作り手と売り手はチームメイト、互いを認め合う素直さが大切

「日本百貨店 にほんばし總本店」にて。鈴木氏はチーフバイヤーでもある(写真:日経BP総研)
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――一般的なセレクトショップとの違いはどこにありますか?

 普通のショップは、作り手が商品を10種類作っていたら、バイヤーが2、3種類程度を選び、陳列しますよね。でも私たちは10種類すべてを見せたいんです。作り手は「いいモノを協力して世に送り出す、大切なチームメイト」。仲間だからこそ、その魅力や価値をふるいにかけたくはありません。私たちがセレクトするのは、「作り手のモノ作りへの姿勢が真摯であるか否か」という部分。商品の絞り込みは私たちがしなくても、売れ行きというお客様の判断基準により、自然に行われるものです。

――そうはいっても、売れるようにするための工夫も必要ですよね。

 日本には、各地の作り手が手掛ける「いいモノ」が数多く存在します。それらがきちんと売れ、作り手にお金が回り、次のモノ作りにつながる仕組みを作りたい、という思いから始めた店が日本百貨店です。ただ「いいモノ」はそれなりの値段がする。100円ショップで何でも揃う今、お客様に選ばれるには、その値段である理由を伝え、適正価格だと納得してもらうことが必須です。

 その有効な手段の1つが、作り手自身が売り場に立ち、商品の魅力を説明する販売方法です。例えば和歌山県海南市の髙田耕造商店が作る一個2400円のたわしは、硬いパームヤシではなく、体を洗えるほど柔らかい紀州産の棕櫚が原料。そのため野菜やグラスも傷つけずに洗えます。作り手である髙田氏の説明には実にリアリティがあり、それを聞いたお客様は「いい買い物をした」と喜んで帰られる。もちろん私たち売り手も商品の魅力を全力で伝えますが、作り手が発する言葉はよりストレートに響くもの。だから日本百貨店には、商談でやってきた各地の作り手たちが、「ちょっと時間があるから」と気軽に売り場に立つんです。

――伸びる作り手には、共通点がありますか?

 1つ挙げるなら「素直さ」でしょうか。売り上げが芳しくないときも、店のせいだけにせず、「商品に改善すべき点はないか」と謙虚に探り、率直に相談してくれる。そうした作り手には、「パッケージを変えてみませんか」などと、こちらも改善策を提案しやすい。売り手も人間ですから、「一緒にいいものを育てよう」という前向きさや素直さを持つ作り手の商品をより応援したくなる。売り手を味方につければ、商品が売れやすくなるのは当然のことです。これは事業者だけでなく、自治体の方にも押さえておいてほしい話ですね。

鈴木正晴(すずき・まさはる)
日本百貨店社長
鈴木正晴(すずき・まさはる) 1975年神奈川県生まれ。伊藤忠商事でアパレル部門やマーケティング部門を担当。退社後の2006年に国内外のブランドのブランディング業務を行うコンタンを設立。2010年には東京・御徒町に地方産品を取り扱う「日本百貨店」の1号店をオープン。現在、全国で12店舗を展開。そのほか、コラボレーション店舗やサービスエリアでのコーナー展開なども進める(写真:日経BP総研)