多機能型の都市型河川公園「ビシャン・パーク」

 ABC-WDGはシンガポールの国土全域を対象としており、ガイドラインと連動して2030年までに約100のグリーンインフラ・プロジェクトが対象として指定されている。

 そのなかでも最大級のものが、コンクリート三面張りの排水路カラン川(全長3km)を自然型の河川に再生し、公園と一体的に多機能型の都市型河川公園として再整備したビシャン・パークである(写真1)。

写真1■氾濫源を内包する都市型河川公園に生まれ変わったビシャン・パーク(写真:Ramboll Studio Dreiseitl)
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 もともとカラン川は排水運河として、できるだけ早く水を下流に流すために造られた。直線的で画一的な河川断面だった(写真2)。それが、多様な断面と護岸形態を持ち、非常時は氾濫原として機能するように生まれ変わった。

写真2■整備前のカラン川。単一機能の排水路だった(写真:Ramboll Studio Dreiseitl)
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 また、従来の川幅17~24mを最大100mまで拡幅し、許容流水量は40%も増加した。現在のビシャン・パークは従来の川が持つ治水や排水といった機能を超えて、コミュニティーやレクリエーションの場として機能し、多くの市民が水や自然と親しむことができ、水と緑の大切さや魅力を実体験から理解できる場となっている(写真3)。

写真3■多機能型で多便益なグリーンインフラに市民の誰もがアクセスできる(写真:Ramboll Studio Dreiseitl)
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 ビシャン・パークの河川部分では、シミュレーションを通じて流量だけではなく、流出速度に応じて川の護岸形態を設計している。流れが速い部分では生態緑化技術を活用した護岸補強を行っている。

 このように多様な護岸形態を創出することで、より豊かな生物の生息域をつくり出している。2012年に開園してから「25年に一度の洪水」が起きたが、そのような非常時の水量にも柔軟に対応できているという(写真4)。

写真4■非常時は氾濫原として機能する(写真:Ramboll Studio Dreiseitl)
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