行政の課題解決を前面に

 みやま市が、地域新電力の設立を主導するきっかけとなったのは、2014年にはじめた住宅エネルギー管理システム(HEMS)の実証事業だった(図3)。市内の1万2000世帯中、約7分の1となる2000世帯にHEMSが導入された。この実証が終わった後にも、HEMSを使った市民向けサービスを続けることを決め、それを実施する企業が必要になった。

図3●市内の住宅の7分の1にHEMSを設置
(出所:みやま市、みやまスマートエネルギー)
[画像のクリックで拡大表示]

 また、2011年3月の東日本大震災を機に、分散型電源を地域に多く導入し、災害時でも市内に電力を供給し続けられる環境を確立する面からも、地域新電力が必要だった。

 みやま市では、地域への太陽光発電の導入促進策として、まず2010年に市内の住宅への太陽光発電システムの新設に対する補助を始めていた(図4)。これにより、市内の住宅における太陽光発電の普及率を、補助開始前の8.9%から、約15%に高めた。全国平均の5.6%を10ポイント近く上回る。

図4●住宅の屋根への補助、市有地へのメガソーラーの誘致。住宅用太陽光発電システムの普及率(左)は、図の作成当時の約8.9%から、現在は約15%に増えている
(出所:みやま市、みやまスマートエネルギー)
[画像のクリックで拡大表示]

 住宅の太陽光発電システムについては、固定価格買取制度(FIT)の買取期間が2019年度に終わる、いわゆる卒FIT住宅からも、買取期間の終了後、みやまスマートエネルギーが発電電力を購入する意向を示している。これに関連し、日本気象協会と発電量の予測技術の高精度化にも取り組んでいる(関連ニュース)。

 市内の遊休地に出力5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)も導入した。発電事業者である「みやまエネルギー開発機構」も、地域新電力のみやまスマートエネルギーと同じように、市が20%を出資している第3セクター方式となっている。

 最近では、FITを活用した太陽光発電システムの導入が難しくなりつつあることから、新たに市有の施設の屋根を貸す取り組みを始めた。NTTスマイルエナジーと協定を結び、同社がみやま市の31カ所の市有施設の屋根上に太陽光発電設備を新たに導入し、新電力に売電する(関連ニュース)。これによって、地域でさらに再エネを導入するとともに、その発電電力を地域で活用するという再エネ需給の両方を増やすことを狙う。

 みやまスマートエネルギーは、こうした地元の屋根上太陽光発電システムや太陽光発電所で発電された電力を購入し、地域の公共施設、企業や住宅にその電力を供給するとともに、HEMSを活用したサービスを提供する。さらに、こうした電力事業による収益を原資に、本来は市が手がけることがふさわしいものの、財源や人員の制約で十分に手がけられない市民サービスも提供する。

 このように、行政の課題の解決に向けた取り組みの一環で、電力はあくまで手段に過ぎないという姿勢を明確に打ち出している。こうした特徴的な地域新電力は、2013年に構想され、2015年に設立された。出資比率は、みやま市の55%のほか、みやまパワーホールディングスが40%、筑邦銀行が5%となっている(図5)。

図5●新電力の出資比率
(出所:みやま市、みやまスマートエネルギー)
[画像のクリックで拡大表示]

 地方自治体との関連が深い国内の他の多くの地域新電力の多くは、主な目的をあくまで地域新電力の本分、すなわち地域の再エネ電源の活用、地域の電力コストの低減、関連業務による雇用の創出などにとどめ、できるだけ早く経営を軌道に乗せることを優先している。みやま市の取り組みは、こうした他地域の一般的な取り組みとは一線を画している。

 みやま市による地球環境を意識した再エネ以外の取り組みには、生ごみ焼却をなくす「ゼロ・ウェイスト化」もある(図6)。こちらは、市による単独の事業として実施している。2018年12月に稼働を開始した新たな処理施設によって、生ごみを焼却せずに液体肥料に代えている。こうした生ごみ処理は、1万人程度の規模の地方自治体では前例はあったが、4万人規模の自治体では初めての例としている。

図6●生ゴミは燃やさずに液体肥料に代える
(出所:みやま市)
[画像のクリックで拡大表示]

 生ごみを「ゼロ・ウェイスト化」し、電力も地域新電力を通じて再エネの活用率を100%相当に高めていくことが、みやま市が目指す理想の姿の一つという。