エネルギーと新電力のノウハウ

 地域新電力の母体となる企業には、事業運営ノウハウをある程度持ち、エネルギーの地産地消を実現するための技術や知見も持っていることが求められる。磐田市では、JFEエンジニアリング(東京都千代田区)を選んだ。元々、磐田市と深いつながりがある企業ではないが、同社によると「磐田市側から熱の入ったアプローチを受けたのがきっかけだった」(JFEエンジニアリング 電力ビジネス事業部 新電力事業推進部長 兼 スマートエナジー磐田 代表取締役の小林 厚氏)という。

 磐田市にとっては、地元の企業が地域新電力の母体となって事業運営を担えるのが、もちろん理想だった。しかし、そうした企業は、地元にはない。そこで、磐田市では、こうした企業を手広く探し、JFEエンジニアリングを新電力の担い手として誘致、合弁会社を設立した。

 JFEエンジニアリングは、エネルギー関連サービスの経験が豊富で、太陽光・風力・バイオマスといった再生可能エネルギー発電も手がけている。現在、求められている技術だけでなく、例えば、蓄電技術の応用や電気自動車(EV)の急速充電技術のような再エネ電力をより多く活用する上で、将来、必要になるとみられる技術にも積極的に取り組んでいる。新電力のアーバンエナジー(横浜市鶴見区)も立ち上げ、既に電力供給の実績もあった。「事業運営ノウハウと技術や知見を持っている」という、磐田市が重視していた条件が揃っている企業だった。

 アーバンエナジーは現在、約36万kWの供給契約を持つ新電力で、電源確保や電力小売りを全国展開している。再生可能エネルギー比率の高さが特徴で、約4割に達している。再エネ比率が高いのは、地方自治体のゴミ処理施設の施工や運営を担っている実績が多く、これらの施設内でゴミを燃やす廃棄物発電を含めたエネルギーの需給まで担っていることが大きい。

 アーバンエナジーを有するJFEエンジニアリングが地域新電力に参画することで、運用ノウハウを活用できるだけでなく、例えば、余剰電力の融通などでも利点が出てくる。磐田市の地域新電力で、調達先の発電電力が需要を上回った時間帯の余剰電力は、市場で売ることもできるし、アーバンエナジーが買い取ることもできる。

 こうして、磐田市において、地域新電力「スマートエナジー磐田」が2017年に設立された(図3)。JFEエンジニアリングが磐田市に構想を提案した2015年から2年の準備期間を経た。出資者は、JFEエンジニアリング(出資比率94%)のほか、磐田市(5%)、浜松磐田信用金庫(1%、出資当時は磐田信用金庫)である。

図3●新電力の概要(出所:スマートエナジー磐田)
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 磐田市による出資は、JFEエンジニアリングが望んだ。地元に根付いた地域新電力とするために、地元の自治体による出資や営業への協力が不可欠と考えていたからだ。信用金庫の出資は、磐田市がこだわった。産業政策の一環で、地元の企業の活性化などを目指す以上、地元の金融機関の協力は欠かせないと考えた。