「メガソーラービジネス」2019年3月19日付の記事より

 広島県福山市の南部に位置する箕沖町は、瀬戸内海に面した沿岸部に位置し、南端からは、景勝地として知られる鞆の浦や、海に浮かぶ大小の島々を一望できる。同町のエリアは1970年代から造成の始まった埋め立て地で、瀬戸内工業地域の一翼を担っている。

 福山市は、このエリアを「福山市次世代エネルギーパーク」として整備し、再生可能エネルギーやリサイクル関連施設の集積を進めるとともに、環境学習の拠点として「福山市リサイクルプラザ」を設置した(図1)。市民団体を対象に次世代エネルギーパーク内のバス見学ツアーを実施するなど、環境啓発活動に取り組んでいる。

図1●「福山市リサイクルプラザ」
(出所:日経BP)
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ごみ固形燃料で20MWを発電

 同パーク内には、中国電力グループによる2つのメガソーラーが稼働し、合計のパネル出力は12MWを超え、広島県内では最大級の太陽光発電設備となっている。加えて、バイオマス(廃棄物系バイオマス)を含む「ごみ固形燃料(RDF)」をガス化溶融炉で燃焼・溶融し、排熱で蒸気タービン発電機を動かす「福山リサイクル発電所」が立地し、こちらは約20MWの発電能力を持っている。

 「福山リサイクル発電所」には、広島県やJFEエンジニアリングなどが出資し、福山市など7市2町が参画している。これら9市町から排出した一般廃棄物をRDFに加工し、発電燃料として箕沖町の発電所に運んでいる。2004年から始まった事業で、当初、事業期間は2019年3月までだったが、さらに5年間の延長が決まっている(図2)。

図2●「福山リサイクル発電所」
(出所:日経BP)
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「環境啓発」に加え「地産地消」も

 福山市は、こうした市内の再エネ関連施設を、「環境啓発」のためだけでなく、発電した電力を地域で活用する「エネルギーの地産地消」まで発展させる準備を進めてきた。

 2018年12月、福山市とJFEエンジニアリングは、地域新電力の福山未来エナジー(福山市)を設立した。2019年4月から電力小売事業を開始する。官民連携による地域新電力は、瀬戸内地方で初めてという。

 福山未来エナジーは、福山リサイクル発電によるバイオマス由来電力を軸に、市が運営する太陽光など再エネ主体の電力を福山市内の公共施設に供給する。まずは、上下水道局を含む250の公共施設に年間9100万kWhを供給する計画で、国内最大級の地域新電力になるという(図3)。

図3●地域新電力から供給を受ける箕島浄水場
(出所:日経BP)
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 JFEエンジニアリングは、子会社のアーバンエナジー(横浜市)を通じ、すでに再エネ比率40%程度の電力小売事業で実績がある。福山未来エナジーも、こうしたJFEエンジニアリングのノウハウを活用し、電力の需要と供給を一致させるバランシング業務に関しては、アーバンエナジーのバランシンググループ(代表契約者制度)に加わる。

 電源構成の計画では、対象となる公共施設の電力使用量の約7割は地産の再エネで賄える見込みという。今後、再エネ比率をさらに高めることも可能という。

 ここ数年、地域新電力による「エネルギーの地産地消」を目指す動きが目立っているが、自治体が直接、出資するケースは必ずしも多くない。福山未来エナジーの資本金は1億円で、JFEエンジニアリング90%、福山市10%という出資構成になる。

 福山市・環境部環境総務課の清水直樹課長は、「福山未来エナジーを設立した第一の目的は、市の環境政策である『エネルギー地産地消』を実現すること。そのために市も出資し、イニシアティブをとっていくことにした。JFEエンジニアリングとはビジネスパートナーとして、包括的に連携していきたい」と話す。

 清水課長は、「まず、市の関連施設にある再エネを主体に調達して、公共施設に電力を供給することからスタートするが、将来的には、地域の民間企業の持つ再エネや固定価格買取制度(FIT)による買取期間の終了した住宅太陽光などからの調達も検討したい。電力の提供先も自治体の施設に加え、地域の民間企業や市民への供給も目指す」としている。

浄水場の太陽光を地産地消

 福山市内における民間ベースの太陽光としては、約1万軒に住宅太陽光が設置され、合計出力は約45MW達し、このほか民間企業による太陽光が少なくとも10MW以上になる。また、市内の公共施設には2017年までに954kWの太陽光発電設備が稼働している。

 今後、市の公共施設にある太陽光発電設備に関しては、福山未来エナジーが電力を買い取っていくことになる。

 同市南部の箕島町にある「福山市上下水道局 箕島浄水場」も、その1つだ。同浄水場は、1日に11万3000m3の処理能力があり、近隣の工場に工業用水を供給しているほか、敷地内の遊休地に180kWの太陽光発電設備を導入しており、「福山市次世代エネルギーパーク」の指定施設にもなっている(図4)(図5)。

図4●箕島浄水場の太陽光発電設備
(出所:日経BP)
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図5●箕島浄水場の太陽光発電設備の監視画面
(出所:日経BP)
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 2012年2月に竣工し、FITを使って全量を売電している。総工費は約1億6400万円で京セラ製の太陽光パネル(208W)を864枚設置した。発電実績は2016年度・約20.9万kWh、2017年度・21.3万kWhと、稼働以来、経年劣化はほとんど見られず、順調に推移している。架台下をコンクリート舗装したため、除草作業も必要ないという。

 今年4月以降、同浄水場では、敷地内の太陽光の電力を福山未来エナジーに売電する一方、浄水場の使用電力は福山未来エナジーから供給を受けることになる。売電先を地域新電力に変更しても、FITスキームのなかでの変更のため、40円/kWhの売電単価を維持しつつ、「エネルギーの地産地消」を実現できることになる。

展望台から2つのメガソーラーを見学

 福山市のエネルギー政策は、「地産地消」に向けて着実に踏み出す一方、環境教育の軸である「福山市次世代エネルギーパーク」も、2016年4月に約9.4MWの規模を誇る「ESS 福山太陽光発電所」が稼働したことで、見学施設としての魅力がいっそう高まった(図6)。

図6●「ESS 福山太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 「ESS 福山太陽光発電所」は、中国電力の100%子会社であるエネルギア・ソリューション・アンド・サービス(ESS、広島市)が建設・運営している。隣接地には、出力約3.4MWの「中国電力 福山太陽光発電所」が、FIT開始前の2011年12月に稼働しており、こちらは中国電力が直営発電所として運営している(図7)。

図7●「中国電力 福山太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 これら2つのメガソーラー(大規模太陽光発電所)は、1つの展望台から見学できる。興味深いのは、両発電所は隣接していながら、パネル配置などで大きな違いがあり、FIT開始前とFIT開始後で、メガソーラーの設計思想がどのように変化したが分かることだ。

 「中国電力 福山太陽光発電所」は、自由民主党の福田内閣が2008年6月に公表した「福田ビジョン」を受けて建設された。同ビジョンでは、太陽光発電を低炭素社会の実現に向けた方策の1つに位置づけ、その普及促進の1つとして、経済産業省の補助金事業として大手電力(旧一般電気事業者)各社が、直営でメガソーラーを建設した。

 太陽光パネルは、長州産業製(205W/枚)を1万6544枚設置し、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 一方、「ESS 福山太陽光発電所」は、FIT開始後、中国電力グループ全体における遊休地の有効活用の一環として、グループ会社のESSが経産省からFITによる設備認定を受け、売電事業として建設・運営している。売電単価は36円/kWhとなる。

 太陽光パネルは、三菱電機製(266W/枚)を3万5224枚、設置して、PCSは同じくTMEIC製を導入した(図8)。

図8●展望台には実物のパネルを展示している
(出所:日経BP)
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FIT前後で設計手法が変化

 展望台から両発電所を眺めて、ひと目でわかる違いは、太陽光パネルの向きが異なっていることだ。

 両サイトとも、太陽光パネルを横置きにし、縦4段(4枚)のアレイ(パネルの設置単位)構成は同じだが、中国電力サイトは、設置角20度で「真南向き」、ESSサイトは設置角10度で「南西向き」になっている。このため正面の公道から見ると、中国電力サイトはアレイが斜めに見えるのに対し、ESSサイトでは、道路と平行になっている(図9)(図10)。

図9●展望台から見たメガソーラー。手前が中国電力サイト、奥がESSサイト。パネルは手前が長州産業製、奥が三菱電機製、PCSは両サイトともTMEIC製
(出所:日経BP)
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図10●展望台に展示された両サイトの俯瞰図
(出所:日経BP)
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 中国電力サイトのアレイ設計は、パネル1枚の出力を最大化させることを前提にした場合、典型的な設計になる。これに対して、ESSサイトで、あえて「南西向き・20度」にした理由に関し、「敷地形状に合わせてパネルを最も多く敷き詰めるとともに、保守性をよくするため」(ESS)としている。

 これは、国の補助事業による電力会社直営の発電所とFITによる発電事業との違いともいえる。FITによる発電事業はファイナンスを組成した上での投資事業の側面が強いため、20年間のIRR(内部収益率)最大化を求められる。

 メガソーラー建設では、FIT開始後、パネル価格の低下が急速に進んだのと同時にパネルの設置ノウハウも蓄積され、施工コストの単価が下がっている。このため限られた敷地に最大のパネル枚数を設置し、連系出力を大きく上回るパネル出力を確保する「過積載」が一般的になってきた。設置角を10度程度まで低くして影の影響を減らし、アレイ間隔を詰める手法は当たり前になっている。ESSサイトのこうした流れに沿っている(図11)。

図11●「ESS 福山太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 両サイトの公表値から、敷地面積当たりの予想年間発電量を算出すると、中国電力サイトが年間約82kWh/m2なのに対し、ESSサイトは年間約90kWh/m2に向上している。もちろん面積効率の向上には、パネル1枚の出力増も貢献している。太陽電池技術の進歩と発電システム設計の最適化により、面積効率と投資効率が改善してきたことがうかがえる。

パネル表面に汚れが・・・

 ただ、両サイトに関しては、立地に起因した特有の課題も顕在化している。ESSによると、「設置直後から、太陽光パネルの表面に汚れが付着して年々ひどくなっている」という。実際に、展望台から眺めても、両サイトとも茶色っぽく変色して見える。

 稼働後8年を経過する中国電力サイトでは、年間ベースの発電量が徐々に減少傾向にあるものの、「気象条件などにも左右されるため、汚れの経年劣化への影響に関しては分析していない」としている。

 ESSでは、「工業地帯に特有の環境によるものと見られ、水による洗浄も試みたが完全に除去できない状態」という。中国電力とESSとも、現在、対策を検討しているという。

 「福山市次世代エネルギーパーク」には、中国電力グループの野立て太陽光発電所のほかにも、工場の屋根上に複数のメガソーラーが設置されている。こうした太陽光は今後、「地産地消」電源の候補になるほか、工業団地の環境下で、パネル汚れの影響と洗浄手法、その効果などに関し、貴重なノウハウが蓄積されることになりそうだ。

●設備の概要
発電所名中国電力 福山太陽光発電所
住所広島県福山市箕沖町
発電事業者中国電力
土地所有者中国電力
設置面積約4.5ha
出力太陽光パネル出力・約3.39MW、連系出力3MW
年間予想発電量約368万kWh
発電量実績464万kWh(2012年度)、453万kWh(2013年度)、419万kWh(2014年度)、396万kWh(2015年度)、379万kWh(2016年度)、357万kWh(2017年度)
太陽光パネル長州産業製(多結晶シリコン型、205W/枚、1万6544枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(500kW機・6台)
変圧器北芝電機製(3000kVA)
架台コンクリート基礎、溶融亜鉛めっき鋼板製架台
着工2010年10月
運転開始2011年12月
建設費約12億円(内 補助金約25%)
●設備の概要
発電所名ESS 福山太陽光発電所
住所広島県福山市箕沖町
発電事業者エネルギア・ソリューション・アンド・サービス(ESS)
土地所有者中国電力
設置面積約10.9ha
出力太陽光パネル出力・約9.369MW、連系出力7.19MW
年間予想発電量約980万kWh
EPCサービス三菱電機システムサービス
太陽光パネル三菱電機製(単結晶シリコン型、266W/枚、3万5224枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(450kW機・15台、440kW機1台)
架台コンクリート基礎、鋼板製架台
着工2015年1月
運転開始2016年4月
買取価格36円/kWh

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