2020年の夏に、青森県東通村で「コロナに負けない!」をキャッチフレーズに「村民健康チャレンジ」を開催しました。働き盛り向け、シニア向けにそれぞれ新型コロナウイルスとの長期戦を戦うための、心と体づくりのポイントを掲載したポスターを作成、全戸に配布。それを見てクイズに答えることで知識を身につけてもらうとともに、自分に合う行動目標を宣言して登録し、1カ月間実行してもらいます。

 村のいきいき健康推進課が窓口になり、実行継続した住民には、抽選で藍染めのマスクや牛肉といった村の特産品などをプレゼントしました。300人を超える登録者がありました。この取り組みはコロナ禍で実施可能であり、地域住民がこころを一つにして取り組めるという効果も期待できます。第二弾を2021年2月頃から開催し、取り組みの輪を広げる予定です。

――地域活性化につなげる狙いもあるのですか。

 青森は“短命県”なので、それを返上するために、メタボリックシンドローム解消のための生活習慣の改善や喫煙率の低下が求められています。しかし、健康が目標だけでは住民のモチベーションや主体性の向上にはなかなか繋がりません。そこで、能舞などの伝統芸能の伝承や地元産業の活性化など、住民が大切に思っていることを上位目標に設定し、住民を含め、多くの関係者が一緒になって取り組めるよう工夫しました。健康づくり事業を通して、村に活気をもたらすことができれば言うことはありません。村民健康チャレンジは地方紙にも取り上げられ、みんなで取り組む気運の醸成に一役買ったと考えています。

商工会や漁協も巻き込んだ東通村の健康づくり(提供:地域医療振興協会)
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押し売りではなく寄り添う姿勢で

――様々な地域で活動されてきた経験から、地域の健康づくりのカギは何だと考えていますか。

 自治体をはじめ、住民のやる気が肝心ですね。専門家だからと言って“押し売り”ではうまくいきません。地域の課題を共有しながら、取り組むテーマを一緒に考えて、地域に寄り添って課題解決を目指す姿勢が大切です。その際は、地域の客観的データや住民などの関係者が感じていることについて共有を図り、ニーズのすり合わせを図ることが大事です。こうした話し合いのプロセスを経ることで、一緒に取り組む機運や信頼関係が芽生えてきます。

 立ち上げの際には、首長が関与してリーダーシップを発揮することが重要です。しかし、首長の交代とともに事業が中止してしまうようでは意味がありません。ですから、私たちが行政や関係機関、協会の医療施設などで連携して取り組むように、持続可能な体制を構築できればと考えています。

――経済的な面にも気を配って活動されていますね。

 ヘルシーコンビニ・プロジェクトは、売り上げにも配慮し、そのモニタリングをしながら進めました。他の地域でも、事業実施にあたり助成金を取得したり、医療施設における医業収入の増加(健診数や患者数の増加など)を図るなど、予算が限られている中で関係者が業務として取り組みやすくなるよう配慮しています。

 当協会がヘルスプロモーション事業を始めた背景として、公益社団法人化にあたり、公益目的事業の強化がありました。それでも民間組織なので、経済的な裏付けなしには実施できません。好事例を創出して「地域医療振興協会に医療施設の運営を委託すれば、健康づくりも一緒に取り組んでもらえる」――という評価を確立すれば、当協会にとっても指定管理者選定などで有利になるメリットがあります。

 地域での健康づくり活動は、その時代や社会に必要なテーマに焦点をおいて、「エビデンスや先行事例を参考にして深掘りする」方針で取り組むことが、地域社会にとって必要なノウハウや好事例の蓄積につながります。それを協会のネットワークを通じて横展開するとともに、政策提言などを通じて社会にも広げていきたいと考えています。

中村正和(なかむら・まさかず)氏
地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター長
中村正和(なかむら・まさかず)氏 1980年自治医科大学卒業後、大阪府に就職。門真保健所保健予防課長、大阪がん循環器病予防センター予防推進部長などを経て、2015年より現職。医師、労働衛生コンサルタント。予防医学、健康教育、公衆衛生学が専門。厚生労働省循環器疾患・ 糖尿病等生活習慣病対策総合研究班の研究代表者など、健康づくりに関する公職を歴任(写真:秋元 忍)