公民連携実現のため、市が人材育成講座を開催

NINAU代表理事で、駅舎と広場活用を受託したENTO代表取締役の岡野涼子氏(写真:萩原詩子)
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岡野氏が市内で運営する「しごとcafe FLAG」(写真:萩原詩子)
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 駅前広場の改修計画が進む2017年度、日田市地方創生推進課は「公民連携によるまちづくり」実現のため「ひたReデザインプログラム」を立ち上げる。民間と市職員、双方の人材育成が目的だ。「リノベーションまちづくり」の提唱者である清水義次氏を招聘して講演会を開催。次いで、岩手県紫波町のPPP事業、オガールプロジェクトを主導した岡崎正信氏らを講師として、民間・市職員それぞれが受講する年4回の講座を行い、さらに民間と市のそれぞれの受講者がユニットを組む「官民集合研修」を実施した。

 官民集合研修は、日田駅周辺にある実際の3つの遊休不動産を題材に、その活用策を練るというものだった。取り上げた物件は、駅前商店街の空き店舗と、その近くにある元旅館、もう一つが駅前広場と駅舎の2階だ。うち、元旅館については、講座参加者によって実際にリノベーションが行われ、2018年5月にオフィス兼貸しスペース「日田駅前みんなの居処 WAKATAKE」としてオープンしている。

 もう一つの空き店舗はその後、日田で若者のキャリア支援などを行う一般社団法人NINAUが借り、オフィスと中学生・高校生のためのフリースペース「しごとcafe FLAG」にリノベーションした。このNINAU代表理事の岡野涼子氏こそ、日田駅前広場と駅舎2階の活用に手を挙げ、そのための株式会社、ENTOを立ち上げた「民間事業者」だ。

駅前広場完成を前に、広場と駅舎の活用事業者を公募

 「ひたReデザインプログラム」実施翌年の2019年4月、駅前広場リニューアル工事の完成を目前に、日田市は官民集合研修の提案を踏まえて、駅前広場と駅舎2階活用事業の公募型プロポーザルに乗り出す。募集の内容は「年間を通して広場の一部を使用して行う事業」「年に複数回、広場の全面を使用して実施するイベント」、そして「駅舎2階を活用した簡易宿泊所機能を持つ事業」の企画提案だ。

 広場でのイベント開催には条例に基づいた使用料を徴収し、駅舎2階は日田市がJR九州から借りて事業者に転貸する。市と事業者は2024年3月末までの定期建物転貸借契約を締結。家賃は事業者から日田市、日田市からJR九州に同額を支払い、金額は公租公課相当の年間31万6800円(税込み、事業運営時)。駅舎の改修にあたっては、日田市が電気設備と給排水の引き込み工事を実施するが、施設内の配管・配線・改修は事業者が自ら負担するという条件だ。

 公募説明会と現地見学には複数の事業者が参加したというが、実際にプレゼンテーションまで進んだのは前出の岡野涼子氏のチームだけだった。岡野氏は新会社の設立を前提に事業提案を行った。

 岡野氏の提案は、宿泊機能に加え、泊まらない人も使えるカフェとコワーキング機能を設け、多様な人が集まる公共空間にするというもの。日田杉や小鹿田焼などの地元産品を使用し、販売も行う「日田のショールーム」を掲げた。「駅をまちの“フロント”と捉え、まち全体を宿に見立てる“アルベルゴ・ディフーゾ(分散した宿)”の考え方を提案した」と岡野氏。運営会社の名称「ENTO」は、日田出身で日銀総裁を務めた井上準之助の座右の銘「遠図(遠大なはかりごとの意)」が由来というが、まちの「エントランス」のエントでもあるそうだ。

駅舎2階で運営する「STAY+CAFE ENTO」のカフェ部分。配管のため、一部の床を上げている。テーブルには日田杉、ペンダント照明のシェードには小鹿田焼を用いた(写真:萩原詩子)
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「STAY+CAFE ENTO」2階ホール。奥がゲストハウス(ラウンジはコワーキングスペースとしても活用)、右手がカフェの入り口。正面のガラスブロック壁はじめ、間仕切りは改修前のままだ(写真:萩原詩子)
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 「学生時代からまちづくりに関心があった」と語る岡野氏は、日田生まれ日田育ち。東京の大学に進学、卒業後は大分のテレビ局でリポーターを務め、その後キャリアコンサルタントに転身した。「まちづくりはまず、人を育てることから」と考えたことによるという。2017年11月に前述の一般社団法人NINAUを設立。それ以前から3年間、日田市との協働事業で高校生と地元企業とのマッチングに努めてきた実績がある。