――基本は、首長にやる気があって、できるところからどんどんやっていくと。

(写真=直江竜也)

 そうですね。そしてお互いにオブリゲーションは特になくて、包括連携したからこうしなければならないということはありません。例えば、協定を結んでいる自治体で災害があると、我々のほうから「何かお手伝いできますか」と打診するわけです。それぞれのニーズ、要請を確認して対応していく。要請があれば、すぐに我々にできる範囲で援助を行う、そのホットラインができているということです。

 もちろん、包括連携しているからやるが、していなければやらないということでもありません。現に「平成30年7月豪雨」で被害に遭った広島・岡山、四国の地域には、1万点以上の支援物資を連携の有無を問わず配布しましたし、避難所にマットレスや寝袋なども供給したりしています。

 例えば、災害が起こった時に我々はベース、つまり本部というか基地を作るわけですが、たいてい小学校とか中学校の校庭が一番使いやすい。こういった所でベースを作る時に必ず問題になるのは、教育委員会の許可などの面倒な行政手続きなのですが、包括連携協定を結んでいることによって、スムーズに対応できるということがあります。

――連携によって、万が一の時にも素早い初動対応ができる。ただ、そのほかの自治体であっても、災害などの際には支援するのだと。

 そうです。この話は、阪神・淡路大震災まで遡るのですが、この時に我々が「アウトドア義援隊」というものをつくったわけです。テントを500張、寝袋2000個を配って回ったのですが、モンベルの力だけでは対応しきれない。そこで、アウトドア関係者全体で支援していこうということで、「アウトドア義援隊」という名前を付けたのです。普段は競合している他社、もしくはアウトドア活動をされている個人も含めて、みんなで支援した。その後、東日本大震災が起こりました。それから熊本地震などの大きな災害、小さな災害を含めて、これまで数多く対応してきました。

ビジネスと社会活動が一体化した取り組みを推進

――自治体との包括連携というのは、ビジネス的に見ると、どのような位置付けになるのでしょうか。災害対応などは、ボランティア的な意味合いが強いように思いますが。

 災害対応などは、時にそうですね。ただ、物質的なことではもちろん無償もあるのですが、例えば、テントの備蓄は有償でしていただくなど、有償・無償を含めて対応を進めています。ですから、必ずしも「ボランティア」の一言ではくくれないのですが、単にビジネスだと捉えられてもこれは違うのです。

 例えば、先ほどのライフジャケットにしても、子供用の場合は1着わずか3900円です。ほとんど利益は度外視しているからできるわけです。そうすることによって390万円で、1000人の命が守れるようになる。何兆円もかけて万里の長城みたいな防潮堤を造るのもよいけれど、まずはこういうもので即座に役立っていくことができる

 でもある意味、商品を売っているわけですから、利益があるかないかは別にしてビジネスですよね。かたやモンベルは、アウトドアのカヌーなどではライフジャケットはまさに必需品ですから、そうしたものをビジネスとして、テクノロジーも含めて開発してきた。一方で、先ほどの浮くっしょんでは、そこで培ったテクノロジーをそのまま使っている。ビジネスと社会活動でどこか線が引かれているというのではなくて、一体化している。それをもって、ボケーショナルサービス(職業を通じた、社会に対するサービス)と言っているわけです。

 もっと言えば、アウトドアという事業そのものが社会的な役割を果たしている。これはもちろんアウトドアだけではなく、例えば病院とか医療などもそうですが、ビジネスと社会活動とでどこかで線が引かれているわけではなくて有効に機能しているというわけです。