公園に賑わいを広げる人気ベーカリー

 地域コミュニティの形成には、ベーカリーカフェも一役買っている。マンションの共有施設棟1階に出店した「Café Boulangerie Takezono(カフェ ブーランジェリー タケゾノ)」は、茨城県内を中心に関東に10以上の店舗を持つクーロンヌジャポン(茨城県取手市)の新店舗。各地の同社の既存店には行列が絶えず、新規出店の依頼も殺到しているという人気ブランドだ。

ガラスばりのベーカリー。ペデストリアンデッキ側(写真)と公園側の2カ所に出入口がある。路面店ではない不利な立地だが「町の食堂になりたい」と田島社長は語る(写真:赤坂 麻実)
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 つくば市は有名ベーカリーが多く「パンの街」とも呼ばれる。人を呼び込むため、またパンやサンドイッチがテイクアウトに適していることもあり、フージャースは公園に面した場所に人気ベーカリーを誘導することにこだわり、クーロンヌジャポンに出店を依頼した。同社の田島浩太社長は出店を決めた経緯を次のように振り返る。

店内の様子。「クーロンヌ」の名物パンや、店舗オリジナルのパンなどが並ぶ(写真:赤坂 麻実)
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店内でパン作りの材料を量り売りしている。田島社長は「お客さまが材料の使い方などをご質問くださるので、コミュニケーションの機会になる」と意図を説明。さらに「コロナ禍が収束したあかつきには、パン教室なども開催したい」と話す(写真:赤坂 麻実)
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 「出店した竹園西広場公園の隣地は、大通りに面していないし、商業施設内でもないので、店舗の立地としてはタブーともいえる場所だ。しかし、マンションデベロッパーのフージャースが公園再生や地域活性化に情熱を持って取り組んでいるのを知り、その理念に共感した。新しいお店が地元の皆さんの朝食会の会場になったりするイメージを膨らませ、楽しい気持ちになり、ぜひプロジェクトに参加したいと思った。当社も創業(1994年)から月日が経ち、自分だけよければいいという企業観ではいけない、CSRやCSVにもしっかり取り組みたいと考えていたタイミングだったので、出店を決定した」

三代店長によれば、このお店では「甘いパンより、塩味系のパンがよく売れる傾向がある」とのこと。理由はよく分かっていないそうだ(写真:赤坂 麻実)
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 三代隆洋店長は店舗の状況について「地元のファミリーを中心に多様なお客さまがいらっしゃいます。毎朝、コーヒーを飲みにいらっしゃるお客さまもいれば、小学校のPTAなどの集まりにご利用いただくこともある。わたしはカフェも課題解決の場だと考えているので、『何か食べたい』『友達と話したい』『勉強したい』『休憩したい』など、お客さまのあらゆる課題を解決できる場所であるように、適切なおもてなしをしていきたいと考えています。(公園と隣接しているだけに)現在は天気の悪い日に客足が鈍るといった傾向があるが、われわれが天候に左右されないだけの実力をつければいいことであり、立地をネガティブに捉えてはいない」と話す。

 Café Boulangerie Takezonoは開店以降、地域住民の憩いの場として定着しているという。公園内に整備したフージャースのデッキには、フージャースからクーロンヌジャポンへ寄付したイス、テーブルを設置。クーロンヌジャポンがフージャースの委託を受けて、デッキを維持・管理している。デッキは、一部が公園敷地にまたがって敷設されている。ベーカリーのテイクアウト客に限らず誰でも自由に使えるようになっており、公園側へもカフェの賑わいが広がる空間演出だ。

 また、クーロンヌジャポンもつくばイクシバ!のメンバーであり、店内の看板で活動を告知。さらに、公園利用者が無料・無登録で借りられるゴザの束を毎朝、公園へ出して、毎夕、片づける役割も担っている。

ベーカリーカフェから公園に連なるデッキ(公園側から撮影)。イス、テーブルの所有者はクーロンヌジャポンだが、ベーカリーカフェへの来店者に限らず、すべての公園利用者が自由に使える(写真:日経BP 総合研究所)
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デッキから園路につながる部分には、貸し出し用のゴザが。つくばイクシバ!の活動の一環だ(写真:日経BP 総合研究所)
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市内の公園への横展開を推進

 つくば市では、国家公務員宿舎跡地にマンションが建設される例がほかにもあり、公共空間に開いたレイアウトになるよう、市としてデベロッパーに要望を伝えてきたという。「そうした“お願い”に法的な根拠はないので、難しいところがあったが、竹園西広場公園という目に見える先例ができたことで、他の事業者からも同様の取り組みをしたいと相談があった。市としても、他の公園にもこのような取り組みを展開していきたい」(小林氏)。

 フージャースも「他社から当社にご相談があり、市のご担当者を紹介させていただいた。地域のためになるなら、ノウハウを積極的に共有したいし、イクシバ活動も一緒にやっていけたらありがたい」(清家部長)としている。