行政職員に求められる、縦割りの組織を超えたアジェンダ設定

――アジェンダがなくても、企業が「つなげる30人」に協力するのはなぜでしょうか?

 企業には1社ごとに「つなげる30人」が目指している世界観について話をして理解を求めています。地域にどのような貢献をしたいのか、ファストイノベーションにどんな限界を感じているのかについてうかがい、「つなげる30人」のようなスローイノベーションの手段がその対策として近道になることを説明します。

――自治体は何を求めていますか?

各地の「つなげる30人」の情報を発信するウェブサイト「つなげる30人新聞」
各地の「つなげる30人」の情報を発信するウェブサイト「つなげる30人新聞」

 自治体が求めているものは二つあります。

 一つは、外部の人たちとの協働を通じて、職員の視野を広げることです。行政組織は部署ごとに縦割りで住民とつながる傾向があります。その壁を破り、部署横断的な連携を強めるために「つなげる30人」を活用したいと考えています。

 京都市はその例でしょう。京都市は都市経営戦略室を4月に設置して、経済と地域を統合的に考えるなど、部署横断的な取り組みによるイノベーションを求めています。そこで我々が、「京都をつなげる30人」の運営も含め、イノベーション創出につながる職員の意識改革などを支援しているところです。「つなげる30人」では、解決すべき課題に対するコンセンサスを市民といっしょにつくり上げていくため、行政の職員に縦割りの組織を超えたアジェンダ設定が求められるのです。

 また、相模原市(神奈川県)とは3~4年にわたり、様々な事業を進めてきました。まだ「つなげる30人」という形にはなっていませんが、ここでも課題は職員の部署横断的な取り組みの強化です。我々は研修を通して、微力ながらその支援をしています。

 もう一つは、行政と企業が本気で協力する体制をつくることです。

 企業は地域の課題を解決する新製品や新サービスを開発するため、実証実験や社会実験に意欲的な自治体を探しています。自治体も、地域が抱える課題の解決に向けて、本気で協力してくれる企業を探しています。しかし、現状では両者はうまくマッチしていません。

 その状態を抜け出すため、自治体は、「つなげる30人」によって信頼関係を構築し、地域の課題を先進的でユニークなものに設定して、企業と地域がイノベーションによりともに発展する状態をつくりたいと考えているのです。

野村 恭彦(のむら たかひこ)
Slow Innovation代表取締役
野村 恭彦(のむら たかひこ) 1992年、富士ゼロックス入社、同社総合研究所にてCSCW(Computer Supported Cooperative Work)を研究、コーポレート戦略部では2000年に新規ナレッジサービス事業KDI(Knowledge Dynamics Initiative)を自ら立ち上げ、シニアマネジャーとして12年にわたりリード。2012年6月、企業・行政・NPOを横断する社会イノベーションをけん引するプラットフォームとして、フューチャーセッションズを創業。2013年、金沢工業大学 虎ノ門大学院 教授を兼任。2019年10月から現職。