和歌山県:2017年度からワーケーションを事業に

 和歌山県は、2017年度からワーケーション事業に取り組んできた。県では人口増加を目指して、2001年度から企業のサテライトオフィス誘致などに注力しており、ワーケーションはこの流れをくむものだ。交流人口を増やすと共に、将来の移住ニーズを掘り起こすことを目標としている。他の自治体に先駆けて「ワーケーション」という言葉を使って事業に取り組むことで、県のブランディングにつなげる狙いもある。

ワーケーション体験会の様子(写真:和歌山県)
ワーケーション体験会の様子(写真:和歌山県)
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2019年11月に仁坂知事を会長として、ワーケーション推進に関する全国的な自治体間連合「ワーケーション自治体協議会」が発足した(写真:和歌山県)
2019年11月に仁坂知事を会長として、ワーケーション推進に関する全国的な自治体間連合「ワーケーション自治体協議会」が発足した(写真:和歌山県)
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 2017年8月には、ワーケーションに関する講演やパネルディスカッションから成る「ワーケーション東京フォーラム」を東京都内で開催。仁坂吉伸県知事も出席し、都内の企業にアピールした。同年10月と2018年1月には首都圏企業を招く3泊4日のワーケーション体験会を開いた。2018年、2019年夏季にはそれぞれ親子ワーケーションを実施。首都圏の家族を招いて、親がテレワークに従事する間に子供が自然体験・学習をし、夜は家族でバーベキューを楽しむといった内容だ。

 2017~2018年度の2年間で49社567人がワーケーションで和歌山県を訪れ、2019年度も県が把握するだけで2019年4月から2020年2月末までで55社347人に上る。なお、この数字には、WORK×ation Site 南紀白浜の利用企業のうち、県がアテンドしなかったものは含んでいない。

 2019年11月に仁坂知事を会長として、ワーケーション推進に関する全国的な自治体間連合「ワーケーション自治体協議会」が設立された。1道7県73市町村が参加(2月末現在)し、意見交換などを進めながら共同でのPRなどを検討していく。

 県内でワーケーションの機運が盛り上がったきっかけは、東京のICT企業が白浜町にサテライトオフィスを構える例が増えたことだ。総務省が推進する「ふるさとテレワーク」の助成事業が追い風となり、2015年にはセールスフォース・ドットコム(東京都千代田区)が、2016年にはNECソリューションイノベータ(東京都港区)が白浜町に進出した。

セールスフォースのサテライトオフィスが入る白浜町ITビジネスオフィス。「企業誘致は始めた当初はうまくいかなかったが、セールスフォースの進出で潮目が変わった。以前は中国などでのオフショア開発に乗り出すIT企業が多かったが、国内にも目が向くようになったようだ」と企業立地課の坂野氏(写真:和歌山県)
セールスフォースのサテライトオフィスが入る白浜町ITビジネスオフィス。「企業誘致は始めた当初はうまくいかなかったが、セールスフォースの進出で潮目が変わった。以前は中国などでのオフショア開発に乗り出すIT企業が多かったが、国内にも目が向くようになったようだ」と企業立地課の坂野氏(写真:和歌山県)
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 「ICT企業の集積が進んできたことから、さらにワーケーションという仕組みを使って、白浜・田辺エリアにICT産業に携わる人材を集積しようと努めてきた。利用企業同士のコラボや、利用企業と地域の交流が生まれることを期待している」(大谷氏)。

 なお、セールスフォース・ドットコムとNECソリューションイノベータはいずれも、「白浜町ITビジネスオフィス」に入居している。同施設の6室が満室となり、WORK×ation Site 南紀白浜が入居する白浜町第2ITビジネスオフィスが2018年に開設された。

ワーケーション事業者の情報を集約して発信

 和歌山県は、ワーケーション事業を今後さらに発展させていく考え。2020年度の課題は、関連事業者のネットワーク化、首都圏企業と地域課題のマッチング、東京オリンピック・パラリンピックに合わせたイベント開催などだ。

左から和歌山県企業立地課の坂野悠司副主査、情報政策課の大谷真一朗主任。ワーケーション事業の主管は情報政策課。サテライトオフィス誘致事業などを手掛ける企業立地課は協力している(写真:赤坂 麻実)
左から和歌山県企業立地課の坂野悠司副主査、情報政策課の大谷真一朗主任。ワーケーション事業の主管は情報政策課。サテライトオフィス誘致事業などを手掛ける企業立地課は協力している(写真:赤坂 麻実)

 「ワーケーションにかかる交通費と宿泊費を圧縮できれば、さらに利用企業は増えるはずだ。県にできることとできないことがあるが、民間事業者に働きかけて低廉化できれば、ゲストハウスの利用なども広めていきたい。そうしたことも含め、2020年度は関連事業者のネットワーク化に取り組みたい。コーディネート、ワークプレイス、宿泊施設、アクティビティの事業者の情報を一元的に集約し、体系的にPRできればと考えている」(大谷氏)。

 地元企業向けの説明会を実施済みで、応募や問い合わせは多いという。今後は、応募があった事業者の情報を取りまとめて発信していく。「県のワーケーションの現行Webサイトは職員の手製なので、リニューアルするつもりだ。リニューアル後のサイトでは、ニーズに合わせて事業者を検索できるようにしたい」と大谷氏。ワーケーションの利用を検討する企業がイメージしやすいように、企業研修や地域貢献など3~5つのテーマごとにモデルコースを作って公開することも検討中だ。

 例えば、県内にはWORK×ation Site 南紀白浜の他にも、ワーケーション用オフィスとして使える場所がある。和歌山県立情報交流センターBig・Uや秋津野ガルテンなど、県や民間の既存施設でもワークプレイスの提供が可能という。さらに、2020年夏には白浜町に新たなオフィスビル「Anchor(アンカー)」が完成する予定だ。

白浜町でリノベーション工事中の新たなオフィスビルの完成イメージ(資料:オーエス)
白浜町でリノベーション工事中の新たなオフィスビルの完成イメージ(資料:オーエス)
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 和歌山県商工観光労働部企業政策局企業立地課の坂野悠司副主査はこの施設整備について以下のように説明する。「企業誘致に関して、民間がオフィスビルを建設すると、県と町が補助する制度を新設した。この事業は同制度下でプロポーザルを受けて決定したもの。オーエス(大阪市北区)が遊休の保養所だった場所を買い取り、リノベーションしてオフィス7室を整備する。ICT企業のサテライトオフィス誘致を目指している。この施設には、ワーケーションに使えるコワーキングスペースも設ける予定。イベントなどを開き、入居企業とのコラボの機会を作りたい」。

 また、都会の企業のニーズと地元の課題を結びつける研修型のワーケーションを2020年度も強化・継続する考えだ。和歌山県は2019年度に日本能率協会マネジメントセンターと協力し、「コレクティブ・インパクト・リーダーシップ(CIL)@わかやま2019」と呼ぶ研修型ワーケーションを実施した。総務省の関係人口創出・拡大事業の採択事業だ。首都圏企業の社員が、地元の実業家と交流し、地域課題の解決を図る内容である。

県では、企業誘致に関する補助金制度を数多く設けている(資料:和歌山県)
県では、企業誘致に関する補助金制度を数多く設けている(資料:和歌山県)
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首都圏企業の社員研修と地域課題を結びつける取り組み(資料:和歌山県)
首都圏企業の社員研修と地域課題を結びつける取り組み(資料:和歌山県)
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 田辺市の人材育成事業「たなべ未来創造塾」とコラボし、塾生が取り組んでいる地域課題に対して、CIL参加者が解決策を練る。「新ビジネスや新業態のアイデアが生まれたり、都会へのプロモーションを仕掛けられたり、地域だけの力ではできなかったことが可能になる。都会の企業側にも社員のリーダーシップが向上するメリットがある。両者のニーズをうまく発掘して結びつけていけたら、参加者と地元の関係が持続するかもしれない」(大谷氏)と思い描く。

 加えて、東京オリンピック・パラリンピックが開催されれば、ワーケーション需要の高まりが予想されるため、和歌山県はワーケーション支援のイベントなどの企画を用意する方針だ。また、メディアや社会的影響力の大きな企業などを対象として、ワーケーション体験ツアーを開催し、「ワーケーション=和歌山」を全国に発信するとしている。

*記事内容は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する以前の取材に基づいており、今後、計画などが変更される場合がある。
訂正履歴
初出時、2ページに和歌山県政策局情報政策課ICT活用推進班の宮井孝敏班長とありましたが、正しくは和歌山県企画部企画政策局情報政策課ICT活用推進班の大谷真一朗主任でした(記事中の宮井氏のコメントはすべて大谷氏のコメントであり、4ページ写真キャプションに宮井氏とありましたが正しくは大谷氏でした)。4ページで「白浜町ITビジネスオフィス」の室数を10室と記していましたが正しくは6室でした。お詫び申し上げます。記事は修正済みです。 [2020/3/17 9:20]