三菱地所は2019年5月、和歌山県白浜町にワーケーション用オフィスを開設し、丸の内エリアなどで展開するオフィスビルのテナント企業らを対象に貸し付けている。施設開設に先駆けて和歌山県および白浜町と進出協定を結んでおり、事業運営において県や地元のサポートを受けているという。同社と県に、取り組みについて話を聞いた。

 和歌山県と白浜町、三菱地所は3者で協定を結び、2019年5月にワーケーション用オフィス拠点「WORK×ation Site 南紀白浜」を白浜町に開設した。ワーケーションとは、観光地などに短期滞在し、現地で仕事をしながら休暇を楽しむというもの。

WORK×ation Site 南紀白浜の内観。内装に手を入れてリゾートらしさを演出した。広さは約60m2。最大16人まで利用可能。1日の利用料は10万円(税別)だ(写真:三菱地所)
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WORK×ation Site 南紀白浜の利用イメージ(写真:三菱地所)
WORK×ation Site 南紀白浜の利用イメージ(写真:三菱地所)
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 三菱地所は、WORK×ation Site 南紀白浜を、自社が保有するオフィスビルのテナント企業などに、白浜町滞在中のオフィスとして提供している。白浜町が管理・運営するサテライトオフィス用の貸事務所「白浜町第2ITビジネスオフィス」の1室を三菱地所が借り上げ、1日1社専有方式で貸し付けている。

 和歌山県は白浜町を含めた県内のサテライトオフィス事業やワーケーション事業を主導する立場で関わる。また、県は白浜町がITビジネスオフィスを整備する際、財政的支援を行った。

 県や町は、ワーケーションで交流人口の増加を目指す。一方、三菱地所は、テナント企業の顧客満足度を高める狙いだ。2019年5月の開業以来、視察や予約済を含めて、20社ほどが利用した。また、この他に、継続的に利用する「契約企業」として、NTTコミュニケーションズ(東京都千代田区)、ギックス(東京都港区)、三菱UFJ銀行(東京都千代田区)が名を連ねる。利用した企業からリピートの要望や、新規企業から問い合わせを受けており、次年度も一定の稼働を見込んでいるという。

 1日や2日の短期滞在から1カ月程度まで利用期間は様々だ。あるICT企業が1カ月続けて借り上げ、期間中にその企業の従業員が入れ替わりで訪れる例もあった。ワーケーション事業について、県と三菱地所それぞれの取り組みを見ていこう。

WORK×ation Site 南紀白浜が入居する白浜町第2ITビジネスオフィスの外観。桜の名所としても知られる平草原公園(面積約14万m2)内に白浜町が平成29年度地方創生拠点整備交付金を活用して整備した。三菱地所のほか、Web会議サービスなどを提供するブイキューブ(本社・東京都目黒区)などが入居しており、現在は全4室が満室だ(写真:三菱地所)
WORK×ation Site 南紀白浜が入居する白浜町第2ITビジネスオフィスの外観。桜の名所としても知られる平草原公園(面積約14万m2)内に白浜町が平成29年度地方創生拠点整備交付金を活用して整備した。三菱地所のほか、Web会議サービスなどを提供するブイキューブ(本社・東京都目黒区)などが入居しており、現在は全4室が満室だ(写真:三菱地所)
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三菱地所:オフィスビルのテナントへの付加価値的サービスとして

 三菱地所は不動産デベロッパーとして、東京・丸の内エリアを中心にオフィス事業を展開している。同社にとって、ワーケーションはテナント企業への“オプションサービス”の一つだ。同社が取り組むオプション施策とは、例えば、大企業とスタートアップのコラボが生まれる交流拠点の整備や、メンタルヘルスなど企業が関心を寄せるテーマでのセミナー開催、スマホで予約・解錠できるテレワーク用の執務ブースの全国設置などである。三菱地所ビル営業部グローバル営業室の三澤圭乃主事は、事業開発の背景を次のように語る。

三菱地所ビル営業部グローバル営業室の三澤圭乃主事。ワーケーション事業の創設メンバーの一人だ。複数の部署をまたぐプロジェクト・チームで事業を推進している(写真:赤坂 麻実)
三菱地所ビル営業部グローバル営業室の三澤圭乃主事。ワーケーション事業の創設メンバーの一人だ。複数の部署をまたぐプロジェクト・チームで事業を推進している(写真:赤坂 麻実)

 「いまや、オフィス床を提供するだけのサービスは時代に合わない。お客さまと接するなかで、イノベーションが促進される環境づくりや、テレワークなどを含めた働き方改革の実施、従業員のメンタルヘルスの維持・増進、CSRの推進といったニーズを感じた。これらを可能にするソリューションの一つとして、ワーケーション拠点を提供することにした」

 2017年夏ごろに企画を立ち上げ、候補地を探し始めた。立地に求めた条件は、東京から距離があって非日常感を味わえること、かつ移動時間はなるべく短いことだ。日帰りや1泊でも十分な滞在時間が確保できる場所を探したという。南紀白浜空港に近い白浜町第2ITビジネスオフィスは、こうした諸条件を満たしていた。

 羽田―南紀白浜空港間のフライト時間は約70分。空港からオフィスまでは車で3分の距離だ。「空港の建物を出ると、ヤシなどリゾートらしい樹木があり、車で走り出してすぐに海が見える。景色が開けていて、それだけで気分が高揚する。街もコンパクトで便利」(三澤氏)という。

WORK×ation Site 南紀白浜の位置。空港から車で3分、オフィスからビーチや繁華街までは車で5分という立地だ(資料:三菱地所)
WORK×ation Site 南紀白浜の位置。空港から車で3分、オフィスからビーチや繁華街までは車で5分という立地だ(資料:三菱地所)
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 2018年8月に三菱地所は和歌山県および白浜町との間で進出協定を締結した。2018年12月には施設をプレオープンして一部顧客への試験的な提供を始め、2019年5月にグランドオープンした。三澤氏は利用実態について次のように語る。

 「プロジェクトチームでの利用が多い。社内横断的なプロジェクトの場合は、メンバーが一堂に会する時間を作るのが難しく、効率的に進められないといった話も聞く。その点、ワーケーションなら事前調整の上で必要なメンバーが全員集まることになる。会議中に誰かがちょっとしたことで自部署に呼び戻されるようなこともなく、集中しやすい環境だ。また、一般に、物理的に近い場所にいる人には親近感がわきやすいものだ。東京のオフィスでは見られないような笑顔やコミュニケーションが生まれる。利用した私たちが実際にそうした体験をし、利用企業からも同様の声が聞かれる」

今のところ「バケーション」要素のニーズは少ない

 一方で、有給休暇の消化を兼ねた使い方は主流でないという。主に、利用企業の社内制度が整っていないためだ。ワーケーションを想定した社内制度がないため、出張扱いでワーケーションを利用する企業もある。そうした企業では、土日と組み合わせて、週休日に熊野古道や温泉を楽しむ利用スタイルが多いという。

 ワーケーションはもともとワークとバケーションを組み合わせた造語だが、「日本では、企業のムードやマインドは、現時点では必ずしもバケーション色を求めていない。当社では『ワーケーション』に、Location(場所を変え)、Motivation(動機付けをし)、Communication(対話の中で)、Innovation(革新が生まれる)といった意味を込めている」と三澤氏は説明する。

 和歌山県としても、バケーション以外の要素を充実させたい考えだ。和歌山県企画部企画政策局情報政策課ICT活用推進班の大谷真一朗主任は「南紀白浜は魅力的な観光地だが、観光だけをフックにしていたのでは、一度訪ねたら次は他の場所を訪れようという発想になる。継続的に和歌山に関わる人口を増やすため、InnovationやEducation(教育)、Collaboration(協業)など、様々な切り口があることが望ましい」と語る。

 WORK×ation Site 南紀白浜では、始業前のヨガ、終業後のバーベキュー、星空ツアー、リフレッシュを兼ねた熊野古道の道普請、海岸清掃など、出張の枠組みでも導入しやすいチームビルディングやCSR(企業の社会的責任)のメニューを導入している。三菱地所と地域の各事業者との連携を、和歌山県が仲立ちした。

南紀白浜エアポートをはじめ、地元企業が協力

 三菱地所の取り組みに、地域の様々な事業者が呼応し、協力している。南紀白浜エアポート(和歌山県白浜町。経営共創基盤、みちのりホールディングス、白浜館が共同出資)は、その代表格だ。同社は南紀白浜空港を運営すると共に、空港を起点とした地方創生に取り組んでおり、その一環でWORK×ation Site 南紀白浜のサポート役を買って出た。

南紀白浜空港。2019年4月からコンセッション方式で南紀白浜エアポートが運営している(写真:2点とも南紀白浜エアポート)
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南紀白浜空港。2019年4月からコンセッション方式で南紀白浜エアポートが運営している(写真:2点とも南紀白浜エアポート)
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南紀白浜空港。2019年4月からコンセッション方式で南紀白浜エアポートが運営している(写真:2点とも南紀白浜エアポート)

 具体的には、利用企業に対する現地行程プランの提案や、それに付随する交通・宿泊・飲食・体験などの予約手配、オフィス清掃や備品の管理・補充、利用企業の現地相談窓口などを担っている。東京で経営コンサルティングの経験があるスタッフを擁しており、首都圏企業のニーズに合ったプランを提案できるという。旅行業免許を取得しており、地元ならではのプランも多く用意している。

 同社の協力が得られたことで、三菱地所は管理運営スタッフを自社で常駐させることなく、コストを抑えた事業運営ができているという。

 また、周辺の宿泊施設もワーケーション需要に対応している。観光地である南紀白浜には、いわゆるビジネスホテルが少なかったが、現地でリゾートホテル「SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE」を営む白浜館(和歌山県白浜町)が、SEAMOREに隣接して滞在型宿泊施設2棟50室を開設した。最大3人まで泊まれる部屋を1人で利用した場合も、宿泊料金は税別1万円以下としている。

 地元の飲食店にも、ビジネスパーソン向けに価格を抑えたデリバリーメニューを開発するといった動きが出てきた。「県が地元企業とつないでくれて、我々も泥臭い手探りの活動をするなかで、前向きに協力いただけるようになった。地元に根付くとはこういうことかと感じた。自社で専用の宿泊施設を構えるとなれば、早期にスモールスタートを切ることはできなかった。今後も、送客して地元に経済効果が波及するように考えたい」(三澤氏)。

 WORK×ation Site 南紀白浜を含めた和歌山県のワーケーション事業の効果もあって、羽田・南紀白浜間の移動ニーズも増している。この路線を担う日本航空は、同路線の1日3便(往復)のうち、朝夕は使用機を大型のものに変更した。95席の機種から165席の機種に変更し、1日当たり片道140席を増やしたが、搭乗率は常に高めに推移しているという。

今後、全国10~20室のワーケーションサイトを

 三菱地所は、2020年春ごろまでに新たに2件のワーケーションサイトを発表予定だ。当面は全国10~20室まで施設を増やす方向で検討している。ロケーションはやはり、空港や新幹線駅から至近で、かつ非日常の感覚が味わえることを条件にしている。

 収益性には固執しない。「あくまでテナント企業へのサービスの一環であり、この事業単体で大きく利益を上げようという考えはない。また、我々としても地方創生といった公共性の高い事業に取り組んでいきたい思いがある」(三澤氏)。

 ただし、テナント誘致への効果は期待している。「(ワーケーションによる)立地のいいオフィス、多様な働き方などは、企業の人材採用に好影響を及ぼすことが期待される。今は各社、リクルーティングに苦慮する時代なので、一定の訴求効果があるはずだ」(同)。

 ワーケーション事業の推進を考える自治体には、「ぜひ、リアルなニーズに目を向けてもらいたい」と三澤氏は語る。「企業の多くは今、いかにイノベーションを起こすのかを必死に追い求めている。地元の熱いスタートアップや技術とコラボできる仕組みがあるといいのではないか。AI、フィンテックといったテーマを掲げてイベントを開くなど、呼び込みたい層を絞って明確にアピールすると効果がありそうだ」。

和歌山県:2017年度からワーケーションを事業に

 和歌山県は、2017年度からワーケーション事業に取り組んできた。県では人口増加を目指して、2001年度から企業のサテライトオフィス誘致などに注力しており、ワーケーションはこの流れをくむものだ。交流人口を増やすと共に、将来の移住ニーズを掘り起こすことを目標としている。他の自治体に先駆けて「ワーケーション」という言葉を使って事業に取り組むことで、県のブランディングにつなげる狙いもある。

ワーケーション体験会の様子(写真:和歌山県)
ワーケーション体験会の様子(写真:和歌山県)
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2019年11月に仁坂知事を会長として、ワーケーション推進に関する全国的な自治体間連合「ワーケーション自治体協議会」が発足した(写真:和歌山県)
2019年11月に仁坂知事を会長として、ワーケーション推進に関する全国的な自治体間連合「ワーケーション自治体協議会」が発足した(写真:和歌山県)
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 2017年8月には、ワーケーションに関する講演やパネルディスカッションから成る「ワーケーション東京フォーラム」を東京都内で開催。仁坂吉伸県知事も出席し、都内の企業にアピールした。同年10月と2018年1月には首都圏企業を招く3泊4日のワーケーション体験会を開いた。2018年、2019年夏季にはそれぞれ親子ワーケーションを実施。首都圏の家族を招いて、親がテレワークに従事する間に子供が自然体験・学習をし、夜は家族でバーベキューを楽しむといった内容だ。

 2017~2018年度の2年間で49社567人がワーケーションで和歌山県を訪れ、2019年度も県が把握するだけで2019年4月から2020年2月末までで55社347人に上る。なお、この数字には、WORK×ation Site 南紀白浜の利用企業のうち、県がアテンドしなかったものは含んでいない。

 2019年11月に仁坂知事を会長として、ワーケーション推進に関する全国的な自治体間連合「ワーケーション自治体協議会」が設立された。1道7県73市町村が参加(2月末現在)し、意見交換などを進めながら共同でのPRなどを検討していく。

 県内でワーケーションの機運が盛り上がったきっかけは、東京のICT企業が白浜町にサテライトオフィスを構える例が増えたことだ。総務省が推進する「ふるさとテレワーク」の助成事業が追い風となり、2015年にはセールスフォース・ドットコム(東京都千代田区)が、2016年にはNECソリューションイノベータ(東京都港区)が白浜町に進出した。

セールスフォースのサテライトオフィスが入る白浜町ITビジネスオフィス。「企業誘致は始めた当初はうまくいかなかったが、セールスフォースの進出で潮目が変わった。以前は中国などでのオフショア開発に乗り出すIT企業が多かったが、国内にも目が向くようになったようだ」と企業立地課の坂野氏(写真:和歌山県)
セールスフォースのサテライトオフィスが入る白浜町ITビジネスオフィス。「企業誘致は始めた当初はうまくいかなかったが、セールスフォースの進出で潮目が変わった。以前は中国などでのオフショア開発に乗り出すIT企業が多かったが、国内にも目が向くようになったようだ」と企業立地課の坂野氏(写真:和歌山県)
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 「ICT企業の集積が進んできたことから、さらにワーケーションという仕組みを使って、白浜・田辺エリアにICT産業に携わる人材を集積しようと努めてきた。利用企業同士のコラボや、利用企業と地域の交流が生まれることを期待している」(大谷氏)。

 なお、セールスフォース・ドットコムとNECソリューションイノベータはいずれも、「白浜町ITビジネスオフィス」に入居している。同施設の6室が満室となり、WORK×ation Site 南紀白浜が入居する白浜町第2ITビジネスオフィスが2018年に開設された。

ワーケーション事業者の情報を集約して発信

 和歌山県は、ワーケーション事業を今後さらに発展させていく考え。2020年度の課題は、関連事業者のネットワーク化、首都圏企業と地域課題のマッチング、東京オリンピック・パラリンピックに合わせたイベント開催などだ。

左から和歌山県企業立地課の坂野悠司副主査、情報政策課の大谷真一朗主任。ワーケーション事業の主管は情報政策課。サテライトオフィス誘致事業などを手掛ける企業立地課は協力している(写真:赤坂 麻実)
左から和歌山県企業立地課の坂野悠司副主査、情報政策課の大谷真一朗主任。ワーケーション事業の主管は情報政策課。サテライトオフィス誘致事業などを手掛ける企業立地課は協力している(写真:赤坂 麻実)

 「ワーケーションにかかる交通費と宿泊費を圧縮できれば、さらに利用企業は増えるはずだ。県にできることとできないことがあるが、民間事業者に働きかけて低廉化できれば、ゲストハウスの利用なども広めていきたい。そうしたことも含め、2020年度は関連事業者のネットワーク化に取り組みたい。コーディネート、ワークプレイス、宿泊施設、アクティビティの事業者の情報を一元的に集約し、体系的にPRできればと考えている」(大谷氏)。

 地元企業向けの説明会を実施済みで、応募や問い合わせは多いという。今後は、応募があった事業者の情報を取りまとめて発信していく。「県のワーケーションの現行Webサイトは職員の手製なので、リニューアルするつもりだ。リニューアル後のサイトでは、ニーズに合わせて事業者を検索できるようにしたい」と大谷氏。ワーケーションの利用を検討する企業がイメージしやすいように、企業研修や地域貢献など3~5つのテーマごとにモデルコースを作って公開することも検討中だ。

 例えば、県内にはWORK×ation Site 南紀白浜の他にも、ワーケーション用オフィスとして使える場所がある。和歌山県立情報交流センターBig・Uや秋津野ガルテンなど、県や民間の既存施設でもワークプレイスの提供が可能という。さらに、2020年夏には白浜町に新たなオフィスビル「Anchor(アンカー)」が完成する予定だ。

白浜町でリノベーション工事中の新たなオフィスビルの完成イメージ(資料:オーエス)
白浜町でリノベーション工事中の新たなオフィスビルの完成イメージ(資料:オーエス)
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 和歌山県商工観光労働部企業政策局企業立地課の坂野悠司副主査はこの施設整備について以下のように説明する。「企業誘致に関して、民間がオフィスビルを建設すると、県と町が補助する制度を新設した。この事業は同制度下でプロポーザルを受けて決定したもの。オーエス(大阪市北区)が遊休の保養所だった場所を買い取り、リノベーションしてオフィス7室を整備する。ICT企業のサテライトオフィス誘致を目指している。この施設には、ワーケーションに使えるコワーキングスペースも設ける予定。イベントなどを開き、入居企業とのコラボの機会を作りたい」。

 また、都会の企業のニーズと地元の課題を結びつける研修型のワーケーションを2020年度も強化・継続する考えだ。和歌山県は2019年度に日本能率協会マネジメントセンターと協力し、「コレクティブ・インパクト・リーダーシップ(CIL)@わかやま2019」と呼ぶ研修型ワーケーションを実施した。総務省の関係人口創出・拡大事業の採択事業だ。首都圏企業の社員が、地元の実業家と交流し、地域課題の解決を図る内容である。

県では、企業誘致に関する補助金制度を数多く設けている(資料:和歌山県)
県では、企業誘致に関する補助金制度を数多く設けている(資料:和歌山県)
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首都圏企業の社員研修と地域課題を結びつける取り組み(資料:和歌山県)
首都圏企業の社員研修と地域課題を結びつける取り組み(資料:和歌山県)
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 田辺市の人材育成事業「たなべ未来創造塾」とコラボし、塾生が取り組んでいる地域課題に対して、CIL参加者が解決策を練る。「新ビジネスや新業態のアイデアが生まれたり、都会へのプロモーションを仕掛けられたり、地域だけの力ではできなかったことが可能になる。都会の企業側にも社員のリーダーシップが向上するメリットがある。両者のニーズをうまく発掘して結びつけていけたら、参加者と地元の関係が持続するかもしれない」(大谷氏)と思い描く。

 加えて、東京オリンピック・パラリンピックが開催されれば、ワーケーション需要の高まりが予想されるため、和歌山県はワーケーション支援のイベントなどの企画を用意する方針だ。また、メディアや社会的影響力の大きな企業などを対象として、ワーケーション体験ツアーを開催し、「ワーケーション=和歌山」を全国に発信するとしている。

*記事内容は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する以前の取材に基づいており、今後、計画などが変更される場合がある。
訂正履歴
初出時、2ページに和歌山県政策局情報政策課ICT活用推進班の宮井孝敏班長とありましたが、正しくは和歌山県企画部企画政策局情報政策課ICT活用推進班の大谷真一朗主任でした(記事中の宮井氏のコメントはすべて大谷氏のコメントであり、4ページ写真キャプションに宮井氏とありましたが正しくは大谷氏でした)。4ページで「白浜町ITビジネスオフィス」の室数を10室と記していましたが正しくは6室でした。お詫び申し上げます。記事は修正済みです。 [2020/3/17 9:20]

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/031900150/