“ふじのくに”フロンティア推進区域の一角、農振除外スムーズに

 KADODE OOIGAWAの開発背景を振り返る。KADODE OOIGAWAを整備した辺り一帯は、従前は農業振興地域、農用地だった。2012年4月に、新東名高速道路(御殿場JCT~三ヶ日JCT間)が開通し、同時に島田金谷ICも供用を開始した。インターチェンジの周辺開発は、この新東名が都市計画決定した1991年に気運が生じていたものの、当時は農業が堅調であったため、農地をつぶして街づくりをすることに理解が得られなかったという。実際に、合併前の金谷町が区画整理事業を検討しながら実現しなかった経緯がある。

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大井川鐵道で営業運転していたC11形蒸気機関車312号機を同社が復元し、KADODE OOIGAWAが買い取ってレストラン棟前に展示している(左写真)。右写真手前は、島田市のシティプロモーション「緑茶化計画」により、緑色に塗装された郵便ポスト。奥に見える「門出」駅看板は、駅名に赤い水引のイラストをあしらっている(写真:赤坂 麻実)

 しかし新東名の開通が近づくにつれ、緑茶の出荷量が減少し、農家では高齢化や後継者不足などの課題を抱えるようになり、農地の転用に対する地元の抵抗感が小さくなった。また、2011年の東日本大震災を受けて、静岡県では知事自ら音頭を取って「内陸フロンティア」政策を進めた(現在は「“ふじのくに”フロンティア」と呼ぶ)。防災・減災と地域成長の両立を目指した支援事業で、対象区域(ふじのくにフロンティア推進区域)に指定されると、その区域の民間事業者に対して県からも優遇措置がある。例えば、対象区域に企業が立地する際(用地取得、造成から建設、設備導入までを行う場合)に、指定金融機関から融資を受けると、5年間、最大0.7%の利子補給が受けられるといったものだ。

 島田市も支援事業に申請し、2014年5月に島田金谷IC周辺が「ふじのくにフロンティア推進区域」の指定を受けた。2016年の区域変更(拡張)を経て、現在、指定を受けているのは約84ヘクタールだ。区域全体で農振除外の手続きを行い、工業用地や住宅地の造成を進めている。

島田金谷インターチェンジ周辺地区の開発構想。静岡県の「ふじのくにのフロンティアを拓く取組」の各推進区域における事業は企業・工場と住宅の立地が中心であり、商業施設整備はKADODE OOIGAWAが初めての例だ(資料:島田市)
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 島田市は2015年3月、新東名島田金谷IC周辺まちづくり構想を策定。推進区域の西部では、6次産業化に関わる企業、施設の誘致を進め、北東部に住宅の立地を誘導し、南東部ににぎわい交流拠点や物流拠点を整備する方針を固めた。にぎわい交流拠点(KADODE OOIGAWA)には、誘客の役割に加えて、職住近接の環境における利便施設としても機能することが求められた。

 島田市、JA大井川、大井川鐵道、NEXCO中日本の4者は同年7月に「賑わい交流拠点プロジェクト会議」を設立。11月までにワークショップを3回開催して施設のコンセプトなどを話し合い、11月末に「島田金谷インターチェンジ周辺賑わい交流拠点整備基本計画」を策定した。2018年6月に4者で包括連携協定を締結。2019年10月から2020年9月に建設工事を行い、2020年11月の開業に至った。

島田市(しまだし)
静岡県のほぼ中央に位置する。人口9万7748人(2020年12月末現在)、面積315.70km2。北には南アルプスへ続く山々が連なり、南西には牧之原台地が広がる。市の主要産物はお茶。
訂正履歴
初出時、3ページ目写真キャプションに「NEXCO中日本が管理運営する国道473号」とありましたが、管理運営をしているのは静岡県でした。お詫びいたします。記事は修正済みです。 [2021/2/12 17:20]