コロナ禍が直撃する中、想定外だった地元高齢者も利用

 2020年3月7日、ENTOは日田市、JR九州と合同で記者会見を開催、20日に「STAY+CAFE ENTO」をオープンした。しかしオープン直後の4月9日には新型コロナウイルス感染拡大防止のため政府が緊急事態宣言を発出、カフェも宿泊も早々に休業を余儀なくされた。

 宣言解除後の6月5日、「STAY+CAFE ENTO」はカフェの営業時間をランチタイムに限定して営業を再開。しかし、市外から多くの観光客が集まる大きな祭りは、次々と中止になった。「事業計画で見込んだ集客は得られず、カフェも夜営業は諦めた。イベントも予定通りには行えず、想定した事業の3割ぐらいしか実現できていない」と岡野氏は言う。

 一方で、開業4カ月後に市と振り返りを行ったところ、コロナ禍の最中でも、延べ3000人以上の集客実績があった。前出の日田市・佐藤氏は「大勢の人を集めるのが難しい情勢のなか、臨機応変な対応でお客さんを呼び込んでいて、民間ならではの柔軟性に感心している」と評価する。

 「遊休物件を活用することによる地域への波及効果については、冷静に検証できたと思う」と岡野氏。開業前、カフェや宿泊の主な利用者には、近傍の大都市である福岡市の20~30歳代の女性を想定していたが、実際には地元の高齢者がよく来てくれたそうだ。7月に市内で豪雨災害が発生したこともあり、宿泊には「地元割」も実施。気分転換のための“一時避難”として利用した客もいた。こうした分析は今後の集客に役立ちそうだ。

空き店舗やイベント開催など「新たな担い手」も

 駅舎2階の開業によって、市が「ひたReデザインプログラム」で取り上げた3つの遊休物件はすべて活用されたことになる。さらに、他の空き店舗でも活用の動きがあるようだ。岡野氏によると、地元の商店会が「しごとcafe FLAG」隣の空き店舗を改修し、21年3月にも若者たちの活動拠点として開業するという。

2020年3月20日の「STAY+CAFE ENTO」開業に合わせて開催した駅カフェイベントの様子(写真提供:ENTO)
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 19年から駅前広場で開催してきたイベントも、波及効果が見え始めた。「駅前広場をこんなふうに使っていいんだ、と知った人が手を挙げて、ENTOの主催行事以外にも様々な自主イベントが開かれるようになった。ENTOに相談が持ち込まれることも多いので、手続きなど、できる限りのサポートを行っている」(岡野氏)。21年も3月以降、多数のイベントが予定されている。高校生による企画もあるそうだ。

 「STAY+CAFE ENTO」開業にあたって、ENTOは20〜30歳代の若者を延べ7人雇用した。日田市には大学がなく、進学のために若者の一時的な流出は避けられない。岡野氏は「日田は好きだけれど日田では働けない、と言う高校生に、帰ってくる場所、楽しめる場所を用意して、自ら望めばやりたいことができると伝えたい。ゆくゆくは、日田の生産年齢人口の増加を数字で示すのが目標だ」と意気込みを語った。

日田市(ひたし)
大分県の北西部に位置し、福岡県、熊本県と県境を接する。人口6万3933人(2021年1月31日時点)、面積666.03km2。古くは天領として栄えた。基幹産業は林業、木工業。人気マンガ「進撃の巨人」の作者、諫山創氏の出身地としても知られる