PayPayやLINE Payといったキャッシュレス決済が全国的に普及するなか、地域に特化した電子通貨によるキャッシュレス推進も進み始めた。その動きをリードしているのが、高山市、飛騨市、白川村のみで利用できる電子地域通貨「さるぼぼコイン」だ。飛騨信用組合が中心となって、高山市、飛騨市と連携しながら、地域経済活性化に挑んでいる。どのように経済活性化を実現しようとしているのか、自治体が担う役割や普及における課題、次のステップとなる取り組みなどを明らかにする。

「電子地域通貨さるぼぼコインを活用した連携に関する覚書」の締結発表会の様子。左は飛騨信用組合の理事長 黒木正人氏、右は高山市長の國島芳明氏(写真:高山市)
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さるぼぼコインは、岐阜県高山市、飛騨市、白川町の3自治体のみで流通させている電子地域通貨だ
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 「さるぼぼコインのさらなる活用に向けて連携を進めていく」。2019年7月12日、岐阜県高山市の市長である國島芳明氏は、飛騨信用組合と「電子地域通貨さるぼぼコインを活用した連携に関する覚書」の締結式で、こう意気込みを表明した。

 さるぼぼコインとは、飛騨信用組合が発行する電子地域通貨である。2017年12月から本格運用を開始した。飛騨高山地域の経済活性化を目的にしたもので、利用できる店舗数を増やすために、店舗側には固有のQRコードを表示した紙を置くだけで利用できる方式を採用している。顧客側は、QRコードをさるぼぼコイン用のスマートフォンアプリで読み取って、商品などの金額を入力して決済する。2019年12月時点で、加盟店舗数は約1200、さるぼぼコインアプリの利用者は約1万人となっている。

 冒頭で紹介した高山市の動きは、金融機関と自治体がタッグを組んで、地域経済の活性化を推進するためのものだ。

 この発表の5日後には、飛騨市と飛騨信用組合の間で「災害時等におけるさるぼぼコインアプリを利用した情報配信に関する協定書」を締結、行政における電子地域通貨の活用をさらに一歩推し進めた。飛騨市役所総務部税務課長の花岡知己氏は、さるぼぼコインについて「地域で経済を回して活性化することに共感した」と語る。

高山市では各種窓口手数料の取り扱いを19年4月から本格始動

 高山市と飛騨市はそれぞれ施策を進めていくが、当面の動きはほぼ同様の内容になっている。

 飛騨市では先行して、2018年10月から電子決済モデル事業として、市民保健課や税務課で取り扱う各種窓口手数料を、さるぼぼコインで支払えるようにした。さるぼぼコインのアプリを使い、住民票の写し、印鑑証明、納税証明書などの手数料を、各課の窓口に置くQRコードを読み取って支払う。

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左は飛騨市役所の窓口に置かれている、さるぼぼコイン用のQRコード。右は高山市役所の市民課の窓口に置かれている、さるぼぼコイン用のQRコードで支払いをしているところ(写真:2点とも日経BP総研)

 自治体としてはQRコードを窓口に置くだけであるため、導入のハードルは比較的低い。「初期投資が不要だから、すぐスタートできた。窓口担当者も習得するために特に時間はかからない。作業も窓口でスマホに入力した金額を確認するだけで済む」(飛騨市の花岡氏)という。

 さるぼぼコインを利用する手数料は、モデル事業ということもあり実施時は無償だったが、飛騨市では2019年4月から手数料1.5%を飛騨信用組合に支払い、本格的にキャッシュレス決済サービスを開始している。

 高山市では窓口手数料の決済に対して2019年7月から実証実験を進めており、2020年4月から本格スタートする予定だ。

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左はさるぼぼコインのアプリの画面。上は納付書からの支払い画面(資料提供:2点とも飛騨信用組合)
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 飛騨市役所では、窓口手数料と同時に、市税などの納付書から直接、さるぼぼコインでスマホ決済できる仕組みを検討した。この仕組みは、納付書に印刷されている既存のバーコードを読み取るため、さるぼぼコイン側のアプリを対応させる必要があり、開始は2019年4月からとなった。この時点で、市県民税(普通徴収)、固定資産税、軽自動車税、国民健康保険料、水道料金、下水道の使用料など(ただし1件30万円以下まで)を、納付書のバーコードを読み取って自宅で支払えるようにした。これは、納付書のコンビニエンスストアでの支払いシステムを構築・運用する収納代行会社と、飛騨信用組合との契約になっている。

 高山市は、納付書から直接支払えるサービスを2019年7月から開始。コンビニエンス支払いの対応が異なるため上下水道利用料は未対応であることなど、飛騨市とは細かな違いがある。

 飛騨市ではサービスをさらに一歩進め、2019年8月1日から、さるぼぼコインのアプリで防災情報を市民に配信できるようにしている。避難勧告など災害情報、通行止めなど交通情報、クマの出没情報を提供する。GPSを使った位置情報を用い、必要なエリアに住む人だけに情報配信できる。高山市も防災情報からテスト的に始めているところだ。