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カーポート型太陽光で「第三者保有モデル」、地銀系が資金提供

ファブスコ、阿蘇市の避難所施設で稼働、月200台設置を目標

藤堂安人=日経BP総研 クリーンテック研究所【2018.3.9】

「メガソーラービジネス」2018年2月9日付の記事より

地銀系ノンバンクが資金を提供

 ファブスコは、避難所を運営する自治体など向けにカーポート型の太陽光発電システムを設置する事業を展開する。電気利用者にとって初期負担のない「第三者保有モデル」を採用し、2017年11月にスタートさせた。

 2018年2月には第1号案件として、熊本県阿蘇市が保有する道の駅や公民館など4施設に設置が完了し、一部施設から順次、系統連系がスタートした。

 同事業は、オムロン、NTTスマイルエナジーと提携して事業化したもので、自治体にとっては初期投資なしにカーポート型太陽電池システムを設置して自家消費でき、災害など非常時には自立運転モードに切り替えて、携帯電話の充電などに活用できる。

 金融機関やリース会社が資金を提供して設備の保有者となり、自治体は事業者とPPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)を結んで電力供給を受けることから、「ソーラーPPA」事業と呼んでいる(図1)。

図1●「ソーラーPPA」の提供イメージ
(出所:ファブスコ)
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 今回の阿蘇市の案件では、ファブスコの子会社のイー・ファシリティが事業者となり、いよぎんリースが資金を提供。イー・ファシリティがいよぎんリースにリース料を支払う。阿蘇市はイー・ファシリティとPPAおよび災害時に太陽光からの電力を無償提供する防災協定を結ぶ。PPA料金は28円/kWhで、九州電力の低圧料金よりも若干高く設定している。

 設置した太陽光発電システムの発電電力は、施設で自家消費すると共に、余剰分は、本来住宅向けの余剰電力買取制度により売電される。また、九州電力との電力小売り契約はこれまで通り結び、夜間や雨天など太陽光発電システムが発電しない時間帯には九州電力の商用系統網から供給を受ける。

PPA事業者としてIRR4%を確保

 余剰電力買取制度による売電分はイー・ファシリティが受け取る。イーファシリティは、同制度とPPAからの収益により、IRR(内部収益率)で「4%程度を確保できる見込み」(イー・ファシリティ社長・ファブスコ専務の田島彰洋氏)という。余剰買取制度による固定価格での買い取りが終了する10年後には、太陽光発電システムは自治体に無償供与される。

 阿蘇市が保有する「道の駅 阿蘇」(図2)と特売所(図3)には8.1kWの太陽光パネルと4台収納できるカーポートが設置された。また、2つの公民館には、8.1kWの同セットが2つ連結され、各々合計16.2kWの太陽光パネルと8台駐車できるカーポートが建設された(図4)。合計設置量は、48.6kWになる。

図2●道の駅 阿蘇に設置されたカーポート型太陽光発電システム
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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図3●特売所に設置されたカーポート型太陽光発電システム
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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図4●公民館に設置されたカーポート型太陽光発電システム
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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 太陽光パネルは、ドイツLuxor Solar製の多結晶シリコン型で、270W/枚のパネルを30枚使って合計8.1kWとしている。パワーコンディショナー(PCS)については、「道の駅 阿蘇」には太陽光パネルごとに設置するイスラエルSolar Edge製を採用し、他の施設はすべてオムロン製を採用している。

単相で初の「パワーオプティマイザー」採用

 Solar EdgeのPCSは、2つのパネルごとにMPPT(最大電力点追従制御)の機能を持つDC/DC変換機「パワーオプティマイザー」(図5)を設置し、そこからの直流電流をDC/ACに特化した4.4kWのPCS(図6)で交流に変換して単相で施設に供給する。

図5●パネルごとに設置されたパワーオプティマイザー
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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図6●DC/ACに特化した4.4kWのPCS。写真左
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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「道の駅 阿蘇」のケースでは近くに建物があって陰ができるため、パネルごとにMPPTを行う機能が効果を発揮し、発電量を最大化できる利点がある。同製品は産業用途などの大型施設では実績があるが、「単相タイプの採用は日本で初めて」(田島氏)という。

 同「道の駅」は観光地に位置し、キャンピングカー利用者も多いために電源を供給しており(図7)、そこに太陽光からの電力を供給する。非常時には自立運転モードとなり、100Vのコンセント(図8)に1500Wまでの電力が供給され、携帯電話の充電や調理器具に活用できる。

図7●道の駅に設けられたキャンピングカー向け電源コンセント
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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図8●非常時に自立運転により太陽光からの電力が供給される100Vコンセント
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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震度7にも耐えるカーポート構造

 道の駅以外の公民館と特売所については特に陰にならないために、オムロン製の定格出力4.4kWのPCSを採用した(図9)。

図9●オムロン製PCS。写真左
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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 太陽光の発電電力のうち、施設が消費した分を計測するためにスマートメーターを設置している(図10)。また、発電量を監視して、必要に応じて出力制御を行う遠隔監視システムと3G回線による通信ルーターが設置されている。これらを実現するシステムとしては、NTTスマイルエナジーが提供するサービスプラットフォーム「エコめがね」を使っている。

図10●通信・制御関連設備が入ったボックス。右下がスマートメーター、左上が遠隔監視システム、その右が通信ルーター、他はブレーカー
(撮影:日経BP総研 クリーンテック研究所)
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 出力制御について、九州電力管内では、今春にも実施される可能性があるが、まずは10kW以上の太陽光が対象になるため、10kW未満の余剰売電案件が対象になるのは、もっと先になると見られる。ただ、将来的に抑制の可能性があり、その際には通信機能を使って九州電力の出力制御用カレンダーにアクセスして制御することになる。

 カーポートについては、震度7相当の水平深度1.0hに耐える構造にしており、鉄骨製で堅牢な作りにしている。国土交通省認定の耐防火性も備えている。

 今後ファブスコは、阿蘇市の事例をモデルケースとして、防災用電源に対するニーズが高い自治体などを中心に拡販していく考えだ。現在、熊本市や福岡県で商談が進んでいるという。

月間200基が目標、将来は再エネでEV充電

 同社は、電気自動車(EV)用の急速充電器を自治体など向けに提供して運用・管理するビジネスを全国に展開しており、2017年末時点で約220基の実績があるという。

こうした自治体の販売チャネルを活用すると共に、金融機関の協力を取り付け、「今後、全国展開して200基/月のペースで設置していきたい」と、ファブスコの江藤邦彦社長は語る。現状では与信が着きやすい自治体向けが中心だが、今後は商業施設や家庭にまで拡大させたいとする。

 「究極的には再エネで電気自動車を充電するスキームが目標」(江藤氏)であり、急速充電器と太陽光発電システムを組み合わせた事業も検討したいという。

 太陽光発電システムの「第三者保有モデル」は、米国で成長したビジネスモデルである。米国の場合、Tesla(旧SolarCity)やVivint Solar、Sunrunといった太陽光発電システムの設置業者が資金を調達して設備を自ら保有する。日本でも日本エコシステムやデンカシンキが、この事業モデルで資金を調達して太陽光発電を設置し、PPAにより顧客に電力を販売する事業を展開し始めた。

 これに対し、今回スタートしたスキームは、金融機関が実質的な所有者となって資金調達するタイプであり、日本初の試みだという。ファブスコにとっては、「オフバランス(会計上資産・負債とみなされず、貸借対照表に計上されないこと)になる」(江藤氏)ことから、事業リスクを下げる狙いがあるという。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/021900053/