FMラジオでPFI住宅をアピール

 建設にあたっては、BTO方式によるPFI手法を採用した。公募型プロポーサルにより選ばれた企業グループがSPCを組成し、自ら資金調達してマンションを建設する。その際、企業グループの代表は、地元企業とすることを応募の条件とした。完成後は所有権を町へと移し、SPCが30年間にわたって維持管理や運営を手がける。
 
 一方の町側は、入居者から家賃収入を得て、そこから建築費や維持管理・運営費を事業者に払う。余剰分は町の収益になる。万一入居率が大きく低下し、家賃収入が減っても、それに連動して維持管理・運営費が減額されるため、土地の取得費を除けば基本的に一般財源からの持ち出しはゼロですむ。

「当町では、46年間にわたって増え続けた借金を、現在は5年連続で減少させている。このような厳しい財政状況のもとでも、PFIを上手く活用すれば、継続的に住宅を建設することができる」と橋本正裕町長はそのメリットを指摘する。

 民間が持つ様々なノウハウを活用できることも、PFIの大きなメリットだ。境町のPFI住宅では、入居者募集にあたって、埼玉県ほか関東圏に配信するFM放送「FM NACK FIVE」(エフエムナックファイブ)でPRを行った。「町の住宅をラジオでPRするという発想は、行政内部からはなかなか出てこない。町の人にも『何かすごいことをやっているな』という印象を持っていただけた」(橋本町長)。

境町PFI住宅のスキーム図(さくら館)
(編集部で作成)

20年間住み続ければ無償で戸建て住宅を譲渡

 2019年からは、移住・定住者向けの戸建住宅整備事業もスタートした。こちらはPFI方式ではなく町の単独事業で、公募により選定した事業者による設計・施工一括(DB)方式を採用した。町に寄付された空き家を新築の戸建住宅に建て替え、町外から移住する子育て世帯に、相場より低い家賃で賃貸する。さらに20年間住み続ければ、無償で譲渡するという特典も設け、入居者の定住促進を狙った。

 第1期(1棟)は、木造2階建て、3LDK+ロフト、駐車場1台付きで、家賃5万円。2020年春に入居を開始する。建設中の第2期(2棟)は4LDK、駐車場2台付きで、家賃5万2000円。こちらもすでに募集を締め切った。

 事業者はプロポーザル方式で公募し、1期・2期ともに飯田ホールディングスグループのアーネストワン(本社:西東京市)が選ばれた。1棟あたりの総工費は1期が1200万円、2期が1300万円。この金額なら20年間の家賃収入だけで、町は事業費用をほぼ回収できる見込みだ。