建設費の半分は民間、国からも多額の補助金

 市立川西病院は、市の中心部から離れた立地が災いし、入院患者に占める川西市民の割合は約6割にとどまるなど、集患は決して順調ではなかった。市の南部の住民の中には、隣接する池田市や大病院のある吹田市の医療機関を受診する人が目立ち、市内での医療完結率が5割に満たないという原因の1つになっていた。

 経営も厳しく、2012~14年度の3年間は毎年4億円を超える経常赤字。15、16年度は赤字額こそ減ったが、この5年間、市は毎年10億円前後の補助金をつぎ込んできた。築後35年が経過した建物は老朽化し建て替えが必要だったのに加え、医師を安定して確保するためにも、交通の便利な場所に設備の整った病院が求められていた。

 これら様々な課題を解決する道として川西市が選択したのが、協立病院との統合によるキセラ川西への新築移転と、協和会を指定管理者とする公設民営化。まず今年4月から、協和会が現在の市立川西病院の運営にあたる。

川西市総合政策部副部長の作田哲也氏。「2病院の統合で地域医療を守りたい」と語る

 7~8階建て・延べ床面積約3万5000m2を想定しているキセラ川西センターの建設費は、一部土地の取得費を含め約266億円。現病院跡地に建設する診療所の分などを合わせると、総事業費は350億円を超える見通しだ。半分は指定管理者となる協和会が負担し、残りのうち約128億円は国からの地方交付税で賄えるため、川西市の負担は50億円弱で済むという。総合政策部副部長の作田哲也氏は、「国が進める公立病院の再編・ネットワーク化のスキームに沿った計画だから、多額の財政支援を受けられる。集患については、個室化や、いずれ近隣にオープンする大規模商業施設の効果に期待している」と話す。

 市立病院がなくなる市の北部については、「地域医療が手薄にならないように手当てしていきたい」(作田氏)。市が跡地に診療所を建設して協和会が運営、さらに民間の介護事業所も誘致する。キセラ川西センターとの間にはシャトルバスを走らせる計画だ。医師に場所を貸して診療所を開設してもらうなど、ここでも公民連携を考えている。

 一方、統合相手である協和会理事長の北川透氏は、「協立病院とともに地域の急性期医療の中心を担ってきた市立病院が立ち行かなくなったら、市民はもちろん協和会も困る。市内の人口の流れも踏まえると、キセラ川西に移転した方がより多くの市民に貢献できるだろう。協立病院も耐震基準を満たすために建て替えが必要。総事業費の50%を負担しても自力で建設するよりいい」と、双方にメリットのあるスキームだと評価する。

この4月から市立川西病院の指定管理者となる医療法人協和会で、理事長を務める北川透氏

 さらに北川氏は、「川西市で不足している高度急性期医療は、範囲を絞って手掛ける。病床数と近隣の大病院の得意分野を考慮して、心臓外科や高度救命救急までは手を広げない。また個室化は当会から提案した。集患の目玉だが、看護師の労働強化になるので運営の失敗要因にもなり得る。ナースステーションの配置を工夫するほか、7割を占める無料の個室にはトイレは設けないことにした。高齢者は排せつ中に発作を起こしやすいことを踏まえた配慮でもある」と話す。

 協和会は、既に1年前から、市立川西病院に5人の職員を派遣している。「民営になっても経営を優先するようでは職員はついてこない。『良質な医療と介護の提供』『人材育成』といった法人の理念で職員を引っ張っていきたい」(北川氏)。新病院の開院目標は3年後の2022年秋。指定管理の契約期間はそれから20年間に及ぶ。