過疎地の「買い物難民問題」を解消へ

――今や、買い物難民は大きな社会問題になりつつあります。

 ただ、そんな中でモンベルのアウトドア用品というのは、登山やカヌーなどのアウトドア・アクティビティの道具を作って販売していることは事実ですが、そうした特定のジャンル向けの販売にとどまっているわけではありません。

 1つは、北海道などは家から一歩出たら「アウトドア」です。マイナス何十度の中で生活している中で、軽量・コンパクトで、コストパフォーマンスの高いモンベルの製品というのは、非常に受け入れられていっているわけです。また、7つのミッションの6番目に記載している農林水産業の分野。こうした分野というのは、まさにアウトドアのテクノロジーがそのまま使える。チェーンソーが当たっても身体が切れないようなズボンとか。農業ウェアにしても、特に女性、農業女子におしゃれでしかも快適なものを提供することができるわけです。こうしたものを、商店そのものがないエリアにあの渋谷とか新宿に店舗を持つブランドが来て、販売してくれる。いわゆる雑貨屋さんとか「しまむら」のないところ、「スターバックス」のないところに、モンベルが出ているわけです。

 繰り返しになりますが、これが、地域を極めて元気にしている。私どものミッションというのは、そうした地域活性化。そこにおいて採算性が確保できるということは前提ですが、我々はそこに居場所を見つけたわけです。モンベルの店舗は、そうした地域の活性化の大きな起爆剤になります。

――そうした中でモンベルは「山の駅」、いわゆる地方の「道の駅」分野にも進出しました。

 そうです。時代の流れで、小さな小売店が全部潰れてしまって、大型店が入って、大型店すら成り立たなくなる。そうすると買い物難民が発生してくる。だから今、少し地域を見渡してみたら、道の駅が結構できているでしょう。行くところがないのです、行くところがないから道の駅なのです。ですからモンベルはこの春に新たな事業として、鳥取県で「大山参道市場」を始めました。ここでは大山一円の選りすぐりの産品を取りそろえていて、モンベルの店で大根も売っています(笑)。

 この話をすると力が入ってしまうのですが、モンベルクラブ会員向けのお薦めアウトドア・アクティビティフィールドとなる「フレンドエリア」に登録しているところが、今約100カ所あります。こういったところで生産された産品を、モンベルクラブ86万人の会員に直接販売するWebサイト「モンベル・フレンドマーケット」を既に構築しています。大山参道市場は、それのリアル店舗の第1号なのです。今のニーズに合わせた、そして地元が元気になっていくような道の駅にしていきたいと考えています。

2018年5月にオープンした山の駅「大山参道市場」は、大山町が施設を整備してモンベルが一括して借り受けて運営する事業スキーム(資料:モンベル)

――今後は地域活性化などの面で包括連携協定の案件も増えそうですね。モンベルとしては、どういうものに乗る気になるのでしょうか。

 自治体が本気であるかどうかです。我々は、一切売り込みはしませんから、彼ら自身が本気でやる気があればということ。本気度ということですよね。別の言い方をしたら、本気でさえあれば、日本国中ほとんど、どんな場所でも私はいけると思っています。

――最後に、今後の目標があれば教えてください。

 はい、もうこのまま粛々と行くだけです。71歳ですからね、ほどほどに(笑)。

辰野 勇(たつの・いさむ)
モンベル代表取締役会長
辰野 勇(たつの・いさむ) 1947年大阪府堺市生まれ。69年にアイガー北壁日本人第二登を果たし、70年に日本初のクライミングスクールを開校。75年に登山用品メーカーのモンベルを設立。カヌーやカヤックの経験も深く、91年には日本で初めての身障者カヌー大会「パラマウント・チャレンジカヌー」をスタートさせるなど社会活動にも注力。2011年の東日本大震災では、阪神淡路大震災以来の「アウトドア義援隊」を組織し、アウトドアでの経験をいかした災害支援活動を自ら被災地で陣頭指揮。趣味は、登山、クライミング、カヤック、テレマークスキー、横笛演奏、絵画、陶芸、茶道。(写真=直江竜也)