アウトドア用品大手のモンベルは、震災や豪雨などの災害時における被災地支援活動に加え、アウトドアを基軸としたさらなる取り組みとして、地方自治体との「包括連携協定」締結を推進している。既に45自治体(6県・39市町村)と協定を締結。この包括連携を軸に、それぞれの地域の活性化や、防災・災害対応などの面で大きな成果を上げている。自治体との連携を推進する同社の辰野勇会長に、これまでの経緯と現状、今後の計画などについて聞いた。

(写真=直江竜也)

――この10月、11月に京都府亀岡市、青森県西目屋村と相次いで「包括連携協定」を締結され、これで包括提携する自治体は45団体となりました(全体では日本航空と天理大学の1企業1大学を合わせた47者と協定締結)。なぜこうした連携を進めているのか、そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

 現在自治体などと進めている包括連携は、最初に三重県の鈴木英敬知事から話をいただいたことから始まりました。もともと我々はアウトドアの会社で、防災にも関心があって、現在提供している防災用品の中に「浮くっしょん」というものがあります。これは普段は座布団(クッション)として使うのですが、津波などが来た時には、すぐにライフジャケットになる。私が設計・デザインしたのですが、これがきっかけです。三重県はご案内の通り、南海・東南海の地震・災害が起こる可能性が極めて高い地域ということでもありました。

 この浮くっしょんは、東日本大震災の際にいわゆる被災地支援ということで、子供たち72人が命を落とした石巻の大川小学校に行った時の経験からできたものです。その時に私が非常に残念に思い至ったのは、ハザードマップで、津波が来たらここまで水が来ると分かっていながら、なぜライフジャケットを用意しておかなかったのかということ。船は当然のこと、飛行機にもライフジャケットが用意されているじゃないですか、津波の危険性が分かっている小学校に、なぜなかったのかと。そこですぐに作ったのが、この製品でした。

――なるほど、教室で椅子に敷いておけば、いざという時にライフジャケットになる。

「浮くっしょん」を試着する辰野会長(写真=直江竜也)
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 枕が付いているので、気を失っても呼吸は確保できます。体の前への浮力があるからうつ伏せ状態にはならずに、足も上がってがれきがあっても引っかかりにくい。笛も付いていて助けも呼べる。リフレクターも付いているから、夜でも光るので見つけやすく、引き上げやすい。これに名前も書けるし、血液型も書けます。これを全国の自治体、特に県庁に持っていって、こうしたものを準備してほしいということで講演をして回ったのです。そうした中で、三重県からも依頼があって講演しました。

 そうした講演会では、だいたい首長さんが最初にご挨拶をされます。公務があるからとすぐにいなくなる方も多いのですが、鈴木知事は最初から最後まで熱心に聞いてくださいました。その後しばらくして、担当の方を連れて我々の本社に来られた。その時、モンベルと自治体とが連携するというスキームのアイデアまでも、持って来られたのです。

包括連携協定を結ぶことで、被災時の素早い支援が可能に

 私は、迅速な対応にたいへん感銘を受けて、アウトドアを通じて我々がどう貢献できるのか、すぐに私なりにまとめました。ロータリークラブなどでよく使われる言葉に「ボケーショナルサービス(Vocational Service)」というものがあります。これは日本語に訳すと「職業奉仕」という言い方になるのですが、英語で「職業を通じた、社会に対するサービス」といった意味です。そうしたボケーショナルサービスという概念の中に、我々の役割・ミッションが7つあると考えました。そうして最初の三重県との包括連携協定のときから、この7つのミッションを打ち出していったというわけです。「自然環境保全意識の向上」をはじめとする7つです。

 この後すぐに長野県、鳥取県、熊本県、山形県、高知県というふうに、県の単位でそれぞれ包括連携協定を結ばせていただきました。40近い市町村とも、同じコンセプトの包括連携協定を結ばせていただいています。包括連携協定はそうオーガナイズされたものではなくて、首長さんがそういう意識をお持ちのところから、県や市町村を問わずに、どんどんつながっていくという感じです。いわゆる企業と自治体という形のつながりではありますが、これが自治体同士などの横へのつながりを持つことで今や1つのネットワークにもなりつつあります。

●モンベル 7つのミッション(資料:モンベル)
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