人を育てるリノベーションまちづくり事業

 マルカンビル大食堂の再生の源流をたどると、2014年に市が主催したリノベーションまちづくりを学ぶ勉強会に行き当たる。小友氏が花巻家守舎の仲間たちと出会ったのは、この勉強会だ。その仕掛人は、花巻市役所で都市再構築検討プロジェクトチームに属していた伊藤直樹氏である。

花巻家守舎取締役事業部長の伊藤直樹氏(写真:日経BP総研)
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 2013年に商業係長になった伊藤氏は商店街対策を担当したが、商店街の人たちと積極的に対話していく中で、「商店街活性化とよく言われているが、『どうなることが商店街活性化なのか』ということが、あまり議論されていないと気づいた。私もその答えを分からずにいた時に、リノベーションまちづくりという手法に出会った」という。それが、勉強会の開催につながった。

 伊藤氏はリノベーションまちづくり事業を担当するだけではなく、市役所の在職中に花巻家守舎の株主となり、配当は得ずに出資をしている。地方公務員法においても、職員の出資は禁止されておらず、花巻市の倫理規定にも反していない。出資をしたのは自然な流れだったと伊藤氏は話す。「市役所だと人事異動があれば、さよならになってしまう。単なる場づくりだけでなく、自分事としてリスクを負って、花巻家守舎の皆さんと本気で付き合っていこうというメッセージだった」と言う。

 マルカンビル大食堂再生の際にも、市職員として申請事務などを支援してきた。現在は、家業である農業をしながら、花巻家守舎の取締役事業部長として街再生のビジネスに関わり続けている。

 マルカンビルも進化を続けている。地下には、花巻市スケートボード協会がDIYでリノベーションしたスケートボードショップがプレオープン中だ。これも花巻市スケートボード協会のメンバーから小友氏にアプローチがあり、実現した。「小友さんの周りには、花巻で新しいことをしたい人が集まってくる」(伊藤氏)。

プレオープン中のスケートボードショップ(写真:日経BP総研)
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 耐震工事の終了後は2階に「おもちゃ美術館」をオープンする予定だ。屋上に温泉を造る構想もある。「やれるかどうかわからないけど、やりたい、やりたいと言ってると、『やろうぜ』と人が来てくれるんですよ」と小友氏は話す。