一般的なキャッシュレス決済にはないサービスを開発中

 飛騨信用組合では今、以下の3つのフェーズに分けて、さるぼぼコインの普及推進を考えている。

(1)地域内でさるぼぼコインを普及させる
(2)国内からの観光客に普及させる
(3)海外からの観光客に普及させる

 現在は(1)の段階だが、観光客が落としていくお金を地域内にとどめることを想定すれば、(2)と(3)にも取り組まなければならない。そのときの課題としては、チャージのしやすさの向上が挙げられる。一般的なQRコード決済のサービスでは、クレジットカードからチャージできるが、さるぼぼコインではこれができない。クレジットカードを使えるようにするには、クレジットカードの加盟店になる必要があり、クレジットカード会社に対して手数料の支払いが必要になるからだ。

飛騨高山ジャズフェスティバル2019に設置したチャージ機(写真提供:飛騨信用組合)
飛騨高山ジャズフェスティバル2019に設置したチャージ機(写真提供:飛騨信用組合)
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 クレジットカード加盟店を地元で劇的にふやすのがコスト面で難しいとなると、利便性の高い駅前や市役所にチャージ機を設置するなどの対策を講じ、利用しやすくする必要があるだろう。例えば、昨年実施した「飛騨高山ジャズフェスティバル2019」では、飲食店全店でさるぼぼコインを利用可能にし、チャージ機を設置した。

 観光客を取り込むには、一般的なキャッシュレス決済にはないサービスも必要だ。静的QRコードは、金額を入力する分、利用者にとってはひと手間かかるし、さるぼぼコインは一般的なQRコード決済よりもキャッシュバックなどサービス面で劣る。「飛騨牛の希少部位を使ったコース料理」のような、独自のサービスを企画する必要がある。これに対して現在、地元の事業者から各種アイデアを募っているところだ。まだ公表はしていないが、「現金よりも電子通貨だと、なぜか突き抜けたアイデアがでてくる」(古里氏)と、新サービス実現への手ごたえは十分だ。

 生活に密着させるためにサービスを肉付けしていくならば、行政との協力が欠かせない。ただ、それ以外に、決済以外のサービスを載せていく必要がある。飛騨信用組合では、決済だけにとどまらないサービスを企画当初から想定し、さるぼぼコインの開発会社を選択した。今後、行政関連だけでなく、様々なサービスをさるぼぼコインのアプリで実装していく予定だ。

 「普及が進むと、また新たな景色が見えてくる」(古里氏)。新しい取り組みは、やってみて初めて分かることが多い。飛騨信用組合と、高山市および飛騨市の取り組みは、大きな岩がころがり始めたところ。まずは、さるほぼコインを市民の生活に密着させ、さらにその次のステップに進められるか――。2020年はチャレンジの年になりそうだ。

訂正履歴
記事中、飛騨信用組合常勤理事総務部長の古里氏の名前が佳史となっていましたが、正しくは圭史でした。お詫び申し上げます。記事は修正済みです。 [2020/1/23 18:40]