富士・箱根・伊豆で県境のない観光地図を作成

――成果としてはどのようなものがありますか。

 例えば、富士・箱根・伊豆の観光地図を作ったのですが、この地図は伊豆半島が真ん中になって、北に富士山、西は静岡空港、東は羽田空港までちょうど入る形になっています。観光客にとっては、県境や市町の境というのは全く関係ないんですね。ですから「県境のない地図」なんです。こうしたことは、自治体だけでやろうとしても、なかなか難しいことだと思います。

――なるほど、そうしたところに地銀・地方創生部の存在意義があるわけですね。

 そして観光では、やはりインバウンド(訪日外国人客)を中心に力を入れています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックも控えていますし、日本のインバウンドは昨年2400万人ということですが、安倍内閣は、2020年までにインバウンドで4000万人と言っています。こうした新しいマーケットを、いかに早く確実に地元に取りこむかというのが、近々の課題だと思っています。

「富士・箱根・伊豆 県境のない地図」はA2版の八つ折。裏面では、富士山のビュースポット12カ所をそこから見た富士山の写真入りで日本語と英語で紹介。QRコードを付けて位置情報なども分かるようにしている(資料:静岡銀行)
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――静岡のインバウンドの現状は、どうなっているのでしょう。

 静岡でも、2015年と2016年とを比べると、宿泊した外国人の方は70万人から150万人へと2倍以上増えました。ただ問題は、平均宿泊日数が1.3日なのです。ということは、静岡空港などに着いてとりあえず1泊して、その後京都や東京に行ってしまうということ。本当に静岡に観光目的で滞留してもらうというのはまだまだ少ないです。

 ただ、そこに伸びる余地はあると思っていまして、まず横浜銀行との連携の中で始めたのが、「インセンティブツアー」です。横浜銀行の取引先も弊行の取引先も、東南アジアを中心に工場進出していて、現地に従業員が1000人以上いたりします。そこでは、例えば3年間辞めないで勤めたら、1週間ぐらい日本の本社を見学するといったご褒美のツアーを実施されている。こうした取引先に、本社を見た後に伊豆・箱根に1泊してもらうという話を持ちかけて、すでに数社にやっていただきました。このほかにも、JTBさんと静岡県と静岡銀行で提携して、平均1.3泊の外国人観光客に少しでも多く滞在してもらうためのツアーの提供をお願いしています。

 インバウンド向けということでは、商店街の方々や、旅館のおかみさんを集めて「インバウンドセミナー」も開催しています。弊行も数年前から地元の大学を卒業した外国人の採用をしていて、中国の女性も地方創生部に1人います。彼女に中国人を迎える時のおもてなしの仕方や、注意事項を紹介するセミナーを、あちこちでやってもらっています。

2017年3月に開催した「インバウンド対策セミナーin箱根」(資料:静岡銀行)
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――観光客を呼び込むための、海外への情報発信も必要になってきますよね。

 2017年の2月には、経済産業省と組んで「海外メディア伊豆ツアー」を実施しました。これは在日の海外メディアや大使館員を対象に、20数人に伊豆を一泊で観光してもらったものです。ツアーには外国人のユーチューバーやブロガーの方々も来られたのですが、彼ら彼女らは、もうその場で写真を撮って一言コメントを入れて、バンバン海外に発信していきます。フォロワーが大勢いるインフルエンサー、海外のユーチューバーやブロガーの発信力にはすごいものがあります。

 その行く先々で、地元の観光協会の方などにも来てもらったのですが、いい刺激になりました。お金をかけて立派なパンフレットを作るというアプローチもありますが、もっと手軽で効果がある発信の仕方というのが、ちょっと分かったのではないかと思います。

 また、このツアーの参加者アンケートでは、一番感動したのは、伊豆天城のわさび田でわさびを自分で抜いて、それをすし屋に持ち込んで自分ですって、そのわさびを使ったおすしを食べたこと、というものがありました。また、中国やタイの方はイチゴが好きなのですが、イチゴ農園でイチゴ狩りをやると、実ったイチゴを自分の手でもいでそのまま口に入れるというのが彼らには考えられないことなんだそうです。現地ではどんな農薬が使われているかわからないといった事情もありますし、そうした体験型のコンテンツが良いというヒントも得られました。こうした体験型を考えていけば、増えている個人客にも、もっとアピールできるのではないかと思っています。

2017年2月に開催した「海外メディア伊豆ツアー」(資料:静岡銀行)
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