自然豊かな地域を豊かにするWin-Winの関係

――まさしく醍醐味ということですね。

 はい。例えば東京や大阪で何十億円の税金を納めても、首長さんが「ありがとう」と言ってくれることはほとんどないでしょうが、東川町とか大山町に税金を持って行くことができたら、それは本当に喜んでくれます。

 もう1つは、アウトドアを生業にしている我々からしてみると、販売している登山とかカヌーの用品を実際に使う場所は、東京でもなければ大阪でもないわけです。結局、そうした用品が使われる自然豊かな地域が元気にならなければ、我々の商売もないということも事実なのです。そうした地域が元気になることは、まさにWin-Winの関係でもあります。

 近年は、長野県に対しては企業版のふるさと納税、というのをやらせていただいています。そこで納めた税金というのは目的税として、用途がある程度限定されるわけですが、長野県の場合は、例えば八ヶ岳の登山道の整備とかトイレの整備とか、安全登山のための装備提供といったことに使っていただけるわけです。ですから我々が納める税金がそのまま、我々のユーザーである登山者、アウトドア愛好家たちにとってのフィールドの整備につながっていく、ということにもなっていくわけです。

――なるほど。まずはアウトドアを楽しむエリア、大自然が元気じゃないと、ビジネスも成り立たない。ちなみに包括連携協定を結んでいるのは今45自治体ですが、どれくらいまで増やすとか、イメージはありますか。

 それはぜんぜんないです。来るものは拒まず、です。ただし、モンベル1社で100~200の自治体を支援することはできません。横の連携なくして、我々がすべて支援するということは不可能だと思うのです。実質的に機能させていくためには、我々と志を共にしていただいている自治体などが、今度は互いに連携していく。さらに将来的に私が描いているイメージとしては、例えば都道府県ごとにいわゆる地域団体企業のようなものができて、それらが連携して、災害が起こった時のマニュアルなども共有してやっていくようになっていければよいと考えています。

――被災地支援などで、赤字になるようなことはないのでしょうか。

 それは赤字の出ない範囲でやらせていただいています。1つは、我々の会員組織となっているモンベルクラブの会員が全国に86万人いるのですが、1人当たり1500円の年会費をいただいています。そこで年間約13億円の軍資金があるわけです。ただし、これは他のプロモーションに使われているケースが多いので、そのうち1人当たり50円の原資をモンベルクラブファンドという形でプールさせていただいている。これが年間約4500万円くらいです。この金額の中で支援していくということなので、直接モンベルの収支に影響してくるということは、原則ないようにしています。

 もしモンベルの利益が出なくなったら支援できないという話にならないように、モンベルクラブの会員が、我々に支援していただいている限りにおいては、そこで預かったお金を使わせていただくという形です。年間4500万円の原資を我々に付託されているということですので、それをどういう形でどういう支援をしましたというのは、我々が発行している「OUTWARD(アウトワード)」という会報誌で、都度報告しています。

――そういうスキームなのですね。基本的に本業とは切り離されている。一方で包括連携では、地域活性化にも力を入れられています。ただ地方には過疎化に悩むところが多くて、そううまくはいかないようにも思えますが、どうなのでしょうか。

 確かに人口減少はもう歯止めが効かず、当然減っていきますから、右肩上がりの経済成長ありきの考え方では成り立っていかないというのはもう事実です。モンベルも43年やってきて、今、グループ年商830億円という規模になっています。これが1000億、2000億円に広がっていかなければならないというふうに考えると、やはり無理が出てくる。モンベルクラブの会員も現在の86万人から、やがて100万人になるでしょう。でも「どこまで増えていくの?」と言った時には、やはりどこかで頭打ちが来るはずなのです。つまり、数を頼みにして地域を語るということの弊害は、必ず出てくる。やはりこれから先は、質の向上ということになっていくのだと思うのです。

 地方では、今から20~30年前のことを振り返れば分かるのですが、昔はどんなに小さな町でも、雑貨屋さんがあったり、八百屋さんがあったり、お菓子屋さんがあったりしたわけです。それが、どんどん大型店舗が出店して、いわゆる大型複合施設というのが各地にできてきて、そういった小さな地域のお店がどんどん潰れていったわけです。

 その一方で人口減少はどんどん進んで行くので、大型店舗も不採算。採算面は大きなところほどモロに影響が出ますから、人口が減ってくれば出店を見合わせる、もしくは廃店していくということが今起こってきて、特に過疎地では「買い物難民問題」が発生しているわけです。人がいないのではなくて、お店が無くなっているのです。

(写真=直江竜也)