建設表明から28年、悲願のスタジアム完成

 1992年に京都府が建設を表明してから実に28年。悲願の球技専用スタジアムの誕生だった。

 京都府は2002年のFIFAワールドカップの開催会場に立候補、城陽市の木津川右岸を想定して4万3000人規模の国際試合規格に対応したサッカー専用スタジアム建設を発表した。事業認可を受けて、招致活動を進めていたが、日本単独での開催が日韓共催となった結果、日本国内の開催地が当初の15カ所から10カ所に削減された。京都府は絞り込みにより落選。建設計画は中止された。

 その後2003年には京都市が伏見区の横大路運動公園内の土地を提供、Jリーグ・京都パープルサンガ(当時)が主体となって建設する計画や、京セラの稲盛和夫名誉会長が私財を投じて専用スタジアムを建設することを提案したが、いずれも進展しなかった。

 2011年に京都府は「京都府におけるスポーツ施設のあり方懇話会」を設置、用地の無償提供を条件に候補地を募ったところ、以前にも候補地になった京都市(横大路運動公園内)や城陽市(木津川右岸)のほか、亀岡市、京丹波町、舞鶴市が名乗りを上げた。2012年12月には亀岡市のJR亀岡駅北側に設置される都市公園内に設置が決まった。

 しかし、またしても計画は変更となった。当初の建設予定地近くに生息する天然記念物の淡水魚「アユモドキ」の生息環境への影響を懸念、学会や環境関係者から計画の白紙撤回を求める声が上がった。府と亀岡市は2013年5月に環境保全専門家会議を設置、アユモドキの保全とスタジアムの早期開設に向け、再度検討を重ねることになった。

 アユモドキ問題に対して、環境保全専門家会議の出した提言は、スタジアム建設位置を桂川右岸から亀岡駅北土地区画整理事業地に変更することだった。この提言を受け、2016年8月、京都府は建設予定地の変更。スタジアムは結果的に当初の計画より駅近くに設置されることになった。新たに3.2ヘクタールの用地を取得する必要はあるものの、当初府と亀岡市が計画した予算内に収まり、2018年1月に着工、2年後の竣工に至った。

事業期間10年の「緩やかな指定管理」

 サンガスタジアムのコンセプトは、スポーツ観戦にとどまらず、複合機能を備えて、地域に根ざした日常使いできる“稼げるスタジアム”。さらに観光やアウトドアなど周辺地域との連携の拠点となることを目指している。

京都府文化スポーツ施設課の川崎浩孝課長(写真:市川史樹)
京都府文化スポーツ施設課の川崎浩孝課長(写真:市川史樹)
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 京都府文化スポーツ施設課の川崎浩孝課長は「“稼げるスタジアム”を実現するには、やはり民間のノウハウの最大限の活用が不可欠です。当初から官民連携で民間事業者が主体的に関与できる手法を構築し、地域も一体となって利活用を図っていくことができるようにすることが必要と考えていた」と言う。

 事業スキームの候補となったのは、コンセッションと指定管理。両者におけるVFM(バリュー・フォー・マネー)の試算や、民間企業へのヒアリングを重ねた。

「内閣府民間資金等事業調査費補助事業にも採択され、いろいろな可能性調査をしてきた。その中でコンセッションと緩やかな指定管理では、いずれの方式もここでは可能性がある。選択肢や事業の実施・継続に大きな違いはなく、行政としての手続きや制度的な取り扱いに留まるのではないかと考えた」と川崎課長は当時の議論を振り返る。

 最終的に指定管理となったのは、「初めて造る施設でもあり、実際どのくらいの数字が上がるか見えにくい。コンセッションとしてやるには一定実績の数値を踏まえてやらないと難しいという判断による。ただ指定管理にしても通常の3年、5年という期間では難しい。京都府の指定管理で5年を超えるのはここだけですが、10年という長期の指定管理期間を設定することで、コンセッションと遜色ない収益性を上げられるスキームが構築できるのではないかと考えた」(川崎課長)

 指定管理者となった合同会社ビバ&サンガの小森敏史代表は、ビバでフィットネスクラブの運営や京都市の地域体育館や運動公園など公共施設の指定管理の実績を持つ。2018年1月から京都府が主催して、スタジアムの運営手法の検討などを行った「公民連携プラットフォーム・京都スタジアム分科会」にも参加していた。

指定管理者を務める合同会社ビバ&サンガの小森敏史代表(写真:市川史樹)
指定管理者を務める合同会社ビバ&サンガの小森敏史代表(写真:市川史樹)
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 「これまで指定管理をさせていただいたところとは規模も違う。当初はちょっと別世界のイメージがあった。手を挙げるのは難しいと静観していたが、京都サンガF.C.(株式会社京都パープルサンガ)の役員の方から、何としてもこのスタジアムを成功させたい。サンガの本拠地としてだけではなく、京都から地域の活性化や人材育成の拠点になるスタジアムを作りたいという思いを伺った。ただ、サンガには指定管理のノウハウや運営に係わるスタッフがいなくて困っていると。それなら、清水の舞台から飛び降りるようなものだが、サンガと一緒にやってみようと応募した」(小森代表)

 指定管理の公募では、京都サンガのホームスタジアムとして円滑な試合の開催と、観客のホスピタリティー向上を図ること。府内唯一の専用球技場、最大級の収容数を有する施設として、様々なスポーツ大会やイベントを開催できるようにすること。また、亀岡駅前の施設として亀岡市と連携して周辺地域のにぎわい創出に努めることが求められた。

 応募条件は京都府内に事業所(事務所等を含む)を有する法人その他の団体であること。指定管理期間は2030年3月31日までの約10年3カ月。利用料金制を採用し、施設利用料金は条例及び規則に定める額の範囲内で指定管理者が料金を決定し、収入とすることができる。指定管理料は2019年度3000万円、2020年度7000万円となった。

 指定管理者の業務内容は施設及び付属設備の維持管理と使用承認関連の業務、指定管理者が企画提案するもの。また、にぎわい創出エリアの活用についての提案も必須だった(1階は大河ドラマの展示期間を除くことが条件)。スタジアム4階ではeスポーツやVR、ARなどの技術を活用したスポーツ環境や観戦環境の提供を目的とした事業を実施、また壁面を活用した広告事業の企画提案をすることも条件だった。

従来は期間5年の指定管理が主流だったが。近年は事業期間の長いケースも増えている。長居競技場は従来5年間だったが、2021年4月からセレッソ大阪が指定管理者として30年となった(京都府資料をもとに日経BP総研作成)
従来は期間5年の指定管理が主流だったが。近年は事業期間の長いケースも増えている。長居競技場は従来5年間だったが、2021年4月からセレッソ大阪が指定管理者として30年となった(京都府資料をもとに日経BP総研作成)
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