農業の6次産業化、見守り、レストラン、多様なイベント

 新電力の業績は、2015年度は売上高が1億2896.2万円、経常利益が1668万円の赤字、2016年度は売上高が7億6792.1万円、経常利益が1673.5万円の赤字、2017年度は売上高が18億1101.4万円、経常利益が496.9万円の黒字で、初めて単年度黒字になった(図9)。電力部門のみに限ると、黒字は約4000万円とみられる。2018年度も黒字を見込んでいる。

図9●新電力の業績推移
(出所:みやま市、みやまスマートエネルギー)
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 2018年12月時点で、契約容量は5万8000kW、契約数は約4000件となっている。売り上げの約8割は法人向けで、市内の法人約1000社のうち半数の約520社が契約している。市の取り組みに賛同する企業が多いことがうかがえる。

 立ち上げ当初から市有施設を中心に高圧の需要家を確保でき、売り上げ面では規模のベースができていた。その後、手間が比較的かかる住宅向けを増やしている状況にある。その中で、黒字化までに3期を要したのは、電力事業ではなく、後述する他のサービスの負担が相対的に重くなっていたことが大きいようだ。

 みやまスマートエネルギーが手がけている市民サービスとは、どのようなものがあるのだろうか。

 まず、タブレット端末を使った市民サービスがある。HEMSを通じて得た電力利用状況を元にした高齢者の見守りや、市内の商店の品物を宅配するといった内容となっている(図10)。

図10●タブレット端末を使った市民サービス
(出所:みやま市、みやまスマートエネルギー)
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 高齢者の見守りは、新電力の電力供給先のうち、65歳以上が住む世帯が対象で、希望する世帯にサービスを提供している。対象世帯の約半数がサービスを希望している。

 このサービスは、2017年度に数百万円の黒字になったという。ただし、宅配の需要は思ったほどに伸びていない。個人の住宅向けという、手間がかかる割に売り上げが伸びない事業構造であることのほか、市内では周囲で声を掛け合って高齢者の単身宅の分まで買い出しするような地区が多いためという。

 みやま市によると、こうした状況から、公助や共助に分類されるサービス分野のうち、どの領域を今後は注力していくべきなのか、検討や模索を繰り返していく必要があるとしている。

 また、市役所に隣接するレストランを中心とするコミュニティ施設「さくらテラス」の建設・運営もある(図11)。これまでの赤字の理由には、さくらテラスの建物の償却や、運営費の負担が相対的に重かったこともあった。

図11●「さくらテラス」
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(出所:上はみやま市、みやまスマートエネルギー、下の2点は日経BP)

 さくらテラスは、市民の憩いの場や地域の情報発信などを目的に、2016年に開業した。特に力を入れているのは、みやま市の主産業である農業の6次産業化(第1次産業が食品加工・流通まで手がける経営形態)に寄与する取り組みである。その際に、市内の加工業者が加工などを担うことができれば、さらに波及効果が広がる。

 レストランでは、みやま産の農作物のおいしい料理を、シェフが実際につくってメニューとして提供する。イベントスペースとしても活用している。これまでに、ピアノや弦楽器の演奏会、書道展、婚活イベントなどに活用された。こうした機会を通じて、市民が集う場所に育てていきたいという。

 みやまスマートエネルギーが手がけた市民サービスの中には、トライアル(実験)で終えたものもある。

 例えば、高齢者向けの体操教室がある。狙いは、元気な高齢者を少しでも増やして社会保障費の支出を減らすこと。もちろん、憩いの場の提供という目的も兼ねている。2回開催したものの、新電力側が支出できる予算と、実際の開催に必要な費用との間に隔たりがあり、断念した。ただし、開催の意義の高いイベントのため、今後、違う形での企画を検討している。

 小学校向けのエコ・エネルギー教室も、現在は特定の学校で年1回、開催するのみに変えた。また、宴会向けのケータリングサービスも実験的に試したものの、現在は引き受けていない。