勉強会は多い地区で10回程度実施した。洗い出された資源や魅力を軸に、それぞれの地区が目指す将来像と地域振興のテーマを決定していった。

つくば市資料を基に日経BP総研作成
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 各市街地ごとのテーマに沿った地域振興の実現に向け、19年度には2つの取り組みが始動した。まず、勉強会の発展形として住民主導による「周辺市街地活性化協議会」を設立。各協議会は、一市街地につき50万円が支給される「周辺市街地活性化チャレンジ補助金」を活用、地域の魅力を伝えるマップ製作などを行った。

 もうひとつが「つくばR8地域活性化プランコンペティション」の開催だ。8地区の活性化につながるプランを市内外から募集し、採択されたプランの提案者自身が最高200万円の賞金(実証支援金:総額400万円)を使い、実証事業として活性化に取り組むというものだ。

地区の魅力や課題を自然な形で理解できる「ロゲイニング」

 「つくばR8地域活性化プランコンペティション」には47件の応募が寄せられた。その中から選ばれた4プランのうちの1つが、筑波大学芸術系環境デザイン領域(藤田直子研究室)が提案する「つくばR8ロゲイニング」だ。

筑波大学人間総合科学研究科芸術専攻 環境デザイン領域の藤田直子教授(写真:佐々木温)
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 藤田教授の専門は環境デザイン。地域の課題を可視化し、解決の方法を提示することがテーマだ。「大学で私の授業やゼミに参加する学生は、地域振興に興味を持っているものの、大学やショッピングセンターがある中心市街地で生活が完結している。つくば市の周辺地域に行ったこともなければ地域の名前すら知らない。もちろん住民の方と話したこともない。活性化プランの立案と実践は、実体験に乏しい学生にとって貴重なアクティブラーニングになると考えた」と、コンペ応募の理由を語る。

 R8各市街地の資料を読んだ学生たちは、「魅力の発見・発信/イベント/賑わい/交流拠点/まち歩きマップ」の5つが各地区共通の願いだと解釈。「住民自身が地域を知り、明示し、そこに人を呼び、場を活用する」プランを実現することが、課題解決への近道だと考えた。プランを模索する中、出てきたのがある学生が提案したロゲイニングだったという。

 ロゲイニングは、野山などに設置されたチェックポイントを制限時間内に巡り、得点を競うオリエンテーリングのようなアクティビティ。宝探し的な楽しさがあり、ヨーロッパなどに愛好者が多い。オリエンテーリングでは参加者が単独で回ることが多いのに対し、2~5人程度のグループを組んで回ることが多いのも特徴だ。

 「地区内の資源をチェックポイントに設定すれば、参加者はポイントゲットの楽しさを味わいつつ、地区の魅力や課題を自然な形で理解できる。各地区の特性に応じ、テーマの異なるロゲイニングプランを作成できるのもメリット」と藤田教授は地域振興との相性の良さを説明。つくば市周辺市街地振興室の吉岡室長は「座学のワークショップにはないスポーツ的なコンセプトにも、ロゲイニングという馴染みのないネーミングにも好奇心をくすぐられた」と評価する。

 ロゲイニングへの参加を希望した地区には、一地区あたり2、3名の大学院生のリーダーと10~15名の学部生が担当として就いた。約60名の学生たちが担当地区を繰り返し訪ね、地域活性化協議会のメンバーや住民と会話を重ねながら、地域の魅力を探り、チェックポイントを決めていった。

 「参加者にGPS機能のついたタブレット端末を貸与し、地図代わりにする」「遠くて周りにくいチェックポイントと、近くて周りやすいチェックポイントとの間に得点差をつけ、ゲーム感覚を盛り込む」といったルールやシステムづくりのほか、告知のためのポスターやWebサイトの制作、チェックポイントとなる地元の店舗や施設との交渉も行った。

ロゲイニング当日は、地図を片手にチームでチェックポイントを回り、訪れた証拠にタブレットで写真を撮影する(写真:吉澤咲子)
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ロゲイニング当日の様子。チームについた大学生を交えて作戦会議。得点の高いポイントを回るか、得点の低いポイントを数多く回るかなど作戦を練る。学生と市民との交流が生まれる場としても機能する(写真:吉澤咲子)
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 そして2020年1月から3月に大曽根、上郷、栄、吉沼の4地区でロゲイニングイベントを実施することが決まった(3月に実施予定だった栄地区でのロゲイニングは新型コロナウイルスの影響で延期)。