「高年大学」や小中学校でもICT教育を実施

 鯖江市の主力産業は、メガネ、繊維、漆器である。越前漆器や繊維は1400年以上も前から続く伝統産業。雪国の農閑期の仕事から発展した。

 メガネの生産量は日本随一。鯖江市のホームページでも「めがねのまちさばえ」と先頭で紹介している。最近では、AR(拡張現実)を組み合わせたスマートグラスやIoT技術を駆使したウエアラブル端末も村田製作所などのメーカーと共同で開発している。

 「漆器もメガネも分業で生産されます。多様な工程を担う専門の職人や工場が地元の産業を支えています。鯖江市は日本で一番社長が多いことでも知られます」と牧田氏。小さくても企業のトップ。市民の多くは、まちづくりに対する思いも強い。そんな市民の力を象徴するエピソードを牧田氏は紹介した。

 鯖江市は市民からの発案と盛り上がりを機に、1995年に体操競技の世界大会である「世界体操競技選手権大会」の誘致に成功した。人口20万人以下の都市では前例がなかったという。しかもアジアで開催するのも初めて。「前例がないことを不安視する声もありましたが、延べ3万人の市民ボランティアが会の運営を支えました」と牧田氏は説明する。その実績を得て3年後には、体操競技の「ワールドカップ決勝大会」まで開催された。

 市民のエネルギーの高さは、30年近く続く「高年大学」の活動からもうかがえる。高年大学は、60歳以上の市民が入学できる市民大学である。一方的な講義形式ではなく、カリキュラムを自主的に決め、講師役も持ち回りで務めたりする。オープンデータとタブレット端末を活用したシニア向けのプログラミング講座も実施された。「高齢とはいえ、すごく吸収が速い。高年大学に来る時点で意識が高いことを割り引いても、高齢者だからITはだめと決めつけてはいけないですね」(牧田氏)。

 回りを見渡すと、携帯電話やスマホ、家電、車などあらゆるモノにプログラムが組み込まれている時代だ。「これからはますますICT社会が進展するでしょう。その仕組みを支えているのは人。だからIT人材の育成が必要なのです」(牧田氏)。

 鯖江市では、小中学生を伸ばす取り組みにも着手している。「プログラミングクラブネットワーク」がそれだ。2020年から予定されるプログラミングの義務教育化を視野に入れながら、これからの社会を担う人材をIchigoJamなどを活用して育てようという狙いだ。2018年4月からは、市内全15の小中学校でクラブ活動が動き出す。老いも若きも開発したアプリを披露しあう場である「電脳メガネARアプリコンテスト」などのイベントも市民と進める。

小中学生を対象に実施している「プログラミングクラブネットワーク」の様子(写真:鯖江市)

 オープンデータについても、県内17市町村が開示するデータ項目や書式の仕様がばらばらでは、市民や企業は検索や二次利用がしづらい。そこで情報処理推進機構(IPA)が進める共通語彙基盤整備事業と連携。福井県も市町村の足並みをそろえようと音頭を取っている。「異なる自治体同士が一緒にやるので、予算の付き方もばらばら、共通語彙基盤整備事業に対する取り組みへの温度差もあります。調整は正直大変です。橋渡しする県も頑張っています。市と県で競合せずに一緒にやりたい」(牧田氏)。