2020年3月、大分県日田市のJR日田駅に、カフェとゲストハウス、コワーキングスペースを組み合わせた「STAY+CAFE ENTO(エント)」が開業した。日田市が駅舎2階をJR九州から借り上げ、公募型プロポーザルで選んだ民間事業者ENTOに転貸。ENTOは駅前広場の活性化にも取り組む。コロナ禍でなかなか計画通りの営業ができない中、開業4カ月間で延べ3000人の集客を記録した。
空き家状態の駅舎2階と駅前広場の改修活用を目指す
JR日田駅は、九州北部を横断して福岡・久留米と大分を結ぶ、久大本線の中間駅に当たる。開業は1934年。現在の鉄筋コンクリート造2階建て駅舎は1972年に建て替えたものだ。2015年にはJR九州の周遊型寝台列車「ななつ星 in 九州」などを手掛けた水戸岡鋭治氏のデザインでリニューアルしている。ただ、駅舎の2階では、当初日田の土産物販売などを行っていたが、使われなくなって30年ほど経過していた。日田市企画振興部地方創生推進課創生推進係主幹の佐藤健二氏は「駅舎は日田市の要望で2階建てにしてもらったと聞いている」という。空いたままのスペースの活用は、市にとって長年の課題だった。
人口約6万4000人の日田市では、住民の主な足は自家用車で、駅周辺の人通りは必ずしも多くない。日田駅の1日当たりの乗車人員は、コロナ禍前の2019年度でも651人だ。一方で、日田駅は市の観光拠点である国の重要伝統的建造物群保存地区・豆田町と、三隈川沿いに旅館が立ち並ぶ日田温泉との中間に位置する。毎年7月に開催される日田祗園祭では、駅前広場のタクシー駐車場が山鉾の顔見世に使われるなど、貴重な屋外イベントの場としても機能していた。
日田駅前広場は市が1984年に整備したもので、「噴水や時計塔などがあったが、老朽化が課題になっていた」と佐藤氏は振り返る。大きな噴水池が広場の中央を占めていたため、イベント開催には適さず、また、その周りに設置したベンチはあまり利用されていなかった。JR九州による駅舎リニューアルの翌年、市は駅前広場もリニューアルすべく地元関係者と検討を始め、2016年11月に改修の基本計画をまとめた。その中で、デザインコンセプトの一つに「まちのにぎわいづくり」を掲げている。駅舎から直接出られる位置に、イベントなどに使える自由広場を設けることとした。市は総事業費約5億1000万円をかけてリニューアル、2019年4月に完成を見た。