谷をつなげる30人」の参加者がこれを取り上げ、壁画アーティスト、衣料品や雑貨を販売するビームス、工作機械で知られるボッシュ、東急不動産などの各社員で構成する6人のチームを作り、新しく楽しい解決方法を模索しました。

 具体的には、渋谷区に本社を置くアパレル販売などのビームスが落書き消しのためのおしゃれなユニフォームをつくり、それを販売することで、買った人が落書き消しに参加する。併せて、落書き消しに利用する最先端の機器を、やはり渋谷区に本社を置く自動車部品・カー用品のボッシュが提供してカッコよく落書き消しができるようにするといったことが実現しています。

 この活動によってビームスは、新たなユニフォームビジネスの可能性を実験できました。ボッシュはドイツに本拠を置くグローバル企業でありながら、地域との関係性を構築してCSR(社会的責任)活動に取り組むことができました。また、渋谷区も一連の対話を通して落書きと壁画アートを区別し、壁画アートについてはポジティブに捉えるようになりました。

 「つなげる30人」によって構築されたネットワークを使って社会実験を行った例もあります。ある自動車メーカーが渋谷で、「スローモビリティ」という、電気自動車をゆっくり走らせる移動サービスの社会実験に際して、渋谷をつなげる30人の参加者だった地域の商店街の人たちなどと協働を行いました。

 その結果、スローモビリティの社会実験は、電気自動車がゆっくり走るだけのものでなく、地域の再生を担うサービスの一つとして位置づけることができ、自動車メーカーにとっても、地域にとってもより有意義になったと思います。