埼玉県深谷市は2018年12月26日、旧中瀬小学校体育館の敷地約1500m2について、マイナスの予定価格(-1340万6000円)で入札を執行しことで話題となった。入札には2者の参加があり、市内に住む個人が-795万円で落札した。マイナス価格での落札は全国初という。取り組みの経緯や制度設計について、市の担当者に話を聞いた。

 深谷市で“マイナス入札”が行われた市立中瀬小学校の体育館跡地は、1984年に小学校が廃校になった後も地域の体育施設として活用されていたが、老朽化のため2010年に閉鎖された土地だ。市は2015年と2017年の2回、体育館の活用を条件とした一般競争入札(予定価格:約1780万円)を実施したが、応札がなく不調に終わった。

マイナス入札による売却対象となった旧中瀬小学校体育館(写真:深谷市)
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旧体育館は鉄骨造の平屋建て。竣工は1979年で老朽化が進んでいた(写真:深谷市)
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 そこで、市は建物を解体する方向での売却に切り替えて検討を始めた。市が建物を解体し、更地になった土地を入札にかけることも考えられたが、解体を民間に任せる解体条件付入札の道を模索した。市で建物を解体したものの、土地の買い手がつかなかった場合には、市がさらに維持管理費を支払い続けていくことになる。そうした事態を回避するためだ。

土地の評価額を解体費用が上回り、“マイナス入札”模索へ

 解体条件付の土地売却は深谷市でも先例がある。2015年、深谷駅前の市役所第2庁舎跡地の売却に際して、市は公募型プロポーザル方式で売却先を選び、解体条件付契約を結んだ。選ばれたのは、「ガリガリ君」で知られるアイスクリーム製造・販売の赤城乳業だった。

 ところが旧中瀬小体育館に関しては、土地の評価額から建物の解体費用を差し引いて、解体条件付入札の予定価格を算出したところ、金額はマイナスになった。つまり、土地の評価額を解体撤去費用が上回ってしまったのである。

駅から離れた立地ということもあり、土地の更地評価額を建物解体撤去費が上回った(資料:深谷市)
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 そこで市は、マイナスの予定価格で解体条件付入札を行えるかどうかの検討に入った。予定価格がマイナスになっても、解体条件付入札にこだわった理由について、企画財政部公共施設改革推進室の菅原孝一室長は次のように説明する。

 「解体条件付入札は市にとって大きく二つの利点があった。一つは、土地の譲渡と建物の解体をセットにした契約により、解体後に土地が活用される確度が高まり、市として将来の税収や地域の活性化が見込めること。もう一つは、民間のノウハウを用いて開発と一体的に解体を進めることにより、市が直接解体を手がける場合よりも時間とコストを圧縮できることだ」